五大厄災、ドン=フリークス、異人類……『HUNTER×HUNTER』暗黒大陸編の伏線を考察
※本稿は『HUNTER×HUNTER』のネタバレを含みます。
迫力のあるバトルと作り込まれたストーリーで人気を博す、冨樫義博による異能系バトル漫画『HUNTER×HUNTER』。2018年11月の掲載を最後に約2年8ヶ月もの間休載中の本作は、現在「暗黒大陸」への渡航真っ最中である。そこで本稿では、暗黒大陸に関わる謎やファンの間で囁かれている考察をおさらいしながら、暗黒大陸編の展開を予想していく。再開の目処が立たない『HUNTER×HUNTER』だが、連載を待ち望む読者はぜひこの機会に謎や伏線を再確認し、先の展開に想いを馳せてほしい。
本作の舞台となってきた「世界」の外側に広がるのが、未知の夢とともに絶望が蔓延る「暗黒大陸」。暗黒大陸と聞けば、ファンの誰もが最初に思い浮かべるのが、「五大厄災」の存在だろう。この五大厄災に関して噂されているのが、「ナニカの正体は五大厄災の1つ『“ガス生命体”アイ』である説」だ。結論から言うと、この説はまず間違いないと考えていいだろう。
「ナニカ」は主要キャラクターであるキルアの妹(弟)で、ゾルディック家に幽閉されているアルカに取り憑いた別人格のようなもの。「おねだり」を3回聞いてあげると、どんな「お願い」でも叶えてくれるが、願いの大きさに応じて、次の「おねだり」の難易度が変わり、失敗すればとんでもない厄災が降りかかる、という特殊な能力を持っている。
そんなナニカは、単行本33巻の本編外ページにて、暗黒大陸出身であると公式に記されている。それはアイが描かれていた次のページで、眼や肌の描き方から喋る言葉まで酷似していた。またナニカの「お願い」を聞けなかった被害者の死に方と、アイの被害者と思われる死体の形状も荒縄状で似通っている。作中では、被害者に暗黒大陸への渡航履歴はなく急に捻れたと語られていたアイ。ナニカの被害者も本人ではなく第三者であり、上記の点からもナニカの正体はアイであると断定できる。
そしてナニカがアイであるならば、暗黒大陸編にて彼女に変化が生じる可能性もある。筆者が「『HUNTER×HUNTER』の作中で1番感動したシーンは?」と問われれば、1番最初に頭に浮かぶのはキルアが自分の気持ちと葛藤しナニカと仲直りをするシーンだ。今はゴンと離れ、旅路を楽しんでいるキルアとナニカ。暗黒大陸編が本格的に始動し、劇中でナニカがアイだと判明すれば、再び涙なしでは読めない展開が待ち受けているのかもしれない。
暗黒大陸を語る上で最重要事項となる謎が、「新大陸紀行」の著者であるドン=フリークスの存在だ。「新大陸紀行」は2部作のうちの1作目「東」のみが見つかっている、ドンが自身の暗黒大陸探検を記録した書物である。
現時点では彼についての詳しい情報はなく、フリークス姓である点から、主人公・ゴンの血縁者と予想できるくらいだ。しかしファンの間では、ドンについても面白い考察が存在する。それが「ゴンとジンはドンの息子説」だ。この説が浮上したきっかけは、念が使えなくなりくじら島に帰郷したゴンが、「ジンは父親っていうより噂に聞いていた親戚のすごい人って感じ」と話したことだった。そしてこの場面から彼はジンを親父と呼ばず、名前で呼んでいるのだ。もし本当にジンとゴンが兄弟であれば、それは作品の根幹を揺るがす衝撃の事実である。大人化したゴンがジンと似ていなかった事実なども相まって語られるこの説。しかしこれには1つの疑問点が残る。それはドンのいる暗黒大陸から、ジンとゴンがどのように人間の住む世界に渡ってきたのかである。
「新大陸紀行」の「西」は1冊も見つかっておらず、ジンはその理由として「現在も書いている途中」であると強調していた。そしてジンたちは「究極の長寿食ニトロ米」や「万病に効く香草」が、ドンが300年も前に探検を決行したにも関わらず現在も生き続けている理由であると考えている様子。この事実から浮かび上がるのは、ドンは人間ではなく「異人類」なのではという仮説だ。