文章だけで漫画家になれる『漫画脚本大賞』はなぜ設けられた? マガジン&アフタヌーン編集者インタビュー

勝ち抜くためのポイントは?

2018年「週刊少年マガジン」25号に掲載された第1回の大賞の結果

ーーその他、これから応募を考えている人たちのために、選考を勝ち抜くポイントがあれば教えてください。

小山:タイトルのセンスは重要かもしれないですね。タイトルが面白ければ、つい読んでしまいますから。

寺山:面白いタイトルをつけられるということは、何が面白かをつかめているということだと思います。思わず読みたくなるタイトル、というのは大事ですね。

小山:あとは、応募していただく原作は形式自由ですし、そのまま世に出るものではないので、わかりやすくいろいろと書き込んでしまってほしいです。例えば、新しいキャラクターが出てくるときに〈※『○○』の△△のような明るいクズ〉と具体的に作品名やキャラクター名を書いたほうがイメージが伝わりやすいなら、書いてもらって問題ない。「既存の作品からイメージを引っ張ってくるとオリジナリティが評価されなそう」とか、「他社作品だし印象が悪いのでは」なんて考えずに、わかりやすく伝えてもらえればと。小説のノリで書いている方が多いので、もっと説明してほしいです。

寺山:その点、第一回で大賞に選出した生口紺さんは、イメージが明確でしたね。ウェブで自分のイメージにあったイラストを拾ってきて、勝手に貼り付けていて(笑)。世に出すものだったらもちろんダメなのですが、あくまでアイデアをまとめたものですから。

小山:タイトルもそうだし、企画書の「見出し」にすべての力をかけるくらいのつもりでいいかもしれないですね。

寺山:あまりいいものがなかったのでやめてしまったのですが、最初は「オビのコピーを書いてもらう」ということもやっていて。この作品の何が面白いのか、ということを端的に表してほしかったのですが、短めのあらすじのような文言が並んでしまっていて、改めて「これは我々(編集者)の仕事なんだな」と思いました。「100万部突破!」なんて書いてあるのは気概があって面白かったですけどね(笑)。

小山:「○○先生から帯コメントをもらう」というのもありました(笑)。企画書を書くときは、「内容を説明する」ことより、「面白さ/人が興味をそそるところを伝える」ことを意識してもらいたいですね。例えばお茶でも、「静岡県産の茶葉を○グラム使っている」ことより、「カテキンで○キロ痩せる」ことを強調した方が、興味を持ちやすいですから。ちなみに、僕も寺山もジャーナリズム系の週刊誌の編集部出身で、山ほど煽りの利いた企画書を書いてきており、その経験からすると、慣れていない人はとにかくたくさん書いて人に見せる、というのがいいかもしれません。渾身の一作というより、適当に考えた20本くらいを送っていただいた方が、可能性が広がるような気がします。

寺山:生口さんも、第一回に5作品も応募してくれましたからね。

第1回受賞者である生口紺氏の選評

ーー漫画好きなら誰しも「こんな漫画が読みたい!」というアイデアを持っていると思いますし、ここまで自由でいいとなると、応募してみたくなります。これまでだったら日の目を見なかっただろう作品が、ここから形になっていくかもしれませんね。

寺山:そういう賞にしていきたいですね。漫画の編集部に在籍していると、絵がほとんど描けない人の作品の持ち込みを受けることって、まずないんです。「絵が上手くない/描けない」ことがハードルになって、表に出てこないアイデアがたくさんあると思いますし、だからこそ気軽に応募できるものにしたいと。キャッチコピーも『「絵が描けない」あなたも漫画家になれる!』としていますし、実際にそうなんですよ。漫画家になることを諦めていた人、最初から選択肢にもいれていなかった人が、たくさん応募してくれればと。

小山:そもそも、脚本家とかシナリオライターとか、バラエティの構成作家とか、どうやってなればいいのかわからないですよね。ましてや漫画の文字原作者なんて、もっとわからなかった。これまでコンテストもなかった。でも、現実に需要がありますし、きちんと「やりたい人」の受け皿になりたいと思います。いろいろ言いましたが、基本的にハードルの低い賞なので、本当に気軽にご応募いただけたらうれしいです!

週刊少年マガジン×アフタヌーン合同新人賞

『第4回 漫画脚本大賞』
締め切り:1月31日(金)23:59まで
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