「日本のZ世代の57%が生きづらさや不安を感じている」 Spotifyが音楽×トークで寄り添う「BLUE? It’s Okay」誕生の舞台裏

世界に100名超のエディター Spotifyが考える“人間による編集力の価値”

発表会後半には、佐々木氏からSpotifyが考える「ヒューマンエディターの価値」についてのプレゼンテーションが行われた。
Spotifyには、世界で100名を超える音楽エディターが在籍し、各国の文化に根ざしながら活動しているという。その柱にある概念は「テイスト」「文化的専門性」「トレンド予測」。これらを基盤に「キュレーション」「カルチャーの発信」「ストーリーテリング」「ミュージックインテリジェンス」という4つの役割を担っているという。



実績データのないリリース直後の楽曲は、まずエディターの耳を頼りに振り分けられる。入口となるのは、ニューリリースが集まる「New Music Wednesday」「New Music Friday Japan」などのプレイリスト。さらにヒップホップの「+81 Connect」などジャンル別やムード別のプレイリストにも振り分けられる。
再生データが集まると、SNSなどでバイラルヒット中の曲をまとめた「Viral Hits Japan」や新鋭をピックアップする「Fresh Finds Japan」などを経て、日本のヒット曲が並ぶフラッグシップ「Tokyo Super Hits」、ロングヒットにもなれば、さらに1億再生超えのプレイリストへ。楽曲はこうしてSpotify上を“旅”するそうだ。各国のエディターと連携し、日本の楽曲を海外のプレイリストに紹介することも日常的にあるという。



そして最近、新しい役割となってきたのが、エディター自身が顔を出して楽曲の背景を語るストーリーテリング。これまでエディターは表に出ることが少なく、どこか秘密めいた存在だった。しかし、現在は「Tokyo Super Hits」などのプレイリスト上で楽曲解説のテキストを執筆したり、カメラの前に立って音楽の背景を語ることも求められているようだ。
AI時代におけるメディアの転換
ここまでSpotifyが「人間」を前面に出すのは、AIの台頭とも関係があるのか。発表後に筆者が尋ねると、関根氏は「SpotifyはAIを活用している会社」だとし、AIを否定するものではなく共存が前提だと答えた。そのうえでヒューマンキュレーションを大事にする理由を伝えたかったという。
佐々木氏も、そうした側面は「あると思います」と認めつつ、ストーリーテリングの本質は自らエディター論を語ることではなく、これまでプレイリスト中心に行ってきた音楽の紹介を別の形で行うことにあると説明。顔を出すのはそれに伴う自然な流れだという。またエディターが表に出る動きは、Spotifyのグローバルな方針だそうだ。
一方、「BLUE? It's Okay」は日本独自の企画。関根氏によれば、たとえば南米では、パーティ好きな若者に向けた明るい企画を展開している国もある。しかし、日本では冒頭に挙げたデータを踏まえ、このアプローチを選んだ。これには、グローバル側からも面白い切り口として驚かれたという。

では、なぜこれまで日本にはオリジナルコンテンツがなかったのか。これについて佐々木氏は、海外ではライブ企画やSpotifyオリジナルのリリースといったプログラムが存在していたが、日本ではグローバルの企画に乗る形が中心だったと答える。しかし、今回は日本のユーザー特性から出発したアイデアだったため、自分たちで作るしかなかったという。
関根氏も、ポッドキャスト部門は現在クリエイターの育成や収益化の支援に注力しており、自社でコンテンツを制作することが目的だったわけではないと補足。メンタルヘルスやZ世代のリスニングデータを見て何をすべきかを考えた結果、「なるべくしてなった」形だと振り返った。
エディターの役割をとらえ直し、新たな立ち位置へ据えていくSpotifyの取り組みは、AI時代におけるメディアの転換として興味深い。裏方だったエディターが前線に出ていく、この動向がどんな結果を生むかに期待したい。
■配信情報
Spotifyオリジナル映像シリーズ『BLUE? It's Okay』
配信プラットフォーム:Spotify
<参加アーティストおよび公開コンテンツ(配信順)>
・レトロリロン
音楽:「UNITY - Spotify BLUE? It's Okay Ver.」
ポッドキャスト:メンバー同士で語り合う、ティーン時代の苦悩と音楽に救われたエピソード
・Daichi Yamamoto
音楽:「1999 (feat. 梅井美咲) - Spotify BLUE? It's Okay Ver.」
ポッドキャスト:ひとり夜に音楽を聴く時間や、自身の「ブルーな気持ち」との付き合い方について
・にしな
音楽:「そして僕は途方に暮れる - Spotify BLUE? It's Okay Ver.」
ポッドキャスト:楽曲制作の背景と、自分の弱さを受け入れることについてのディープトーク
・ano(10月1日配信開始)
音楽:「ハッピーラッキーチャッピー / ミッドナイト全部大丈夫 - Spotify BLUE? It's Okay Ver.」
ポッドキャスト:「自分らしくいること」や「ネガティブな感情との付き合い方」を飾らない言葉で明かす特別トーク
配信リンク:https://spotify.link/BlueItsOk

























