金ロー2週連続登場『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』 原作小説はここが違う!
※本稿では『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の内容に触れています。
2週にわたる日本テレビ系の「金曜ロードショー」登場で話題となっている、京都アニメーション制作のアニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』。本作には、ライトノベルレーベル「KAエスマ文庫」より暁佳奈が出している原作小説がある。アニメでは描かれなかったエピソードや、ヒロインのヴァイオレット・エヴァーガーデンが見せる、アニメ版よりもユニークな振る舞いを楽しむことができる。
手紙が通信手段の中心だった時代。文字を知らなかったり、文章が下手だったりする人に代わって手紙を書く「自動手記人形」(オート・メモリーズ・ドール)という職業が生まれた。ヴァイオレット・エヴァーガーデンという少女もC.H郵便社で働く「自動手記人形」だったが、人形のような容姿からは想像できない凄絶な過去があったーー。
以上が作品の大まかな世界観だ。ヴァイオレットの生い立ちはアニメを見た人には周知のことだが、小説版で初めて物語に触れる人は、少し違った印象を抱くことになる。
もともと「自動手記人形」は、人の声を自動でタイピングする機械を指していた。やがて代筆を請け負う人にも呼び名が広まっていったが、今でも機械だと思い込んでいる人がいた。小説『ヴァイオレット・エヴァーガーデン上』に収録された最初のエピソード「小説家と自動手記人形」に登場するオスカーだ。
ある事情から酒浸りになったものの立ち直り、再帰しようと決意したが、手が震えて字が書けない。見かねた友人が紹介してくれた「自動手記人形」を使うことにしたが、やって来たのが少女だったから驚いた。「まさかこれほどまでに人間に似せた機械人形(アンドロイド)のことだったとは」。
ヴァイオレット・エヴァーガーデンと名乗った「自動手記人形」が、機械でできた腕を見せ、感情の伴わない口調でオスカーに命令を要求する様はまさにアンドロイド。そう思わせておいて、ヴァイオレットが人間でありながらどうして機械人形のようなのかが、以後の物語で明かされていく。小説版ならではのポイントだ。
テレビシリーズでは第7話に描かれるエピソード。オスカーの要求に応えてヴァイオレットが、湖に浮かんだ落ち葉の上を歩こうとするシーンの躍動感や、湖畔の美しい自然の描写に、さすが京都アニメーションと賛辞を送りたくなる。小説には、アニメでキャラクターデザインを手がけた高瀬亜貴子が、湖上を駆けるヴァイオレットの瞬間をとらえたイラストが添えられているが、これもたまらなく美しい。