与沢翼が語る、コロナ時代の『お金の真理』 「現在の決断が今後10年を左右する」

いまは断捨離を徹底すべき

――本書では繰り返し、いまは断捨離をすべき時期だと説いています。個人のレベルではもちろん、企業や国家も不必要なものをカットしていくべきだというメッセージだと受け止めました。経済を回すことは大事ですが、同時にサステナブルな社会を目指す上で、何を残して何を断捨離するかの取捨選択は必要なのかなと。

与沢:仰る通り、個人から国家に至るまで、様々な角度の断捨離が必要だと思います。コロナ禍はあらゆる物事が同時に試されている特殊な事態です。例えば今年のはじめに米イラン戦争が起こりそうになりましたが、日本人にとってはどこか対岸の火事のように思えたはずです。でも、コロナ禍は世界中のどの国も他人事ではなくて、都市の封鎖が起きたり、ソーシャルディスタンスが意識されるなど、人々の現実の生活が変えられる事態に陥っている。それは災難ではあるのですが、一方で全世界を対象とした淘汰のテストとしても機能しているところがあって、不必要だったものがあぶり出され廃棄されていっています。

 また、日本の経済は長らく低成長に陥っていましたが、貯蓄癖のある国民性だったため、そのことがコロナ禍の中で相対的優位に働く可能性はあると思います。米国は個人がクレジットを限界まで切っているような国民性なので、ニューヨークの高い家賃相場の中で翌月からもう支払いが滞ってしまうような人がたくさんいますが、日本はそこまでではない。もちろん大変な思いをされている方も多いですが、他国と比べると、日本はコロナ禍に耐えうる国家だと思います。本書でも繰り返し述べていますが、貯蓄はいざというときのパワーであり、貯蓄があって生き延びていてこそのチャレンジですから。

 本書にも書いていますが、このような状況の中でどう振る舞うかが、今後の10年を左右するはずです。これまでの経済活動を見つめ直す良いチャンスだと捉えて、必要なものと不必要なものをしっかり選別していく必要があるでしょう。このタイミングで本当に必要なものを見定めた人はいずれ結果を出すはずですし、逆にステイホームでアルコール量が増えるなど悪習だけを身につけてしまう人もいるはず。投資やビジネスにおいて一番大事なのは、タイミングを計る力であり、今は何をすべき時かの流れを見極めたうえ、勝機がくるまでは虎視眈々と待ち続けるのがセオリーです。どんな状況にあっても自暴自棄にならず、焦ってお金儲けをしようと考えたりせず、いまは断捨離を徹底して、コストカットに努め、今後の理想的な状態の定義のために時間を使ってほしいです。

――本書でも「ピンチは変化のきっかけ、変化は成功のきっかけ」と述べていますね。

与沢:ピンチはチャンスと思わないと駄目です。松下幸之助は、なぜそれほど余裕のある経営ができるかと問われて、「余裕のある経営をしたいと思わなければいけない」と応えたそうですが、まず「こうありたい」との意志がなければ、物事はそうなっていきません。いまがピンチかチャンスかなんて、誰にもわからないことだけれど、チャンスだと捉えることでしかそれを乗り越える新しい発想は生まれてきません。私自身、学生時代に起業した会社が倒産した時は、融資が受けられなくなって苦労しましたが、その結果として負債や出資に頼らず自己資金で経営をするという発想になり、復活を果たすことができました。国税滞納金の問題の時は、経営者に向かないことにようやく気付いて、海外を拠点に個人投資家をするという現在のスタイルになりました。振り返ると大きなピンチはすべて、その後の人生が劇的に好転するきっかけでした。人間、痛い目を見ないと変えられないところはあるし、その意味でもピンチはチャンスなんです。

ーーコロナ禍で停滞感のある日々の中、前向きに頑張っていくコツはありますか。

与沢:すぐに結果を求めないことは大事でしょうね。20代くらいの若い人は特にそうだけれど、何かをきっかけに自分が一気に大活躍することを夢見たりしていますが、そういう考え方だと自分の無力さにすぐ気付いて諦めてしまうケースが多いです。そうではなくて、1日に1つでも、ちょっとしたことを意識して改善してみる。自分にとって悪習だと思うことがあったらそれを辞める。3週間、小さな挑戦を継続できれば達成感も出てきて、もう少しチャレンジがしたくなる。その繰り返しです。意欲を保ち続けるコツは、小さい成果を積み重ねることです。

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