化粧は“枷”ではなく、なりたい自分への“鍵” 『だから私はメイクする』が伝えること

 シバタヒカリによるコミカライズでは、一話ずつ主人公が変わるオムニバス形式でストーリーが進む。そして物語をつなぐキーパーソンとして、BA(ビューティーアドバイザー)の熊谷というキャラクターが生み出された。この熊谷こそが、まさに理想のBAと呼びたい人物像に仕上がっているのだ。

 コミカライズ版第1話の主人公・笑子は、化粧の濃さから「マリー様」というあだ名をつけられた女性。彼女が理想とするのは人間離れしたお人形のようなメイクで、スッピンを真っ白なキャンバスに見立て、自分が一番ときめく女の子の顔を描いている。笑子のメイクは周囲の人、とりわけ男性からの受けが悪く、初めて彼女のスッピンを見た彼氏が別れを切り出したほどだった。そんな笑子に対して熊谷は、「どんな理由でメイクをするかに関わらず 自分のことを好きになれることが大事だと思います」と声をかけ、理想の肌を作るファンデーションを探すお手伝いをするのだった。

 ドラマ版で熊谷を演じるのが、美容研究家として人気の神崎恵で、24年ぶりの連ドラ出演という要素も話題を呼んだ。さらに山本織香というBAには、NMB48のメンバーで美容系YouTuberとしても活躍する吉田朱里が抜擢された。ドラマ版『だから私はメイクする』は、美容界で支持を集める人がキャストとして選ばれており、納得度の高い人選も魅力となっている。

 マルチな作品展開をみせる『だから私はメイクする』。それぞれのメディアごとの趣向を堪能しつつ、自分が自分でいられるメイクや装いを見つけたい。

■嵯峨景子
1979年、北海道生まれ。フリーライター。出版文化を中心に幅広いジャンルの調査や執筆を手がける。著書に『氷室冴子とその時代』や『コバルト文庫で辿る少女小説変遷史』など。Twitter:@k_saga

■書籍情報
『だから私はメイクする 悪友たちの美意識調査』
著者:劇団雌猫
出版社:柏書房
出版社サイト

『だから私はメイクする』(フィールコミックス)
漫画:シバタヒカリ
出版社:祥伝社
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