『進撃の巨人』いよいよクライマックス間近! 残酷な展開で読ませる、諫山創の真骨頂

 結局、ミカサたち調査兵団も作戦に加わり、キヨミたちアズマビトを救出するのだが、その過程でかつての仲間を殺し、アルミンも負傷する。こういう船や飛行船を奪還する作戦は映画やアニメで何度も見てきたが、たいていは味方側がうまい作戦を思いついて、犠牲をほとんど出さずに成功させるものだ。しかし本作は、このような前哨戦も丁寧に描き「戦いには必ず犠牲者が存在するのだ」と、繰り返し見せる。

 すでにエレンが起こした「地ならし」を止めなければならないという最終目的が提示されているため、モタモタせずに早く話を進めてくれと、たまらない気持ちになるのだが、このジリジリと進んでいく嫌な手触りこそが、漫画家・諫山創の真骨頂だ。

 飛行艇が搭載された船を奪還し、アズマビトとともに逃亡するアルミンたち。一方、マーレ軍のマガト元帥は、イェーガー派の増援を食い止めるために港に残る。そこにミカサたちの教官だったシャーディスが現れ共闘し、マーレ軍が残した巡洋艦を爆破する。内側に潜入して、船を爆発させることで自ら犠牲になるマガトとシャーディス。敵味方の陣営に別れて殺し合っていた2人が、最後にお互いを称え合った末に名前を名乗り合う姿は、絶望的な展開が続くこの巻の中で唯一の希望と言える場面だろう。

 しかし生き残ったミカサたちを待っているのは更なる絶望だ。エレンが率いる巨人たちが、大陸を踏み潰すまでにかかる時間は4日。一方、飛行艇の整備には十分な施設があっても半日はかかる。そして、仮に飛行艇が飛んだとしても、どうやってエレンを止めればいいのかは、誰にもわからない。復活したアニも含めて、5人も巨人化能力者がおり、戦闘力においては最強のチームであるはずなのに、まったく勝ち目が見込めない。

 一方、マーレ大陸に上陸する巨人たちを防ぐために世界連合艦隊が世界中の巨大大砲を終結させて一斉射撃するが、巨人たちにはまったく歯が立たない。マーレ兵の1人が巨人化したエレンを指差し「進撃の巨人だ」と言った後で「駆逐してやる」「この世から一匹残らず」というエレンのナレーションが被さる。

 主人公のエレンが、幼い時に巨人に母親を食べられた際に決意した「駆逐してやる」という巨人への敵意が、今度は人類全体に向けられている姿を見ると「随分、遠くまで来てしまったなぁ」と思う。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■書籍情報

『進撃の巨人』(講談社コミックス)既刊32巻
著者:諫山創
出版社:講談社
http://shingeki.net/

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