テレパシー、かめはめ波、スタンド……漫画における「気」の表現はどう進化してきた?

「スタンド」の登場

 とここまではあくまでも気、精神エネルギーの塊を球として捉えてきたわけだが、ある作品がその概念を一気に飛び越えた精神の表現を見せることとなる。そう、『ジョジョの奇妙な冒険〜スターダスト・クルセイダース〜』から登場する、「スタンド」である。荒木飛呂彦という天才は、それまで球形を中心に概念としての形として表現されていた精神エネルギー、精神の形を人の形で具現化してしまったのだ。スタンドはその人の精神エネルギーが形となって現れたものだから、人物ごとに形が違ってもいい、その人の性格によって攻撃方法が変わってもいい。精神エネルギーの形であり、自分の身代わりとなって戦ってくれるもうひとつの身体であり、または自分を助けてくれる武器、ツールであったり、身につけるものであったり、多種多様。先述の流れで縛られつつあった精神エネルギーの表現手法に、再び漫画らしい自由をもたらした、ある意味革命的なアイディアであったといえよう。

 とまあここまで気・精神エネルギーの表現手法の変遷について振り返ってきたが、もちろん今回挙げた作者の他にも多くの作家が様々な表現にトライしている。目に見えないモノを具現化して表現できるのも漫画の魅力のひとつであり、漫画が持つ可能性を感じさせる大きな要因であると言える。

■関口裕一(せきぐち ゆういち)
スポーツライター。スポーツ・ライフスタイル・ウェブマガジン『MELOS(メロス)』などを中心に、芸能、ゲーム、モノ関係の媒体で執筆。他に2.5次元舞台のビジュアル撮影のディレクションも担当。

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