『ダンダダン』ラブコメとしての面白さとは? ギャル×オタクのドタバタ恋愛バトルの魅力

 「少年ジャンプ+」で連載中の龍幸伸による人気漫画『ダンダダン』は、オカルト×SFの異能力バトルものだ。いつの時代も人気のある王道ジャンルである。オカルト能力を活かした奇想天外なバトルと幽霊や宇宙人たちのユニークなデザイン、そして驚異的な画力で人気の本作だが、もうひとつ見落とせない要素がある。本作は「ラブコメ」だという点だ。

 バトル漫画のストーリーに恋愛展開が含まれること自体は珍しくないが、本作の場合は単なる副次的な要素にとどまらず、主人公の行動動機の中心に恋心がある。現在刊行されている5巻までの展開も、完全にラブコメの王道展開で、バトル要素と拮抗するレベルの強度を保って展開している。個人的な感触としては、バトルとラブコメ要素が50/50ぐらいの作品だという印象で読んでいる。

 そこで本稿では『ダンダダン』のラブコメとしての面白さを紐解いてみたい。

ギャルとオタク、近頃流行の組み合わせ

 本作は、ギャルの綾瀬桃(以下モモ)が、オカルト大好きなオタク少年、高倉健(以下オカルン)をいじめから助けることから始まる。いじめられる少年を助けるカッコいいギャルに、友達のいないオタク少年という組み合わせはいかにもラブコメ的な組み合わせだ。イマドキのギャルのモモは、任侠映画でお馴染みの高倉健が憧れの男性というギャップを持ち、それゆえに同姓同名のオカルンに対して複雑な感情を抱く。

 2人の関係は、モモに助けられたオカルンが、モモのことを自分と同じオカルト好きだと勘違いすることから始まる。幽霊は信じるが宇宙人は信じないモモに対して、宇宙人は信じるが幽霊は信じないオカルンが、互いの信じるものを証明しようとやっきになり、怪奇事件に巻き込まれて、2人とも異能力を宿すようになり、宇宙人やら幽霊やらとの戦いに巻き込まれていく。

 ギャルとオタク、キャラクター属性も信じるものも正反対だった2人が、自分たちだけが知る秘密(幽霊や宇宙人が存在する)を共有し、仲を深めていく。そして、次第に仲のいいクラスメイトからお互いにとって大切な存在になっていく。

 本来、学校生活で交わることのない属性の2人が交流するきっかけとしてオカルト要素が活用されている。一つの目標や秘密を共有することで親しくなっていくというプロセスは、ラブコメでは鉄板の展開。例えば、最近のヒット作『その着せ替え人形は恋をする』では、雛人形制作が趣味の男子高校生とコスプレ趣味のギャルが、コスプレ衣装作りという一つの目標を持ち、親密になっていく。

 2人の行動の動機も異能力バトルものによくあるものとは異なる。『僕のヒーローアカデミア』のようにヒーローになって誰かを助けたいでもなく、『鬼滅の刃』のように鬼にされた妹を救うでもなく、もっと強くなりたいでも海賊王になりたいでもない。オカルンが「タマ」を取られてしまったので、とりあえずなんとかしなければというものだし、2人の仲が進展していく中で、オカルンはもっと強くなってモモを守れる存在になりたいという動機を持つようになる。つまり、世の中のために何かしたいという動機ではなく、好きな女の子のために頑張りたいという気持ちがオカルンを突き動かすようになっていくのだ。

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