“孤高の逃がし屋”の秘めた想い

　キリルの初登場シーンは単行本4巻に収録されている28話「それぞれの道」。28話の最後に、ハルピンで逃がし屋として暗躍するキリルの様子が描かれており、しっかりと顔を見せたのはなんと最後の一コマだけだったが、鋭い眼光と彼が発する殺伐とした力強いオーラには思わず圧倒された。また「同じ相手とは二度と組まない」を信条とする孤高な一面もとてもミステリアスで読者の探究心をくすぐる。

　作画を担当している鹿子先生曰く、キリルは映画『ベイビー・ドライバー』や『ドライヴ』のイメージから誕生した運び屋キャラとのことだが、そんな彼の魅力はクールなビジュアルや軽やかな身のこなしもさることながら、彼の行動原理の全てが「大切な人を守るため」であるところなのではないだろうか。

　共に暮らす盲目の少女・ナターシャに対して、とある出来事がきっかけで特別な想いを寄せているキリル。彼が運び屋として働くのも、その後に勇たちと組んで戦うのも全て彼女のため。そんなキリルが心に秘める一貫した強い想いに胸を打たれる。さらにキリルは、この強い胸の内をなかなか勇たちに明かそうとしないのだ。多くを語らず、自分の守りたい者のために命を張り続ける......。そんな彼の武士のような潔さを見ていると、ますます彼から目が離せなくなる。

　思わず没頭してしまうくらい面白い物語、そしてキャラクターをお探しのあなたはぜひ『満州アヘンスクワッド』と逃がし屋・キリルに注目してみてはいかがだろうか？