「LINEマンガ」担当者が語る、ウェブトゥーンの次なるステップ 「グローバルで人気になる可能性は十分にある」
■日本発の作品をNAVER WEBTOONを使ってグローバル展開させたい
――LINEマンガは2018年にLINE Digital Frontier(以下LDF)運営となり、NAVER WEBTOONと資本・業務提携していますね。運営が変わり、NAVER WEBTOONと提携して以降、何が変わりましたか。
平井:今年の8月からWebtoon Entertainment Inc.が我々の親会社となり、NAVER WEBTOONと同じ親会社を持つ企業としてグループ間の連携を本格化させた体制になりました。コンテンツや人的リソース、データ分析などに関する知識など、様々な部分でグループ間のシナジーを高めています。NAVER WEBTOONは北米や韓国を中心に世界各国でマンガサービスを展開しているプラットフォームですから、今後は出版社から提供いただいている独占配信作品も含め、LINEマンガ発の作品を同社のプラットフォームを活用し、グローバルで展開できればと思っています。まだ始めてから1年程度ですが、すでに『マリーミー!』や『文学処女』など数作品はグローバル展開しています。世界で配信されると読者数の桁が変わり、その分、収入も増える点は作家さんにも魅力に思ってもらえたら嬉しいです。『女神降臨』や『外見至上主義』などのウェブトゥーンが日本でもヒットしていることを思えば、日本で人気の作品がグローバルで人気になる可能性は十分にあります。
――ただ、日本のマンガ市場は4300億円台で世界最大ですよね。アメリカですら1100億円台と約4分の1しかありません。読者数はともかく、金額ベースで見て本当に稼げますか。
平井:成長速度が違います。ここ数年、日本の電子書籍市場をはるかに上回る成長率でウェブトゥーン市場は大きくなっており、グローバルではウェブトゥーン(縦スクロール作品)がスタンダードになっています。たとえばNAVER WEBTOONはグローバルMAUで各国およそ67000万人以上の読者がいますが、将来的には日本よりグローバル市場の方が大きくなる可能性もあると思います。
■『神之塔』はTVアニメ化を機に飛躍的に伸びた
――今年NAVER WEBTOON作品の『神之塔』『ゴッド・オブ・ハイスクール』『ノブレス』が続けてアニメ化されました。LINEマンガにどんな影響がありましたか。
平井:アニメ化以前から、全世界累計閲覧数では『神之塔』が45億回、『ゴッド・オブ・ハイスクール』が38億回、『ノブレス』が46億回以上を記録する人気でしたが、LINEマンガの読者数や売上はアニメ化以前と比べるとかなり増えました。特に『神之塔』は原作ファンの熱量が高く、SNS上の反応も大きかったこともあり、大きく伸びました。
――フルカラー縦スクロールのウェブトゥーンは日本国内で浸透したという認識ですか?
平井:配信当初から読者はタテヨコを意識せずに読んでくれていると感じています。とくに若年層はそうですね。LINEマンガでは女性には『女神降臨』のような恋愛マンガが、男性向けだと『喧嘩独学』のようなアクション要素のあるものが人気です。ただ、作品はバランスよく幅広いニーズに応えるラインナップを意識しています。
――ウェブトゥーン作品はほとんどコミックス化されておらず、LINEマンガでは課金しても1週間しか閲覧できない「話レンタル」しかできないため、長編を読み返す際、不便です。この点、改善の予定はありますか。
平井:検討しています。紙の単行本は縦描きで作ったものを横に組み直して紙でフルカラー印刷するコストがかかるため簡単にはいきませんが、なんらかのかたちでファンの保有ニーズは解消していきたいと思っています。
――2020年は韓国ドラマが日本で大きく注目された年でした。LINEマンガで配信されているウェブトゥーンを原作にした作品として『少女の世界』『恋愛革命』などが今年ドラマ放映され(もっとも、日本の地上波で、ではないですが)、『Sweet Home』もNetflix配信が予定されています。ドラマファンの流入はありますか。
平井:我々が日本でプロモーション活動をしていたわけではないので分かりかねるのですが、今年韓国でドラマ化される『女神降臨』はSNSを見ているとファンのアカウントがあるくらい人気で、著名なキャストが主演することもあり、日本で放送されることになればドラマファンの流入も見込めるのではと思っています。
――LINEマンガとしての中長期的な目標と、直近の告知事項があればお願いします。
平井:国内でユーザー数と売上で圧倒的なナンバーワンを取ることが目標です。そのためにも、サービスのレベルを上げ、毎日使いたくなるような仕組みや人気の作品を生み出せる仕組みづくりに注力していきたいと考えています。
また、目下の告知事項としては、『マリーミー!』のTVドラマと『ノブレス』のアニメが放送中なのでぜひご覧ください。
他にも、『女神降臨』『外見至上主義』をはじめとする人気作品のグッズを販売する期間限定ポップアップショップを10月29日から全国のマルイでオープンしています。作家全面監修のもと、ここでしか手に入れることができないグッズを多数用意していますので、ぜひ足を運んでみてください。
■飯田一史
取材・調査・執筆業。出版社にてカルチャー誌、小説の編集者を経て独立。コンテンツビジネスや出版産業、ネット文化、最近は児童書市場や読書推進施策に関心がある。著作に『マンガ雑誌は死んだ。で、どうなるの? マンガアプリ以降のマンガビジネス大転換時代』『ウェブ小説の衝撃』など。出版業界紙「新文化」にて「子どもの本が売れる理由 知られざるFACT」(https://www.shinbunka.co.jp/rensai/kodomonohonlog.htm)、小説誌「小説すばる」にウェブ小説時評「書を捨てよ、ウェブへ出よう」連載中。グロービスMBA。
■関連情報
『マリーミー!』ドラマ情報 https://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2020/3405
『ノブレス』アニメ情報 https://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2020/3406
ポップアップ情報 https://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2020/3455