『ざんねんないきもの事典』圧倒的人気の理由 「図鑑」から「事典」へ、ブームの変遷を辿る

親子でいっしょに楽しめる

 危険生物は大判の「図鑑」が主戦場だったが、『ざんねんないきもの事典』は四六判のコンパクトな「事典」だ。

 ここもミソだ。

 図鑑は保護者が子どもといっしょに読むには、なかなかに大きい。リビングで読むのはいいが、寝室で寝る前にいっしょに読むことには向いていない。

 寝転がって手に取れる大きさの本なら親子のコミュニケーションツールになるし、1動物1ページと記述も短いなので、キリのいいところで「また明日」にしやすい(この「短時間でもキリのいいところまで読めるよう区切りを短くする」という特徴は、朝読用を狙った読みものにもよく見られる)。

「一見するとだめだが、それでもいい」というのは児童マンガの基本

 「ざんねんないきもの」というコンセプトは、動物をくくるワードとしては新しかったが、「一見するとだめだが、でも、それでもいいんだ」というメッセージは藤子不二雄のマンガなどに典型的なように、児童マンガの登場人物たちが体現してきたものでもある。

 大人の一般常識からするとへんてこな命、生き方も肯定すること、変わったところや弱点を否定するのではなく愛すること、これは大人から秩序、ルールに従うよう日々押しつけられ、窮屈な想いをしている子どもからすればとても魅力的なものだ。

 つまり、子どもが好きなもの(自由さの肯定、生きもの、へんなものへの興味)を詰め込み、親子で楽しめるように、かつ今までにないかたちとコンセプト(「ざんねんないきもの」を体現する脱力・イラスト路線)でパッケージしたことがこのシリーズが愛される理由だろう。

■飯田一史
取材・調査・執筆業。出版社にてカルチャー誌、小説の編集者を経て独立。コンテンツビジネスや出版産業、ネット文化、最近は児童書市場や読書推進施策に関心がある。著作に『マンガ雑誌は死んだ。で、どうなるの? マンガアプリ以降のマンガビジネス大転換時代』『ウェブ小説の衝撃』など。出版業界紙「新文化」にて「子どもの本が売れる理由 知られざるFACT」(https://www.shinbunka.co.jp/rensai/kodomonohonlog.htm)、小説誌「小説すばる」にウェブ小説時評「書を捨てよ、ウェブへ出よう」連載中。グロービスMBA。

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