「おいしい」だけが食事じゃない 異色のグルメ漫画『鬱ごはん』が思い出させる、食べることのやっかいさ
ファストフードでドリンクを倒してフライドポテトがビショビショになるなどの小規模ながっかりエピソードも満載。ホットケーキを焼き始め、フツフツ穴が開いてくるのを見てうっかりガマガエルの背中を連想してしまうなど、食欲が減退するようなネタもあるので好みは分かれるところかもしれない。
それでいて自虐ネタに終始するばかりではなく、どこか哲学的な問いを投げかける結末になっている話も多い、不思議な作品である。シュールギャグ4コマ『がんばれ酢めし疑獄‼︎』を出世作に、『オンノジ』『銀河の死なない子供たちへ』といったSF、現在も連載中の読書家ギャグ漫画『バーナード嬢曰く。』など幅広い作品を発表し続ける作者の地力が感じられる。
最新4巻では「コロナ禍」の現代日本の外食事情もしっかり描写される。連載12年目、主人公の鬱野は30代になってもフリーターのままだが、己と社会を見つめるつぶやきはニヒルさと鋭さを増していく。ほっこりしない《日常系》と呼びたい『鬱ごはん』という作品を、長く読み続けられることを願う。