miwaが『サクラ、サク。』コラボ曲「Bloom」で描いた恋の始まり 咲坂伊緒の作品に惹かれる理由も

 現在別冊マーガレットにて連載中の咲坂伊緒『サクラ、サク。』(最新4巻まで発売中)。主人公の藤ヶ谷咲は電車で助けてくれた「桜」という男の子を探していたが、入学した高校で桜 陽希と出会って運命を感じるという青春ストーリーだ。恋愛をメインにしつつ、希望や優しさといったテーマにも触れた同作に、miwaが新曲「Bloom」を書き下ろした。楽曲のデモを聴いた咲坂伊緒が配信ジャケットを描き下ろし、スペシャルコラボPVも公開されている。もともと咲坂伊緒作品のファンだったというmiwaに、楽曲の制作経緯や『サクラ、サク。』の注目ポイントなどを聞いた。(編集部)

陽希は今までと全然違うキュンのさせ方をするヒーロー

――新曲「Bloom」、聴かせていただきました。曲が流れ出した瞬間から明るいイメージが広がるような楽曲で、『サクラ、サク。』の青春感ととてもよくマッチしていると感じました。miwaさんは元々、『サクラ、サク。』の作者である咲坂伊緒先生の作品ファンだそうですね。

miwa:本当に大好きで、『ストロボ・エッジ』も『アオハライド』も『思い、思われ、ふり、ふられ』も全部読んでいたので、コラボできるなんて思ってもみなくて、ものすごく嬉しかったです。まだコラボの話が決定する前から、前のめりに「ぜひ曲を書きたいです!」と、先生の作品がどれだけ素晴らしいかをプレゼンしてアピールしていました。

――咲坂先生の作品のどこに惹かれますか?

miwa:自分が経験していないことを疑似体験できたり、経験してなくても共感できたりすることかなと思います。作品を読んで憧れたり、一緒にキュンキュンしたり、悩んだり、切なくなったりしてきました。

――『サクラ、サク。』の魅力はどのような部分だと思いますか?

miwa:主人公の咲ちゃんも陽希もすごくいい子で、素直で、まっすぐなところですね。陽希に関しては、特に狙っていないのにキュンとさせてくれる、不意を突かれるような魅力があると思います。2人の恋愛以外の部分でも、自分が見ている世界と誰かが見ている世界が違うことに気づいたり、咲の親友の琴乃の「恋か恋じゃないかは私が決める!」というセリフのような、咲坂先生の見ている世界や想いが散りばめられている部分がとても素敵で、受け取るものがとても多いです。

――『サクラ、サク。』は、「優しさとは何か?」を改めて問い直すようなシーンも印象的ですね。miwaさんは「優しさ」はどういうものだと思いますか?

miwa:「優しさ」が一番難しいですよね。『サクラ、サク。』の中でも、自分が「誰かのため」と思ってやったことがその人にとってはためになっていなかったり、受け取る側と与える側が同じ思いとは限らないことを描いている部分にはぐっときましたし、相手の立場に立つことの難しさに改めて気づかされました。だから、自分の中の正義や押しつけじゃなくて、相手のためになる優しさみたいなものが本当の優しさなんだと思います。

――『サクラ、サク。』の中で好きなセリフ、好きなシーンはありますか?

miwa:一番ドキッとさせられたのは、陽希の「俺の事 すきになっちゃうかもね」っていうセリフですね。これを狙わずに言うのはすごいなって思って。

――たしかにドキッとするセリフですね。「こんなこと言っちゃうなんて、ずるい!」と思いませんでしたか?

miwa:それが、ずるさがないんですよ。陽希にはまったく狙わないでそれを言っちゃう天然さと素直さがあるんです。他にも咲が、最近陽希に会えてないなってモヤモヤしてる時に「最近あんま話せてなかったから」って言って陽希が会いに来るシーンがあって、「そんなに素直に思ってること全部言っちゃうの!?」と驚きました(笑)。でも、それが陽希の魅力だなと思いますし、今までと全然違うキュンのさせ方をするヒーローがやってきた! と驚きましたね。

――確かに、過去の咲坂先生の作品のヒーロー役の男の子たちは、素直なタイプというよりどこか影のあるキャラクターが多かったですよね。

miwa:そうなんですよ。クールな部分があったり、隠していることがあったりするキャラクターが多かったんですが、陽希はそういう部分がゼロ。対談した際に咲坂先生も「今までの少女漫画のヒーロー像からすると、陽希は主役になりきれてないような感じがする。それが今作の推しでもあるけど不安でもある」とおっしゃってました。それくらい、キメキメじゃない部分で魅力を発揮してる陽希は独特だなと感じます。

――陽希を見ていると、結局素直さが一番強いなと思わされますよね。

miwa:天然の強さに圧倒されましたね。咲がジュースを取り違えてしまって、陽希が咲の飲みかけのジュースを普通の顔をして飲むシーンも好きです。あれを冗談みたいに軽く描けてしまう咲坂先生のセンス、すごい!と思いました。

――miwaさんは咲坂先生の作品を色々読まれてきたということでしたが、音楽を作る際、それらから影響を受けたと感じることはありますか?

miwa:誰かを思う気持ちは、日常生活でも少女漫画の中でも音楽の中の世界でも変わらないと思うので、それを音楽でも表現したいですね。

――咲坂先生の作品は、色んな角度から色んな人が色んなことを思っている、というのがぎゅっと詰まっていますもんね。

miwa:マンガは絵と言葉という限られた中で表現しますし、音楽だったら歌詞やメロディ、演奏や歌で伝えていく。自分の表現の中でどう伝えていくかということについて、他の作品を読んだり触れたりしているとすごく刺激になりますね。

描いたのは、花が咲いていくように止められない恋心

――今回コラボ楽曲を制作するにあたって、『サクラ、サク。』のどういった部分に注目されましたか?

miwa:『サクラ、サク。』というタイトルを見て、誰かに恋する気持ちは、花が咲くみたいに誰にも止められないものだな、と思ったんです。それは「つぼみに戻って!」と思っても戻らないもので、自分がそれを「恋だ」って認めたら、花開いていくものだなって。「これって友達としてなのかな? それとも好きな人だからなのかな?」っていちいち考えてドキドキしたりするような、自分の中の変化や相手との距離感のような、花が咲いていくように止められない恋心を曲の中で表現できたらいいなと思って書きました。

――「花が咲くのを止められない」というのはとてもしっくりくる表現ですね。サビの〈Bloom like a flower〉もすごくいいフレーズだなと思いました。

miwa:桜はたくさんの花が咲くので、一輪の花が咲くというよりも、日々の中で一つひとつ恋心が芽生えていって止められない! ということを表現したいと思いました。その中で、想い合っているのに好きって言えないもどかしさも入れられたらいいなと。

――曲を作る際に悩んだ部分はありましたか?

miwa:大好きな作品でイメージもすぐ湧いたので、今まで、こんなに早く書けたことあったかな? というくらいとても楽しく、スムーズに書けました。アレンジも、普段LAにいるアレンジャーのher0ismさんが日本に来ていたので、「こんな曲作ったんです」って聴いてもらったら、「すぐにアレンジするよ!」って言ってくださって。リリースまで本当にとんとん拍子で進んで、出来立てほやほやの状態で聴いていただくことができました。

――her0ismさんに何かアレンジの希望は伝えましたか?

miwa:「こうして欲しい」と伝えた部分もありますが、汲み取ってもらえたものの方が大きいです。私の頭の中ではイメージはあっても、実際に聴かせたのは私のアカペラだけ。なのに、そこにサウンドをつけていく中で、私が思っていた世界を色鮮やかに、さらにかっこよく表現して音にしてもらえました。

――ブライトな印象の音になっていますね。

miwa:ピアノのブライトさが肝になっているかなと思っています。her0ismさんにアレンジしていただいた時、同じスタジオに一緒にいたので、その場で見ていてすごいなと。

――今回、咲坂先生と対談もされていますが、実際にお話されていかがでしたか?

miwa:咲坂先生は登場人物一人ひとりのイメージソングを決めたり、音楽と作品を紐づけていらっしゃるそうなので、こだわりがあるのでは、と気になっていましたが、「Bloom」をとても気に入ったとおっしゃってくださいました。曲を作った私の気持ちも汲み取ってくださって、同じクリエイターとして、通じ合えたような気がして嬉しかったです。

――咲坂先生のファンもたくさんいらっしゃると思いますし、miwaさん自身もファンということで、曲を書くのにプレッシャーはありませんでしたか?

miwa:プレッシャーよりも大好きな咲坂先生の作品に携われる楽しみの方が大きかったですね。生みの苦しみって当たり前だと思いますし、普段はなかなか思いつかなかったり、思うように書けなかったりすることもあるのですが、今回は心弾む気持ちで書けました。

――コラボPVも拝見しましたが、映像と音がとてもマッチしていますね。

【咲坂伊緒】『サクラ、サク。』4巻発売記念PV(Long Ver.)【恋愛漫画】

miwa:まさにそのシーン! と思っていた部分を汲み取っていただいていたのが嬉しかったです。私の思いをそのまま映像にしていただいたように感じましたし、ムービーを作ってくださった方も、『サクラ、サク。』を大切に思って読み込んでいらっしゃっているのが伝わってきました。

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