『新黒沢 最強伝説』主人公・黒沢の“モテポイント”とは? 女性ライターが魅力を解説

たとえ何歳になっても人間は変われる

 中根と行ったプールでも女性の尻さえ追いかけ回さなければ、きっと「キモい!」と批判されることもなかったのでは?と思ってしまう。付き合いを続ければじっくりと良さが出てくる「スルメ」のようなタイプだ。

 穴平建設の後輩たちは、当初黒沢へ良いイメージを抱いていなかった。特にイケメン枠の坂口は彼を嫌って、現場に置き去りにしたほど。しかし物語の中盤から、仕事を抜けて決闘の地へ駆けつけたり、全面的に協力するなどかなり近しい存在になっていた。自身を嫌っていた人物が、あれよあれよという間に黒沢マジックにかかっている……。きっと黒沢の虜にならなければ、坂口はずっと彼を誤解し、嫌っていたままだっただろう。様々な人間から支持を集めていくのも見どころだが、坂口と黒沢の関係性にも注目したい。黒沢のぶっ飛んだ考えを修正しようと試みる常識人ポジションだが、結局振り回されてしまうお人好し。そして彼を信頼する黒沢……。男の友情でもあるのだが、その間には言葉に表しづらいような、不思議な絆を感じてしまう。イケメン枠で元不良、常識人の坂口と正反対の黒沢だからこそ、お互いに惹かれあうものがあったのかもしれない。

 福本先生お得意のギャンブルシーンこそないが、黒沢のギリギリの生き様は見方を変えれば賭け事のよう。不良に襲われ、警察の世話になる人生はあまり見習いたくないが、でもときに刺激的に見えてしまう。

 草食系男子なんて言葉が流行る今、黒沢のような人間は少なくなってきている。しかし声を大にして己の信念を叫び、もがき、走り回る姿は男性のみならず女性の心も打つ。男のアツさはときに、女性の母性本能をくすぐってしまうのだ。なぜだか黒沢を見続けていると「もう、しょうがないなぁ」と言いたくなる、天然さと真っすぐさがあるのだ。例え空回りしても、一生懸命に進み続ける人間はいつか花が開くもの。たとえ何歳になっても人間は変われる、人としての大切さを黒沢は教えてくれるのだ。人望も多くの支持も十分立派に集めたよ!と私は黒沢に、大きなエールを送りたい――。

■たかなし亜妖
平成生まれのサブカル系ライター。ゲームシナリオライターとしての顔も持つ。得意技は飲み歩きと自炊。趣味はホラー映画鑑賞。

■書籍情報
『新黒沢 最強伝説』
福本伸行 著
価格:本体591円+税
出版社:小学館
公式サイト

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