Kizuna AI×花譜が語り合う“バーチャルシンガー黎明期” 2人の目に「シーン」はどう見えていたか

Kizuna AI×花譜『NIGHT HIKE』対談

 2026年現在、バーチャルシンガー/バーチャルアーティストという呼称は珍しいものではなくなった。だが、決してシーンの黎明期はそうではなく、技術的な制約や周囲の理解が及ばないことで思ったように活動ができなかったり、違った解釈が生まれたりすることもあった。そんな戦いの歴史を経て、現在の充実が生まれたといっても過言ではない。2016年にVTuberとして活動を開始し、2018年に音楽活動をスタートしたKizuna AIと、2018年にバーチャルシンガーとしてデビューした花譜は、いまやその歴史の数少ない語り部だ。

 今回は両者が出演する10月31日&11月1日の『NIGHT HIKE 2026 in 幕張』開催を前に、そんな2人の対談を行った。2020年にコラボ作品をリリースしている2人だが、Kizuna AIはスリープ期間を経たこともあり、再会したのは同作のタイミング以来だという。そんな再会の喜びからスタートした対談は、出会った頃の互いの印象や当時の活動環境、ライブ表現と技術の進歩、シーンの変化に関する話題まで派生。最後には『NIGHT HIKE』への思いについても語ってもらった。(編集部)

花譜の活躍に“後方彼氏面”をしていたKizuna AI

Kizuna AI:わぁ〜、花譜ちゃんだ〜! 久しぶり〜!

花譜:アイちゃん、久しぶり〜!

Kizuna AI:6年ぶりかな? もうお酒は飲めるようになったの?

花譜:飲めるようになったよ! そうか、前に話したのはまだ高校生のときだったんだ……。

Kizuna AI:そうだよね……。あっ、ごめんなさい。雑談が始まっちゃいそうです(笑)。

――ずっと見てたい気分になりました(笑)、ちょうどお二人から6年前のお話が出ましたが、コラボCD『愛と花』がリリースされたのがまさに2020年ですよね。それがお二人が最後にじっくりとお話をしたタイミングだったんですか?

Kizuna AI:そうなんです。横にスタッフさんもいるときに電話かなにかでお話しして、そのあとAmazon経由でお菓子を送りつけた覚えがあります。

花譜:懐かしい! 『VMZ』のゲストで対談させていただいて、そのときに「好きなお菓子何?」ってアイちゃんが聞いてくれたんだよね、確か。

Kizuna AI:うんうん。

【VMZ#1】初ゲストは花譜!

花譜:「ガルボとポイフルが好きです」って話をしてたら、実家に段ボールいっぱいのガルボとポイフルが送られてきて。その節はとても嬉しかったです。ありがとう。

Kizuna AI:よかったー! こっそり餌付けしてました(笑)。

――お二人は「バーチャルシンガー/バーチャルアーティスト」という価値観が今ほど当たり前ではない時期から歌っていた存在ですが、初期は個々で活動している印象が強く、2010年代はクロスオーバーも少なかったと思います。お二人が出会ったときのことは覚えていますか?

Kizuna AI:それこそ『VMZ』が初めてお話ししたタイミングな気がします。

花譜:そうですね。それからアイちゃんのライブにお邪魔させていただいたり、逆にお呼びさせていただいたり。あと、カバー曲を歌わせていただくアコースティックライブでアイちゃんの曲を歌わせていただいたりもしました。

Kizuna AI:それまでもお互いの存在は知っていたんですけど、直接お話しする機会が本当になかったんだよね。当時は私たちに限らず、事務所を越えた交流ってなかなか実現しなかったので、すごく嬉しいご縁でした。

――『VMZ』での対談が2019年の末でコラボCDが2020年なので、そこで一気に距離が縮まったと。それまでも互いの存在を知っていたとのことですが、そのときの印象、実際に会ってからの印象を教えてください。

Kizuna AI:とにかく「可愛い~!」に尽きます。今でこそ、花譜ちゃんの内面やプライベートに近い部分も表に出ていると思うんですけど、活動の最初の方って今よりもミステリアスな部分が強かったと思うんです。でもこうやってお話しさせてもらうと、超可愛くて。お菓子の話もそうだし、当時高校生だった花譜ちゃんの年相応な可愛らしさにやられて「可愛い〜!」ってずっと言ってた気がします。そこから内面の部分が表に出ていってみんなに愛されているのを見て、“後方彼氏面”をしていました(笑)。

花譜:私はバーチャルの活動をやってみないかというお話を持ちかけていただいてからアイちゃんのことを知ったんですけど、実際にお話しさせてもらえることになったときは「うわぁ、本物だ!」みたいな。画面の中で見ていた方だったから、一緒に喋ってることに感動していましたね。

Kizuna AIと花譜、お互いの活動はどのように見えていた?

――お二人は当時からバーチャルシンガー/バーチャルアーティストとして楽曲もリリースしていますが、お互いの音楽活動についてどのように見ていましたか?

花譜:当時って、バーチャルで歌っている女の子と言ったら初音ミクちゃんのイメージが強かったんです。曲を作る人たちがミクちゃんの世界観やキャラクター性を紡いでいって、いろんなミクちゃんの在り方が音楽と一緒に広がっていくみたいなイメージだった。でもアイちゃんとか私のようなバーチャルな存在の音楽は、その人のパーソナリティとか物語が反映された曲が作られる側面が大きいような気がしていて。アイちゃんは“絆”とか“繋がる”っていうキーワードがあって、時間を飛び越えてこっちに語りかけてきてくれるみたいな。バーチャルっていう触れられない存在ではあるけれど、それよりも強い心の繋がりみたいなものについて歌っている印象がありました。

Kizuna AI:えへへ。喋り方が可愛いよね、花譜ちゃん。

花譜:ありがとう。いつも褒めてくれる(笑)。

Kizuna AI:花譜ちゃんはバーチャルでありながら、それまでとはいい意味で異質だったと思っていて。当時はバーチャルで生まれてバーチャルで活動している人が多いイメージだったんですけど、花譜ちゃんは日本のどこかにいる14歳っていう、リアルな姿を持っている女の子が、バーチャルのアバターを使って活動をすることをはっきり明言していたんですよね。それがいいなと思いました。リアルな人間も、もう一人の自分を使って過ごしたり、活動できるというのを表現していて。活動にもすごくメッセージ性があって、すごく惹き込む力があるなと感じます。しかも、メッセージ性に負けない歌声のパワーもあって。こんなに歌に思いとか気持ちが乗っていて心に響く曲ってこれまであんまり聴いたことがなかったので、それが14歳という、複雑な時期の女の子が歌っているのってすごいなと思いました。リアルな素性を守りつつ活動できることで、悪い消費のされ方もされていなかったですし、いろんな面で素晴らしいなと思っていました。

花譜:ありがとうございます。すごい嬉しいことをいっぱい言われてしまった。

――いまお話しいただいた時期は技術的な部分の制約があったり、バーチャルシンガー/バーチャルアーティストという概念もあまり浸透していないぶん、大変なこともあったかと思います。

Kizuna AI:音楽を始めることについては、ボーカロイドが既にあったり、歌い手さんがいたり、インターネットで音楽活動をする土台はあったので、そこについて大きく迷ったりすることはありませんでした。でも、ライブは大変でしたね。バーチャルライブってお金がかかるんですよ……。

ーー存じ上げております……。

Kizuna AI:当時はバーチャルでのライブの知見、経験がある方も圧倒的に少なかったので、やりたいことをきちんと形にしてくださる方を探していくのが大変でした。そもそも、レーベルに所属してやっていたわけではなかったので、会場を半年とか一年前から押さえないといけないとか、そういう基本的なところもチームで勉強しながらやっていきましたし。今だとバーチャルの知見がある方もいろんなところにいらっしゃいますし、バーチャル専門でやっている場所もあるんですけど、当時はまだ当たり前ではなかったので大変だったように思いますね。

 ただ、良かったこともあって。その時期にコロナ禍もあってオンラインライブが普及したじゃないですか。現地でのライブでもバーチャルだからこそできることはあると思うんですけど、どうしても技術や予算の観点でオンライン上でやった方が表現が増えることもあると思っていて。オンラインライブってバーチャルとすごく相性がいいので、コロナ禍という本来マイナスに作用する時期にオンラインライブを当たり前のものにしていけて、よりライブを身近に楽しめるように普及できたのは、VTuber/バーチャルアーティストの良さだったんじゃないかなと思いますね。

花譜:私は元々歌ってみた文化やボーカロイドの楽曲がすごく好きだったので、ネットに音楽を上げることが自分の中では夢みたいなもので。なので初投稿の段階で、全部叶ったみたいな感覚がありました。なので、特に難しいと思うことはありませんでした。ただ、先ほどお話ししたように“電子の歌姫=初音ミク”のイメージも強かったので、生きている人間だと認識されないこともたまにありました。今や街中でバーチャルシンガー/バーチャルアーティストの曲を耳にしたり姿を見かけたりすることもよくあるし、キャラクターじゃなくていち個人なんだっていう認識が広がっていっている印象があります。

 ライブや技術に関してはスタッフのみなさんにお任せしていて、自分は圧倒されていることの方が多いんですよね。特に配信ライブでは、現地と見え方が違ったりするんですよね。現地で見えなかった後ろ姿が見えたり、周りの演出が立体的に見えるとか、すごくいろんな楽しみ方があるなと思います。クオリティが年々上がっていて、ここに実在してるっていうのが画面越しでも会場でも身に染みて感じられるようになっているのにいつも感動していますし、その場所に立っていても恥ずかしくないような歌を歌いたいなと思っています。

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