舞台化決定で話題! あだち充『虹色とうがらし』が“異色作”と称される理由とは?
ではなぜ、あだち充はスポーツ漫画ではない『虹色とうがらし』を描いたのか。
「これはあだち先生本人がインタビューで言っていたことなんですが、『タッチ』や『ラフ』といった熱血スポーツものとはちょっと離れて、元々好きだった時代劇や落語といった要素を取り入れた、お気楽でコメディ色の強い作品をやりたかったそうなんですよ。『タッチ』によってサンデーの看板作家となり、『ラフ』も描き切った。看板作家として、看板作品足りうる作品をずっと描き続けるプレッシャーを跳ね除けるために、一旦自分が単に描きたいものを思いっきり描く、っていうことをされたのだと思います。ご本人も「『虹色とうがらし』があったからこそ、またその後の作品を描き続けることができた」といった内容のことを語られています。つまり、それ以降の『H2』や『クロスゲーム』、『MIX』を先生が描くことができたのは、『虹色とうがらし』があったからなんですよね。
『虹色とうがらし』は、先生がすごく楽しんで描いた作品。あだち先生はヒット作の合間に、いい意味で行き当たりばったり的な(笑)『いつも美空』といった連載や、読切作品をちょくちょく挟むんですよね。ただ、中でも『虹色とうがらし』については、のちに『いちばん力が入ってます』と語っているくらい、先生の好きなものが詰め込まれた作品。あだちファンにとっては言わずもがな、そうではない読者にとっても肩の力を抜いてリラックスして楽しむことができる作品になっているんじゃないでしょうか」
今回の舞台化については「あだち充というヒット作を数多く持つ作家が描いた連載作の中で、メディアミックスされていなかったのは『虹色とうがらし』くらいしか残ってなかったんだと思います」と話す岡島氏だが、それでも本作は「隠れた名作」だと推す。
「『虹色とうがらし』は、トレンド入りするくらい名前は知られていても、『タッチ』や『H2』などに比べると世間的な評価はさほど高くないかもしれません。でも僕は、ストーリーもテンポよく進み、クライマックスへの畳み掛け方や見せ方もうまく、名作だと思っています。単行本も全11巻と長くはなく、話もきれいに完結していてスッキリ読めるかと。読んだことのない人はもちろんですが、しばらく読んでいない人も久しぶりに手に取って読み返すと、新たな発見があるかもしれません」
■書誌情報
『虹色とうがらし』1〜11巻完結(少年サンデーコミックス)
著者:あだち充
出版社:小学館
https://websunday.net/museum/no22/