ドラえもん『週刊少年サンデー』ジャックに見る、漫画雑誌の生き残り戦略

小学館あげてのドラえもん50周年企画

 現在、藤子・F・不二雄の『ドラえもん』の連載開始50周年を記念して、小学館の雑誌50誌の表紙にドラえもんが登場する「ドラえもん50周年 表紙ジャック」という企画が展開中だ。当然、3月11日に発売された同社を代表する漫画雑誌である『週刊少年サンデー15号』の表紙にも、ドラえもんが登場した。また、同じ号では表紙だけでなく、連載中の18作品のどこかにドラえもんが隠れている「シークレットドラえもんをさがせ!」というコラボ企画や、大長編シリーズの第1作目、『ドラえもん のび太の恐竜』の元になった26ページの短編が45年ぶりに再掲載(注・初出誌は本誌ではなく増刊号だった)されるなど、雑誌全体が『ドラえもん』の50周年を祝う楽しい作りになっている。

 ちなみに『のび太の恐竜』とは、(国民的作品ゆえご存じの方も多いとは思うが)主人公のひとりであるのび太が、現代に甦らせたフタバスズキリュウの赤ちゃん「ピー助」を育てる心あたたまる物語である。映画も大ヒットした「大長編」では、未来の恐竜ハンターたちとの戦いを交えた派手な展開を見せていくが、その原型である短編では、大きな体に育ったピー助をのび太とドラえもんが、一億年前の世界に還すまでのエピソードが丁寧に描かれていく。その別れの場面では、事実上の『ドラえもん』の最終回ともいわれる「さようなら、ドラえもん」(てんとう虫コミックス版第6巻収録)同様、のび太のある種の「成長」が描かれるが、そのまま泣ける話では終わらせずに、短編漫画らしい“お約束”のギャグでオチをつけているあたりは、さすが名匠、藤子・F・不二雄といったところだろうか。

 さて、この短編『のび太の恐竜』を再掲載した『少年サンデー』がどれくらい売れるのかは、これを書いている現時点ではまだ予想もつかないが(少なくとも発売日においてそれなりに注目を集めてはいる)、最近似たような、つまり、何か話題性のある短編作品を掲載した漫画雑誌が売れたというケースは少なくない気がする。記憶に新しいところでは、プロジェクト「TEZUKA2020」(「手塚治虫AI」といったほうがわかりやすいだろうか)による『ぱいどん』の「前編」が掲載された『モーニングNo.13』や、『DEATH NOTE』(原作・大場つぐみ/作画・小畑健)の12年ぶりの「新作」が掲載された『ジャンプスクエア3月号』がかなり話題になった。また、およそ1年前の話になるが、矢作俊彦と大友克洋による『気分はもう戦争3(だったかも知れない)』が掲載予定の『漫画アクションNO.9』が売り切れるのを恐れて発売前に予約した、という漫画ファンも少なくなかったと聞く。

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