『鬼滅の刃』炭治郎の“息子力”に胸キュン!? 無尽蔵のやさしさの秘密に迫る
2つ目は「真面目さゆえのボケ」。前述の炭治郎のモノローグは、ケガの痛みを我慢しながら格上の敵と戦う緊迫した状況でのものだ。なのに、まったく論理的でない内容と作者特有の卓越した言語センスによって、思わず笑わされてしまう。炭治郎が本心から思っていそうなところがまたいい。
『銀魂』が大好きだという作者は、シリアスなシーンでもこういった細かなギャグを頻繁に入れてくるが、炭治郎に関連する場面については、その「生真面目さ」が笑いを引き起こすことが多い。
炭治郎は作中で時折他のキャラを「煽る」ような発言をするが、本人にはまったくそのような意図はない。公式ファンブック収録の特別書き下ろし漫画『出張版 中高一貫!キメツ学園物語』のなかでは、炭治郎の「煽り発言」を受けた宇髄天元(うずいてんげん)が「コ…コイツ…瞳に一切曇りがねぇぜ」と評している。
こうした「家族への愛情」と「真面目さゆえのボケ」を見ていて思い出したことがある。それはSNSのタイムラインに現れてはささくれだった心を癒やしてくれる「子育てバズツイート」である。
子育てアカウントによる癒やし系のバズツイートに多く見られる特徴は、「子どもの家族への思いやり(愛情)」と「経験値の少ないゆえの生真面目さによるボケ」だ(炭治郎の生真面目さは経験値の少なさではなく、性格ゆえだが)。
だから、炭治郎の言動を見ていると、タイムラインに流れてくる誰かの愛し子に感じる「自分にもこんな子供がいたら」といったほほえましさを覚えてしまうのだろう。
■六原ちず
編集者、ライター。出版社勤務を経て、フリーに。子どもの頃の夢はマンガ図書館の館長。@chizu_rokuhara
■書籍情報
『鬼滅の刃』既刊19巻
著者:吾峠呼世晴
出版社:集英社
価格:各440円(税別)
公式ポータルサイト:https://kimetsu.com/