『ブルーピリオド』アニメーションが最大限に引き出す原作の魅力 動き、色、音の素晴らしさを解説

 アニメによって表現されたのは「動き」や「色彩」だけではない。アニメの放映開始に合わせ作品を特集した番組『アニメ放送直前!ブルーピリオド 大解剖SP』では、原作者の山口つばさ氏が実際に通っていた予備校で環境音を収録したことが明かされた。

 八虎が東京藝術大学の合格を目指す「受験編」では、予備校で過ごす場面が多く登場する。圧倒的な才能をもつ他者に、不甲斐ない自分に、喜怒哀楽を覚えながら創作に向き合い続ける予備校での日々は、八虎のターニングポイントがいくつも描かれる。八虎の奮闘にスケッチブックをめくる音や、絵の具を塗る筆の音などの臨場感ある音が加わることで、読者を虜にしてきた名シーンは漫画と異なる感動を与えるはずだ。

 また本作の音楽を担当する井上一平氏は、SNSで演奏に関する情報を公開した。八虎が森先輩の作品を目にするシーンで流れた、ピアニスト大嵜慶子氏の演奏には、八虎が感じた絵画の神秘性を共に味わっているような感覚を覚えた。一方、八虎が青色に染まる渋谷に浮かび上がるシーンで響いた、鈴木広志氏の演奏するサックスの音色には、絵を描く悦(よろこ)びに目覚めた八虎の高揚が感じられた。

 そして八虎には青く見えた渋谷の街でストリートライブを行ってきたアーティスト「Omoinotake」が、八虎と自分たちを重ねてつくったオープニングテーマ『EVERBLUE』。アーティスト「mol-74」が"誰かに期待するのではなく、自分自身で世界を変えよう"というメッセージを込めたエンディングテーマ『Replica』。(参考:『オープニング/エンディングテーマ情報 - TVアニメ『ブルーピリオド』公式サイト』)。音によって表現してきたアーティストたちが、表現することの悦びや苦悩を描いた作品に彩りを添える。

 「動き」や「色」、そして「音」が加えられ、アニメとして表現された『ブルーピリオド』。美術の楽しさに目覚め、表現することに苦悩を覚える八虎を支えるかのように、数多くのクリエイターが原作の世界を表現したアニメ作品と言えるだろう。

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