予測を超える超展開の連続! ジャンプからしか生まれない怪作『チェンソーマン』のヤバい勢い

 対して『チェンソーマン』は、週刊連載に対応するためか、線はシンプルでキャラクターも記号化されている。その意味で少年漫画の王道に寄せているように見える。何よりデンジが、あまりにも悲惨な環境で育ったために、人並みの生活を求めているという欲望の小ささが、少年漫画の主人公として好感が持てる。

 緩いトーンの会話劇が続いていたかと思うと見開きで派手なアクションを見せるといった緩急のバランスが絶妙だが、ストーリーは行き当たりばったりに見えて、どこまで考えているのかよくわからない。

 現在4巻まで刊行されているが、「まだ4巻?」と驚くのは展開が濃密だからだろう。もしかしたら計算して、こういう展開を狙ったのかもしれないが、後先考えずに勢いで描いていたら、作者にもコントロールできなくなってしまったようにも見える。

 近年は『約束のネバーランド』(原作:白井カイウ、作画:出水ぽすか)のようなバランスのいい漫画も増えているが、基本的に少年ジャンプは人気がなければ10週で打ち切られるシビアな世界なので、新連載の際には、後先考えずに面白い要素をぶち込み、まずはインパクトを狙う。だから、絵もストーリーも次第にボロボロになっていくのだが、時々、週刊連載のライブ感によって不気味な怪作が生まれる。『チェンソーマン』に感じるのはそういったジャンプからしか生まれないタイプのヤバい勢いで、だからこそ続きが気になって仕方がないのだ。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

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