『アンデッドアンラック』作者はキャラクターと共に戦っている バトルに込められた“漫画”への想い
漫画の中に漫画家が登場すると、作者の分身に見えてしまうものだ。
安野とアンディ&風子の関係を、作者の戸塚慶文と『アンデッドアンラック』という作品世界の関係に見立てるならば、このオータム戦はバッドエンドが決まっていた物語を変えるために、作者が分身を通してキャラクターといっしょに戦っていたかのような超展開である。
安野と風子たちのやりとりは、作者とキャラクターが漫画の中で直接対話をしている姿を見ているかのようだったが、ここで『君に伝われ』というタイトルが生きてくる。
当初は椎名軽穂の少女漫画『君に届け』(集英社)のパロディくらいにしか思っていなかったが、このタイトルには存在を認識されなくなった九能明(安野雲)が、漫画という表現を通して世の中と繋がり、アンディや風子を助けるために予知した未来を「伝えたい」という気持ちが込められていた。
オータムとの戦いの中、風子の回想も挟み込まれる。「不運」の力で両親を亡くした後、やがて祖父も亡くなり、他人と関わることができずに孤独の中に居た風子が、それでも命を絶たなかったのは『君に伝われ』を読み終わるまでは死ねないと思ったからだった。つまり、安野がアンディと風子に救われたように、風子もまた安野の描いた漫画に救われたのだ。
面白い漫画には「人を生かす力」がある。そんな作者の思いが「伝わる」第6巻だった。
■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。
■書籍情報
『アンデッドアンラック』1〜6巻発売中(ジャンプコミックス)
著者:戸塚慶文
出版社:集英社
https://www.shonenjump.com/j/rensai/undead.html