『僕のヒーローアカデミア』相澤消太はなぜ信頼されるのか? デクの才能を見出した、教育者としての姿勢

生徒を見る目は間違いない、教師としての相澤

 個性把握テストで、デクに「おまえの“力”じゃヒーローにはなれないよ」と言い放った相澤。そう言ってデクの出方を観察していた。本来なら、そこでデクは一度除籍になっていたかもしれない。玉砕覚悟の全力も、委縮して力を発揮しないのも“見込みなし”。だがデクは、玉砕覚悟の全力も、力を発揮しないということも選ばなかった。今の自分にできる全力、行動不能に陥らないように考えて力を発揮した。その一瞬に、相澤はデクのわずかな“見込み”を見出したのだ。

 また、初めての期末試験では、実技試験で推薦入学組の八百万と轟を組ませ、自身がヴィラン役として相手をしている。八百万が体育祭以降、自分の考えに自信が持てなくなり、轟より自分が格下だと決めつけていた。自信を取り戻させてやりたい相澤だが、「それは俺の役じゃない」とも言う。自信を取り戻させる役割は轟だった。良くも悪くも迷いがなく、言葉を真っ直ぐにぶつける轟は、八百万の本当の力を指摘し、実践させた。そして、見事に八百万の自信回復につなげたのであるこれは普段から生徒の細かなところまで見ているから相澤だからできた采配だ。

 教え子たちには、一人前のヒーローになってほしいと切に願っている。だからこそ、自身の戦いの中で思い出すのも教え子のことたちなのだ。

「見ててやらなきゃ あいつらを 卒業させてヒーローになるまで」

 だから、相澤は強い。唯一無二の友を失い、絶望を経験した相澤だからこそ抱える想い。教え子たちを生かすと同時に、相澤もまた、教え子たちに生かされているのかもしれない。

(文=ふくだりょうこ(@pukuryo))

■書籍情報
『僕のヒーローアカデミア』(ジャンプコミックス)既刊29巻
著者:堀越耕平
出版社:集英社
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