『アンデッドアンラック』ハイテンションな展開で物語は未知の領域へ 否定の力の“可能性”とは?

 しかし4つの課題が提示されたところで、ビリーが突然、仲間たちを攻撃。実は彼はUNDERのボスだった。ビリーは全身が炎で包まれた巨人のUMA・バーンを操り、課題に挑む際に必要な「円卓の席」を奪い逃走。仲間には不可信(アンビリーバブル)と伝えていた能力は、実は否定者の力をコピーする力で、特殊チームの否定者たちの力を身につけていた。

 当初は展開が早く状況が次々と変わっていくスピード感に圧倒されると同時に「もしかして打ち切りか?」と心配だった『アンデラ』だが、連載が起動にのった3巻からは物語のスピード感を少し緩めて、今後はアンディと風子が様々な課題に挑戦して成長する姿を描くRPG的な展開になるかと思っていた。実際、黒競売における否定者同士のチーム戦はとても面白かったため、こういったイベント&バトルを順番に見せる方向に向かうと思っていたのだが、4巻でビリーが裏切ったことで、再び物語は大きく展開する。

『アンデッドアンラック』2巻

 2巻の最後で、本来の姿であるヴィクトルに戻ったことで暴走するアンディを止めるために特殊チームの否定者9人とアンディのバトルとなった時も「最終回?」という盛り上がりだったが、逃走するビリーを止めようとアンディ&風子&タチアナが戦いを挑む場面も「ラスボス戦か?」というハイテンションで、勢いは全く衰えない。

 感心したのは、4巻冒頭でタチアナの過去が語られ、彼女にとってビリーとの絆がいかに大きいかが描かれていること。だからこそ、ビリーに裏切られたタチアナの悲しみという人間ドラマが際立つ。

 「黒競売」と「ビリーの裏切り」は別のエピソードだが、同じ4巻に収録されているため、物語の繋がりが本誌で読んだ時よりもはっきりとわかる。連載で読んでいる時は意外性を狙った行き当たりばったりの展開にも思えたが、単行本で読むと各エピソードが有機的に繋がっており、計算された見事な配置だとわかる。意外性の連続でありながら圧倒的な完成度を誇る『アンデラ』の物語はどこに着地するのか。物語はまだ4巻である。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■書籍情報
『アンデッドアンラック』既刊4巻
著者:戸塚慶文
出版社:株式会社 集英社
https://www.shonenjump.com/j/rensai/undead.html

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