出産に子供の同意が必要な世界ーー李琴峰『生を祝う』が問いかける“生まれること”の意味
出産に子供の同意が必要となる世界を描く小説のタイトルが『生を祝う』であることに、筆者は当初、疑問を持っていた。それはこの私たちが生きている世界の前提であって、産むことに子供の同意が必要となる世界では異なるのではないのだろうかと思ったからである。しかし、本作を読み終わると、『生を祝う』という言葉の重さが変わったように思えた。
もしも、自分が「合意出生制度」が存在する世界に胎児として出現したら、数値がいくらだったらアグリーするだろうかということを考えてしまった。本作は、子供を産むというのはどういうことなのかということとともに、生まれてくるというのはどういうことなのか、ということも、同時に読者に問いかけてくる。