【ネタバレあり】動機が悲しすぎる……『金田一少年の事件簿』で心に残る切ない事件&犯人3選

※本稿は『金田一少年の事件簿』のネタバレを含みます。

 1992年から「週刊少年マガジン」で連載され、ミステリー漫画の金字塔となった『金田一少年の事件簿』。現在は「イブニング」にて『金田一37歳の事件簿』が連載されており、いまなお高い人気を誇っている。

 そのなかで起こってきた、数々の難事件。当然、どんな理由があろうと殺人は決して許されるものではないが、罪を犯した動機に同情したくなる犯人も少なくない。そこで今回は、『金田一少年の事件簿』から動機が切なすぎて印象に残っている犯人たちを取り上げてみたい。90年代に掲載された事件に絞ったが、未読の方にとっては「犯人」という最も重大なネタバレを含むので、ご注意いただきたい。

「魔犬の森の殺人」千家貴司

 千家貴司は不治の病で余命いくばくかの恋人がおり、残りの人生を彼女に笑顔で過ごしてもらおうと一途な愛を捧げていた。しかし、彼女が不治の病であることを良いことに、4人の医学生たちが彼女に鬼畜な人体実験を行い、その末に命を落としてしまう。悲しみに打ちひしがれる千家をよそに、当の医学生たちは「たかが半年しか生きられない患者だったんだ」と一切の罪悪感を抱いておらず、千家は殺害を決意した。

 千家は「首吊り学園殺人事件」に初登場して以降、主人公・金田一一(きんだいち・はじめ)の友人として描かれ、「誰が女神を殺したか?」にも登場した。そのため、「魔犬の森の殺人」でも、てっきり美雪のように一の推理のサポートをしてくれるのかと思いきや、3人も殺害した怪人“ケルベロス”だと発覚した時は衝撃だった。

 ちなみに三人目に殺害された渡辺鐘のダイイングメッセージは、『金田一少年の事件簿』に出てきた謎の中でも比較的わかりやすいので、名探偵を目指す少年少女にはいい問題だったかもしれない。

·「雪影村殺人事件」島津匠

 島津匠は彼女・春菜との間に子供を授かる。しかし、島津に好意を寄せていた友人2人が嫉妬し、島津と春菜の父親が偶然同姓同名だったことを良いこと残酷な嘘を思いつく。友人たちは春菜に“あなたと島津は異母兄弟なの”という嘘を伝え、そのことにショックを受けた春菜は自殺する。彼女の自殺の理由を知った島津は2人の殺害に至った。

 『金田一少年の事件簿』の中でも終始切ない雰囲気が流れる異色のエピソードで、個人的に一番好きだ。殺害された2人は軽い気持ちで嘘をついただけ……、彼女も1人で抱え込まずに島津に相談していれば……と、いくつものボタンのかけ違いが最悪の事態を招いた事件であり、後味は非常に悪い。基本的に『金田一少年の事件簿』はどれだけ凄惨な事件でも、エピソードの最終話はポップな感じで締めるが、最後まで切ない余韻を残して終わるのも、強く記憶に残っている要因だろう。

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