ガチオタが『推しが武道館いってくれたら死ぬ』の魅力を熱弁 “オタ活”の素晴らしさとは?

 『推しが武道館いってくれたら死ぬ』、略して『推し武道』。岡山県で活動する地下アイドルグループChamJam(ちゃむじゃむ)と、その熱狂的なファンたちを描いた漫画作品だ。2020年にはアニメ化もされ、エンディングテーマが松浦亜弥の「♡桃色片想い♡」であることも話題になった。

「君のために生きてる」

 『推し武道』アニメ化にあたり、ついたキャッチコピーは「君のために生きてる」。この言葉を見た時、えりぴよと同じように、アイドルを熱狂的に推している私は泣いた。何ならこの記事を書くためにキャッチコピーを思い返した今もちょっと泣いている。オタクの人生はアイドルに左右しかされないし、人生の最優先事項であることを理解した上での「君のために生きてる」だ。

 えりぴよの言うこと全てに見覚えがあり「え? 作者私のTwitter見て書いたでしょ?」としか思えなかったオタクの私が『推しが武道館いってくれたら死ぬ』を紹介する。

 物語は、主人公の女性えりぴよが、岡山県の地下アイドルグループChamJamの市井舞菜を推す日常を描いている。『推し武道』はノンフィクションに近いフィクション作品だ。作者の平尾アウリ自身がアイドルの握手会にも行くような方で、オタクの友人もいるからこそのリアル感ある言葉。全ての人間が将来何かのオタクになるかもしれない、という可能性を考えて、『推し武道』は義務教育にするべきだと思う。それくらい優しくて学びのある漫画だ。この漫画を読んで育ったオタクが、厄介なオタクになるはずがない。

 急に最新刊の話をするが、7巻に収録されている37話で、舞菜の不運さをえりぴよとオタクの友だちが話す場面がある。その後すぐにえりぴよにも不運な出来事が起きるが、「オタクは推しに似るっていうし!」とニコニコしていた。何でもいいから推しとの共通点が欲しいオタクあるあるだ。頭がおかしいとか人間として変とか、散々な言われようだとしても推しと一緒だから嬉しい。「推しに似ちゃったエヘヘ♡」だ。

 また、38話では舞菜とちゃんとしたチェキを撮れたえりぴよが「わたしが死んだらこれを遺影にして下さい」とニヤニヤしながら言う。これもオタクは本気だ。実際に私も発したことがある言葉であり、もし死んだら自分の持ち物を全部売って推しに振り込んでほしいと考えている。死後の財産という点から、推しが受け取れる生命保険も探した。しかし、他人に受け取ってもらうのは難しいらしい。推しがいるオタクは頭も少し良くなるのだ。

アイドルとオタクとお金のこと

 アイドルがアイドルを続けてくれているからこちらから好きと言えて、辞めてしまったらもう会えることもないし、好きと言えることなんて全くない。お金を払っているから好きと言わせてもらえる。作中でも「会う=金銭が発生する」ことに対しての描写がある。

 パフォーマンスという対価があるものの、アイドルとオタクはお金を払うから繋がっていられる関係だ。少しでもお金になるからアイドルは不当定多数のオタクからの好きを受け入れられて、お金を払うからオタクも好きと言わせてもらえる。

 毎年推しの誕生日には、推しを産んでくれたご両親、推しが推しになるように育ててくれた社会、推しがアイドルを続けられるようにしてくれている事務所の人、推しにきちんとお金を払っているオタクたちに感謝をしている。えりぴよも死んだ目をしながら舞菜のご両親に感謝をしていた。オタクになると、推しにまつわる全てのことに感謝の気持ちをもち、慈しむ心が生まれるのだ。

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