韓国発シンセポップバンド ADOY、3rdアルバム『KOMOREBI』リリース 結成9年の原点に立ち返る全11曲収録

韓国 ソウル発の4人組シンセポップバンド ADOY(アドイ)が、3rdフルアルバム『KOMOREBI』をリリースした。
オ・ジュファン(Vo/Gt)、ZEE(Syn)、チョン・ダヨン(Ba)、パク・グンチャン(Dr)の4人組からなるADOYは2017年に結成。ドリーミーな音像とノスタルジーで若さやロマンスの美しさを描いてきた。本作は、これまでの歩みで得た記憶や葛藤を受け止めながら、自らの音楽的アイデンティティを再発見した作品となっている。割れた陶器を漆と金で修復する日本の伝統技法『金継ぎ』のように、再生と再構築のプロセスを経て制作された。
全11曲からなる本作は、先行リリース曲「Gooood」「KONA」で幕を開ける。メロウなリズム、豊かなメロディ、情緒あふれるサックスのアレンジを特徴とし、従来のシンセポップを基軸にしながら、緻密な音響構築とジャンル横断的なコラボレーションによって音楽的領域を押し広げている。
コラボレーションも本作の特徴のひとつ。「Omega」にはプロデューサー/ミキシングエンジニアのAlex Aldiが参加。韓国人シンガーソングライターのキム・スヨンを迎えた「No Repeat」や、ベーシストのチョン・ダヨンのボーカルをフィーチャーした「ROMI」なども収録されている。
北野武監督の映画と同名タイトルを冠した表題曲「Kids Return」には、“過去を受け入れ、新たな意志を持って前へ進む”というメッセージが込められている。木々の葉の間から差し込む陽光を表す日本語「木漏れ日」をタイトルに据えた本作は、ADOYにとっての新たな章の始まりを告げる作品となる。
『KOMOREBI』 ライナーノーツ
本当は、わかっていた。ADOYの描く風景が、現実には存在しないということを。ADOYの描く青春、ADOYの描くロマン、ADOYの描く郷愁。彼らの音楽が通り過ぎたあと、山のように積み重なって残る感情のすべてが、幻にすぎないことなど、誰もが知っていた。わかっていながら、騙されていた。いや、騙されたかったのだ。自分をここではないどこかへ連れていってくれること。それこそが、音楽に与えられた使命なのだから。聴く人それぞれの体温に合わせて屈折した世界に、ふと現れる蜃気楼のような幻影。たとえそれが幻だと知っていても、胸いっぱいに抱きしめていたかった。九年前、一枚のEPからふと始まったバンド、ADOYの旅は、そんな想いが一つひとつ積み重なってできた道の上にあった。
そして、ほかならぬその道の上で、ADOYは揺らいだ。傍目には順調に航海を続けているように見えたが、その内側はそうではなかった。何が原因だったのか、はっきりと説明することもできないまま、時間が、心が、少しずつ霞んでいった。それはまるで、魔法にかけられた回転木馬のように、ADOYの音楽の中をいつまでも巡り続ける、あの風景に似ていた。時が流れるにつれ、ひびが入り、錆びつき、色褪せていく景色が、タイムラプス映像のように目の前に広がっていく。そこには、見慣れたセピア色のフィルターがかかっていた。どうしても認めたくないものが、指の隙間からするするとこぼれ落ちていくのを、ただ無力に見つめていた。出口の見えない、誤った循環のトンネルへ、足を踏み入れたばかりだった。
どうにかそのトンネルを抜け出したADOYは、あの時期を「金継ぎ」にたとえた。割れたり、ひびの入った陶器を、金粉や銀粉を用いて修復する、日本独自の伝統工芸技法である。アルバムのタイトルになる可能性もあった言葉だ。長くそばに置いてきたもの、あるいは、いつしか忘れかけていたものを、もう一度胸に抱き、丁寧に手を入れる。そうして生まれたADOYのニューアルバム『KOMOREBI』は、紛れもなくADOYでありながら、以前とは少し違うADOYでもあるという運命を、生まれながらに背負っていた。ADOYという名前でどこまで行けるのだろうと、好奇心に満ちた瞳をあちこちへ向けていた彼らが、今、見つめているもの。それは、両足でしっかりと踏みしめている、ここ、この場所。そして、ADOYという名前そのものだ。
アルバムのリリースに先駆けて公開された「Gooood」と「KONA」は、『KOMOREBI』が示す、まさにその姿勢を体現している。同じ色彩のパレットに収まりながらも、それぞれに異なる表情を持つ二曲。じんわりと響くビート、みずみずしいメロディー、そして魔法のように耳にまとわりつくサックスの音色に身を委ねていると、ここは確かに、私たちの知っているあの場所なのだという安堵が、自然と胸に広がっていく。抗いがたい懐かしさと心地よさで鮮やかなスタートを切った彼らは、自分たちが誰よりもよく知り、得意とする方向へ、迷いなくハンドルを切る。いつ、どこで聴いても心地よい、爽快なドライブ感が際立つ「Time's a Thief」や「ASK」。そして、変則的なリズムと、Passion PitやHoly Ghost!などとの仕事で知られるプロデューサー兼ミキシングエンジニア、Alex Aldiとのコラボレーションが光る「Omega」。ADOYとともに過ごした、あの心地よいひと季節を覚えているリスナーなら、誰もが懐かしく、嬉しく迎えることだろう。
新しい味わいを追い求めるのではなく、味わいを深めることで変化を生み出す。それこそが、円熟したバンドだけに許された、とっておきの切り札なのかもしれない。ダヨンの幻想的なボーカルとともに、アルバムの真ん中で確かな重心を担う「ROMI」。ADOYらしいパステルカラーのシンセポップに、シンガーソングライター、キム・スヨンのひんやりと澄んだ歌声を添えた「No Repeat」。そして、無限に広がる宇宙の中で、ただ一つの光を追いかける、ADOYが最も得意とするラブソング「Romantic」まで。『KOMOREBI』が目指すものは、はっきりしている。いつかの自分たちでも、誰かほかの人でもない。今のADOYが考える、そして今のADOYにできる、最高のものを詰め込むこと。アルバムを通して、もはや揺らぐことのない、その「良いもの」たちが、惜しげもなく溢れ出してくる。目に映るものを、どこからでもひとつかみすれば、私たちが愛したあの風景、あの風、あのリズムが、花びらのようにあたり一面へと舞い散る。
タイトル曲「Kids Return」は、北野武監督の名高い映画と同じタイトルを持つ。映画を直接思い浮かべて名付けたというよりも、さまざまな連想を重ねた末にたどり着いたタイトルだという。それでもなお、この作品が『KOMOREBI』の目指す、今のADOYの姿と不思議なほど重なっているのが面白い。映画の終盤、どうにか生き抜いてきた二人の主人公は、自転車に乗って、かつて通っていた学校の校庭をぐるぐると回りながら、こんな言葉を交わす。「俺たち、もう終わっちゃったのかな」「ばかやろう、まだ始まっちゃいないよ」。本当に、ばかみたいなほど何度も繰り返される「We all love you」という歌声の向こうに、ひび割れ、錆びついた場所を、愛おしそうに、丁寧に手入れしているADOYの後ろ姿が浮かぶ。しばらく黙って見つめたあと、その背中をぽんと叩いて、「まだ始まっちゃいないよ」と声をかけたくなる。そんなアルバムなのだ。アルバムタイトル『KOMOREBI(木漏れ日)』は、木々の葉の間から差し込む陽の光を意味する。目の前で揺らめく温かな光と、きらめく汗の粒。その向こうで、ADOYは再びスタートラインに立った。新しい始まりだ。
キム・ユナ / 音楽評論家

■リリース情報
ADOY『KOMOREBI』
配信中
レーベル:Angel House
配信リンク:https://orcd.co/adoy_komorebi
収録曲:
1. Gooood
2. KONA
3. Kids Return
4. Time's a Thief
5. Omega
6. ROMI
7. ASK
8. Zebra
9. No Repeat (feat. Kim Suyoung)
10. Gush
11. Romantic
■関連リンク
YouTube:https://www.youtube.com/@ADOYband
Instagram:https://www.instagram.com/adoyband
Facebook:https://www.facebook.com/adoyband























