【漫画】1日に18時間眠るお姫様が取った行動とは? 時間の使い方を考えさせられる漫画が話題

ーー日々を効率的に過ごす姫、そして迷いを抱くことの多い少年が関係を深める様子に魅力を感じた作品でした。創作のきっかけを教えてください。

かくたすず(以下、かくた):本作は社会人1年目のころに描いた作品です。当時の私は学生のころと比べて時間に追われることが多いと感じていました。本を読んだり面白さを味わったりとか、おいしいものを食べてその味を味わったりとか。本や食べ物に対して自分の心が動かなくなっている気がしていて、そんな考えを見直したいと思ったことが本作を創作したきっかけです。

ーー呪いというキーワードやベッドの周りを囲む有刺鉄線など、姫からはなにかに縛られている印象を受けました。

かくた:あわただしい日々を過ごしていると、手段と目的が逆になってしまう感覚を覚えることがあります。仕事や家事、食事をこなすことが目的となってしまうと、自分がどうしたいとか何を得たいのかを見失ってしまう気がして。

 姫を描くなかで手段が目的になっている、与えられた時間は少ないけれど普通の人と同じように生活しなきゃいけないという思いに縛られているキャラクターとして描くことを意識しました。

ーー暗殺を命じられた少年は姫とは対照的な存在であると感じています。

かくた:例えば人から贈りものを貰ったとき、私はプレゼントを選ぶために時間をかけてくれたことにうれしさを感じます。“迷い”はネガティブに捉えられることもありますが、ときに迷ってくれた時間にも価値があると思うのです。そんなことを考えながら、効率的に過ごす姫と対照的な存在として少年を描きました。

ーー涙を流す少年に姫が寄り添う物語の終盤、時間が泡のように積み重なるシーンが印象的でした。

かくた:ドラマなどで時間が迫るなかで時計の秒針が動く音が強調されるシーンがあるかと思います。本作でも時間が過ぎていく様子、目を覚ます前に姫を殺さなければいけない少年が迷いを抱くシーンを1ページで表現するために、時計の音の1つひとつがいっぱい積み重なることを意識して描きました。

ーー姫と少年が海を眺める最後のページを描くなかで意識した点は?

かくた:効率的だからこそ良いこともあるし、迷う時間にも価値があって。極端に効率主義だった姫と極端に優柔不断だった少年が一緒に過ごすなかで、お互いを少しずつ分け合っていることを感じられるように描きました。

ーーアイスクリームを迷わず選ぶ姿から少年の変化を感じました。

かくた:一緒に過ごしていると「この人はこれが好きだ」と少しずつわかるようになるかと思います。少年は姫がバニラ味のアイスが好きということを知ったからこそ、迷わず選べるようになったのです。

ーーかくたさんが創作活動を始めたきっかけを教えてください。

かくた:元々ものをつくることが好きで、考えごとをすることも好きでした。日々感じたことを作品として表現することのできる漫画は自分にあっているのかなと思っています。漫画以外にも創作活動をしてきたのですが、長続きしたものが漫画でした。

ーーなぜ漫画だけ続けることができたのでしょうか。

かくた:小学生のときに友だちと漫画を描くと、周りの人が見てくれたり自分の作品について覚えてくれて。そんなときに漫画を描くことに楽しさを感じました。自分にとって漫画が1番思い出に恵まれているから、漫画を描くことを続けられているのかなと思います。

ーー今後の目標について教えてください。

かくた:普段考えていることをかたちにすることが好きなので、今のところ目標が思いつかないです。ただSNSに漫画を投稿したとき、作品の感想と交え自身の体験をお話ししてくれた方が多くいらっしゃいました。自分の作品が暇つぶしになれたらうれしいですし、作品を読んでくださった方にとって何かのきっかけになってもうれしいなと感じています。

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