『ハイキュー!!』東峰旭が頂で見た景色 エースとしての責任感と弱さの肯定

 バレーボールに青春をかける高校生たちを描く『ハイキュー!!』。今回ピックアップするのは烏野高校の主砲・3年の東峰旭だ。

 身長は186.4cm、ポジションはウィングスパイカー。パワーは烏野随一。中学時代から注目されており、「西光台の東峰」と恐れられてもいた。

 しかし、そんな彼の姿は初回で見ることはできない。ある理由から、バレー部を休部していたからだ。長髪にヒゲとワイルドな見た目ながら、繊細で優しいハートを持つ東峰旭。そんな彼が真の羽化を遂げるまでを追う。

潰されたエースとしての自信

 エースとしてチームの中心で活躍していた東峰。身長も大きくパワーもあり、守備もできて難しいボールでも決めてくれる。正セッターであった菅原も頼っていたし、チームが信頼していた。

 しかし、ブロックに定評がある伊達工業高校との試合で徹底的にマークされ、スパイクはどれもシャットアウトされた。東峰はトスを呼べなくなった。ブロックを打ち砕くスパイクのイメージが見えなくなり、シャットアウトされるかそれにビビッて自滅する自分の姿が頭をよぎる。

 ボールを託されたエースがスパイクを決めなければ、試合には勝てない。勝つための1点が取れない。試合後、トスを呼べない自分、諦めてしまった自分はもう部活にいる資格がないと、東峰はバレー部に顔を出さなくなってしまう。

 それを変えたのは、主人公・日向の存在だった。エースに憧れる日向は、東峰の存在を知り、3年生の教室に会いに行くことに。身長もパワーもある東峰を羨ましく思う日向のまっすぐな眼差しに、東峰もスパイクを打つ瞬間の魅力を思い出していく。東峰は、たくさんブロックされてきたが、それよりももっといっぱいのスパイクを打ってきた。

「だから皆――アサヒさんを“エース”って呼ぶんだ」

 エースに夢を抱いているだけでまだ雛鳥だった日向の言葉が、東峰の足を体育館へと向かわせた。東峰が復帰したのは鳥養コーチが見学にやってきたときのこと。久しぶりにコートに立ち、実感する。

「やっぱりここが好きだ」

 しかしどうしても、ブロックされたときのことが頭をよぎる。でも同チームの菅原・西谷の言葉が東峰の背中を押す。

「壁に跳ね返されたボールも俺が繋いでみせる」
「だから、もう一回トスを呼んでくれ」

 菅原があげたボールを、東峰は打ち切る。リベロが拾い、セッターがボールを上げて、ようやくスパイクが打てる。1人で戦っているのではないと改めて気がついた瞬間、烏野のエースは復活を遂げたのだ。

気弱なエースの成長

 見た目はワイルドなのに繊細な東峰は、キャプテン澤村から「ひげちょこ(ひげ+へなちょこ)」などと言われている。

 春高予選でも緊張して気分が悪いと弱気な部分を見せていたが、自分のボールを無意識のうちに奪おうとした日向に対して、自分がエースだと気迫を見せつけるシーンもあり、少しずつだが変化を見せていた。急成長を遂げる日向の傍らで東峰もまた成長を続けていたのだ。

 覚醒前の月島は、春高予選前の夏合宿時に東峰に日向についてこんな質問を投げかける。

「嫌じゃないんですか? 下から強烈な才能が迫ってくる感じ」

 日向が日に日に成長するのをひと一倍感じるとしつつも、東峰は「でも俺は負けるつもりはないよ」と言い切る。エースとしての覚悟が強くなっていたのだ。

 春高予選決勝、白鳥沢戦のファイナルセットでは、スタメンに入り緊張している菅原に対し「迷ったら俺に集めればいい」とエースらしい言葉をかけている。「頼もしいな、エースかよ」という菅原のツッコミに対して「エースだよ!」と返しているのも感慨深い。

 しかし、元来の優しい部分(気弱な部分とも言うかもしれないが)がなくなったわけではない。ミスでもないのに謝る癖はを、田中や影山から注意を受けている。澤村にも「確かに旭は何かミスる度この世の終わりみたいな顔すんのやめたほうがいいな」と言われている。人一倍落ち込む気質や、責任感が強いの性格は失ってしまった訳ではないのだ。

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