『BLEACH』クールな滅却師・石田雨竜を変えたものは? 黒崎一護との因縁を超えて
雨竜に必要なのは友人だった
初登場時の雨竜はそっけなく、冷たい。同級生に話しかけられてもそっけない。しかし、一方で手芸部員でクラスメイトの女子からぬいぐるみの修復を頼まれて直してあげたりもする。ただお礼を言われても「大したことをしたわけじゃない」とクールだ。
それが、尸魂界に行ってからは少しずつ変化を見せる。怪我の治療に当たっていた織姫に気遣いの表情を見せながら「お疲れ様」と言ったり、とっさにかばったり、という一面を見せる。そして一護に対しても「死神代行と滅却師」としてではなく、友人、共に戦う仲間として接するようになっていく。また、織姫と行動することが多く、織姫の突拍子もない言動に驚きつつも、すぐそばで見ているだけに、織姫の一護に対する気持ちを察し、気遣いを見せることも増えていく。
最終巻。雨竜は敵から「黒崎たちと似ている」と言われるシーンがある。
「(僕は)今まで全て冷静に天秤にかけて行動してきたつもりだ」
「でも黒崎はバカだからそれができない。助けたいと思ったら助けに行くんだ」
「そのバカな連中と同じに見えているのなら…僕は嬉しい」
「彼らと共にいることを選んだ。そこに利害はない。正解も不正解も無い。僕らは友達だからだ」
しかし、この言葉を一護たちの前で言うことはない。追い詰められたタイミングで打ち明ける。声に出して、伝わらなかったとしても、残しておきたかったことなのかもしれない。
ひとりきりだったころに一護に持ちかけた勝負はバカげたものだったかもしれない。出会いが雨竜を変えた。人を知り、誰かを大切にする気持ちを持つことで、戦い方だけではなく、生き方も変えてしまったのだ。
(文=ふくだりょうこ(@pukuryo))
■書籍情報
『BLEACH』(ジャンプ・コミックス)74巻完結
著者:久保帯人
出版社:株式会社 集英社
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