雨の日は幽霊が見つけやすい? 霊視芸人・シークエンスはやともの「ヤバい生き霊」体験

〈目の前にいるのが、幽霊なのか生きている人なのか。一瞬で判断するのは、けっこう難しいです。〉

〈見た目は、生きている人とぜんぜん変わらないので、区別がつかなくて苦労したこともありました。〉

 はやともは生きている人とそうでない人の判断がつきやすいのは雨の日だと、以前とあるライブで発言している。「生きている人は傘をさすが、幽霊は傘をささないから」だそうだ。それ以来、私は雨の日に傘をさしてない人をたまに見かけると、もしかして……と思うようになってしまった。おばけはおばけらしい見た目をしていない。今すれ違った人も、この世の人ではないかもしれない。彼の話を聞いて、霊という存在がぐっと身近に感じられるようになった。

〈霊体の中心には、僕が「プライベートゾーン」と呼んでいる“魂”のような部分があって、僕が霊視をするときは、そこを深く覗き込むことで、人の性格や本心を見極めています。〉

 誰がどの人をいいと思っているか霊視でわかるため、芸人仲間の合コンにひっぱりだこだというはやとも。だが、人の本心がわかってしまうのはもちろんいいことばかりではない。

〈友達だと思っていた相手が、実は自分を嫌っていると知ってしまったり、信頼していた人から、裏切られていることに気付いてしまったり……。嫌な思いをしたこともたくさんあります。〉

 はやともを初めてライブで見たとき、若いのにどこか達観したような喋り方をする人だなと思った。それがどうしてなのかこの本を読むとなんとなくわかる。霊感があるがゆえに様々な体験をしてきて、人を信じることができなくなってしまったのかもしれないと。

〈せっかくお笑い芸人になったんだし、やっぱり1人でも多くの人を笑顔にしたいじゃないですか。見えちゃうものはしかたないんだから、この能力を少しでも誰かの役に立てようって思ったんです。〉

 小学生の頃に『地獄先生ぬ~べ~』を愛読し、霊が見えるという体質に少しでも憧れを持っていた自分を、私は深く恥じた。創作上のカッコいい霊能者のイメージが先行して、実際に霊感のある人がどれだけ大変な思いを抱えて生きてきたか、私は全然わかってなかったのだ。

〈この本を読んだ方にはわかっていただけるかと思いますが、正直なところ、僕の人生は結構ハードモードでした〉

〈でも今のところ、こうして元気に生きているし、夢だったお笑い芸人にもなれて、応援してくれる家族や、かわいがってくれる先輩、バカ話で笑い合える仲間たちに囲まれて、けっこういい人生を歩んでいます。〉

〈ハードモードな人生も、自分の考え方次第でどうにかなるものなんだなって実感しています。〉

 ハードモードな人生をたくましく乗り越え、お客さんを笑わせるためにはやともは舞台に立ち続ける。彼の巧みな話術に、私は今日も惹き込まれていく。

■ふじこ
兼業ライター。小説、ノンフィクション、サブカル本を中心に月に十数冊の本を読む。週末はもっぱら読書をするか芸人さんの配信アーカイブを見て過ごす。Twitter:@245pro

■書籍情報
『ヤバい生き霊』
著者:シークエンスはやとも
出版社:光文社
発売日:2020年8月4日
定価:本体1,200円+税
https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334951856

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