スピッツ、ちゃんみな、HANA、キタニタツヤ、Hey! Say! JUMP、電気グルーヴ……注目新譜6作をレビュー
New Releases In Focus
毎週発表される新譜の中から注目作品をレビューしていく連載「New Releases In Focus」。今回は、スピッツ「キツネノボタン」、ちゃんみな「History」、HANA「Slidin」、キタニタツヤ「君と生きて君と死にたい!」、Hey! Say! JUMP「TRUE」、電気グルーヴ「モザイク」の6作品をピックアップした。(編集部)
スピッツ「キツネノボタン」
アルバム『kettle』からの先行配信であり、キリン 午後の紅茶「遠くの町の午後」篇、午後の紅茶 FRUITS & ICE TEA「午後のフルーツティー」篇のCMソングとなる新曲。柔らかなアコギときらめくアルペジオ、空白を活かしたおおらかなドラムと、裏拍までを丁寧に押さえるベースライン。これら4つの音が絡まった瞬間、ふわっと体温が上昇してスピッツワールドに呑み込まれる不思議。淡々とした曲調なのに、いや、派手な技巧に頼らないからこそ、“空気”が物を言うバンドマジックのすごさがわかる。なお、「キツネノボタン」は愛らしい造語かと思いきや、実在するキンポウゲ科の植物だ。バラでもユリでもコスモスでもなく、この花に目をつけるところが最高の草野マサムネ(Vo/Gt)らしさ。(石井)
ちゃんみな「History」
ニューアルバム『LEGEND』から先行配信された「History」は、日本で初めて“ハラスメント”が争点となった裁判に挑んだ女性たちを描いた映画『ファーストボイス』主題歌に起用されている。深く愛し合った恋人に対するアンビバレンスな感情を描いたこの曲と映画との共通点はおそらく、傷つくことがわかっていても、現状を変えなくてはいけないという強い決意。常識や“当たり前”に従うのではなく、「このままではダメだ」という衝動に従い、それを具現化するためのアクションを起こす。そのプロセスはちゃんみなの軌跡とも重なっていて、だからこそ「History」の壮絶なまでの歌唱はこんなにも強く心を揺さぶるのだろう。筆者はこの曲を聴いて、「個人的なことは政治的なこと」というかつてのスローガンを久々に思い出した。(森)
HANA「Slidin」
7カ月ぶりの新曲。ずいぶん久しぶりな気がするうえ、チルでメロウな路線にドキドキしてしまうのは、デビューからの快進撃と“戦うBad Girls”のイメージがあまりに鮮烈すぎたからだろう。ちゃんみな、Ricky Ricky、JIGGの手によるR&Bは音数を最低限に絞り、余韻をたっぷり楽しませるもの。それぞれ唱法や声のニュアンスを変えて歌を紡ぐメンバー7人の違いが楽しめる。派手なフックがどこにもないスローナンバーであるため、MVはイメージ映像やオフショットがメインになるかと思っていたが、実際に見ればコレオグラフのかっこよさに震える仕上がり。登場時からそうだったが、HANAが日本のガールズグループの常識をどこまでも覆していく。(石井)
キタニタツヤ「君と生きて君と死にたい!」
2枚同時発売のアルバム『DEKAI』『PURE』から、MVも制作された『PURE』収録曲。ホーンから始まる華やかな曲調と〈おファック吐瀉物〉という歌い出しのギャップにビビるが、これはおそらく、何かと欠落感の拭えないキタニによる渾身のウエディングソングだろう。結婚という制度に馴染めない。それでも君とは一緒にいたい。幸せになる予感より相手を不幸にする未来しか見えない。でも大嫌いな〈おれ〉の遺伝子を継ぐ子どもがいる未来は愛しくないか。暴走する自虐と、それでも誰かと関わっていたい理想の狭間で七転八倒している様子が狂おしすぎる3分半のポップソング。これはさすがに、聴いたことがない、としか言いようがない。(石井)
Hey! Say! JUMP「TRUE」
幾田りらが作詞作曲を手がけた「TRUE」の背景にあるのは、まもなくデビュー20周年を迎えるHey! Say! JUMPとファンが歩んできた道のり。ずっとここにいるよ、つらいこともあるけど一緒に未来へと進んでいきたい、君の笑顔こそが僕たちの力なんだ……というメッセージがどこまでもわかりやすく込められていて、ファンであれば間違いなく夢心地に誘い込まれるはず。軽やかな口笛からしなやかでオーガニックな音像へとつながるサウンド、温かさと解放感をあわせ持ったメロディライン、メンバーそれぞれの個性がしっかりと感じられる歌い分けのバランスも見事。(森)
電気グルーヴ「モザイク」
約2年半ぶりの新曲「モザイク」、率直に“懐かしい”というのが第一印象。もはや懐かしさにも新しさにもさほど意味がないのは大前提なので、この場合の懐かしさは、私自身の「ああ、聴いたことあるな、この感じ」という感想にすぎないのだが、どうしてもYMOを想起してしまったり、抑制と切なさが入り混じるシンセの旋律も相まって、「いろんな人がいなくなり、過ぎ去ったな……」と勝手に感傷に浸ってしまう。リリックの脱力具合も本当に気持ちよくて抜け出せなくなりそうで怖いのだが、とにかくこれが電気グルーヴの新章のはじまりなのだとすればこのうえなく嬉しい。この曲の後に「環境と心理」(METAFIVE)をつなげると快楽倍増でおすすめです。(森)



























