『電影少女』のリアルな描写は少年たちを成長させたーー恋愛漫画の金字塔、その作風を考察

高校生の“リアルな恋愛”を描くということ

 やはり高校生にもなれば、単なる純愛ではリアリティは生まれない、性的な要素は避け難いところではあるが(そもそも電影少女がセクシー女優、ダッチワイフ的な存在でもあるし)、たとえばヒロインのもえみが襲われそうになったり、洋太と伸子やもえみが一線を超えそうになる下りの描写は、当時漫画であることを忘れてドキドキしながら読んでいた記憶がある。この辺の性的な描写はのちに『BOYS BE…』など多くの作品に影響を与え、やがてそれが少年誌の自主規制に繋がっていくことになる。ちなみに手元にある電影少女は全て初版なので、今現在読める電影少女がどれくらい修正されているのかはわからない。

『I''s』文庫版表紙

 ということで、電影少女は本格的に恋愛漫画に向き合った作者が己の得意分野であるSF要素にリアリティをもたせる画力で説得力を与えたことによって生み出された奇跡の名作漫画であった。個人的にはあい編のあとのショートエピソード、恋編もまた素晴らしい作品である。作者的には不本意な部分もあるかもしれないが、『電影少女』という存在のコンセプトを本来あるべき姿で描ききってみせた、このエピソードがあったからこそ、あい編もより輝きを増すことになったと言えよう。

 もう30年以上前の作品になってしまっているが、今読み返しても全く古びたところが一つもない、時代設定だけ現代に変えればそのまま通用してしまうエバーグリーンな魅力をもった名作なので、未読の方はこの機会にぜひ一読してもらいたい。そしてこの作品があったからこそ、作者の次の名作、『I''s』が生まれることになるわけだが、『I''s』に関しては次回考察していこうと思う。

■関口裕一(せきぐち ゆういち)
スポーツライター。スポーツ・ライフスタイル・ウェブマガジン『MELOS(メロス)』などを中心に、芸能、ゲーム、モノ関係の媒体で執筆。他に2.5次元舞台のビジュアル撮影のディレクションも担当。

■書籍情報
『電影少女(1)』
桂正和 著
 価格:本体760円+税
出版社:集英社文庫
公式サイト

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