背中に昇り龍!入れ墨ワケありバイトに「泣かされる」? Twitter発マンガ『島さん』が人気の理由

 合理的になるほど人情が失われていく社会は、同時に島さんというワケありの人を受け入れづらくしているのかもしれない。島さんが背中に昇り龍を彫った過去はすべて語られてはいない。だが、実の親に捨てられたこと。そして「ヤクザ」と呼ばれる職業にある男が愛情を注いで育ててくれたこと。その人から「人が人にやさしくする事を忘れなきゃ、何があっても大丈夫だ」という言葉を教わったこと……と、少しずつその過去が語られている。(第1夜)(第8夜、第14夜)

川野ようぶんどう『島さん』(双葉社)

 生まれ育った環境は選ぶことができない。それゆえに、やむを得ず「若い頃にヘマ」をして、ワケありとなってしまう人もいる。その人たちが、真っ当に生きたいと願ったとき。きっとそのチャンスを与えるのはやさしさでしかない。やさしくしてもらった経験が、次の人へのやさしさのバトンに。その連鎖こそ「人情」と呼ばれるものなのだろう。

 これから明かされていくであろう島さんの過去。それが、どんな罪だったとしても、きっと今の島さんを知っていればそこからの再出発を応援せずにはいられない。人は人を知ろうとすることからやさしくなれる。知り、つながり、そしてやさしくし合うことで、社会は寛容になっていく。誰もが「ここにいてもいいんだ」と思える空気が出来上がっていくのだ。

 私たちは、島さんからもらったやさしさのバトンを誰かにつなぐことができるだろうか。島さんの言動を見守っていくうちに、自分にもできることはないかという考えが浮かんでくる。今すぐには難しかったとしても「人が人にやさしくする事を忘れなきゃ、何があっても大丈夫だ」と思えてくる。ギスギスとした不寛容な社会に疲弊することもあるけれど、まだまだ世の中捨てたもんじゃない。そんなやわらかな心地よい読後感を、ぜひあなたにも。

■書誌情報
『島さん』(アクションコミックス)1〜2巻発売中
著者:川野ようぶんどう
出版社:双葉社
試し読みページ(https://comic-action.com/episode/13933686331621197279

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