『ジョジョリオン』は『ジョジョ』史上最大の問題作かーー「呪い」の正体とは?

 物語冒頭、「これは『呪い』を解く物語」だと語られる。ここで言う呪いとは「穢れ」や「恨み」、「人類が誕生し物事の城と黒がはっきり区別した時にその間に生まれる『摩擦』と説明する者もいる」と説明されるのだが、3.11以降に連載が始まったため、震災以降の日本の混乱を「呪い」に例えているのかと当初は思えた。しかし、第23巻まで読むと「人が病を克服したいと願う気持ち」、つまり医療を筆頭とする文明そのものが「呪い」として描かれているように見える。

 もう一つの重要なキーワードが「等価交換」。劇中にはロカカカの実の他にも病を治す奇蹟の力がいくつか登場するのだが、どの力も奇蹟の代償として「呪い」を生み出してしまう。その意味で奇蹟=呪いの連鎖こそが本作の敵だと言えるのだが、話が進めば進むほど、それがいかに恐ろしい存在かと思い知らせる。

 つまり、善悪は表裏一体で敵と味方の境界は極めて曖昧だとわかってくるのだ。現在は、ラスボスと思われる89歳の病院院長・明負悟との戦いが進行中だが、後ろ姿しか見えない明負は「追跡の意思」を持つと「必ずなにかが激突してくる」スタンドの持ち主で、東方密葉は「あれは『災い』なのよ」と言う。

 だが一方で、明負は、ロカカカの実を再生医療の新薬に用いようとしており、単純な悪とも言い切れない。今まで『ジョジョ』に登場したラスボスの中で、もっとも不気味な存在で、謎と呪いに満ちた『ジョジョリオン』を象徴する存在だが、果たして仗助は彼を倒せるのか? まったく先が読めない本作は、『ジョジョ』史上最大の問題作である。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■書籍情報
『ジョジョリオン』1〜23巻(ジャンプコミックス)
著者:荒木飛呂彦
出版社:集英社
<発売中>
ジョジョリオン公式サイト(ウルトラジャンプ サイト内)

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