清水翔太が語る「By your side」 恋愛の普遍性を“今っぽく”描く理由、自由な制作環境で広がる次作の構想

清水翔太が語る最新曲「By your side」

 新しい制作環境を手にしたことをきっかけに、今年3月の1カ月で12〜13曲を書き上げたという清水翔太。その中から7月の「Mermaid」、9月23日配信の「By your side」が相次いで世に送り出され、次作アルバムもすでに輪郭を現し始めている。

 若い世代へ向けた恋愛描写、「My Boo」から10年を経て感じるソングライティングの変化、流行と距離を置いたHIPHOP/R&Bへの志向、自宅の“アトリエ”で曲を作る楽しさ。そして10月、12月のワンマンライブへ。大量の新曲が生まれた2026年の創作モードや制作が進む次作アルバムについて、新曲を起点に話を聞いた。(編集部)

新たな制作環境が呼び込んだ“曲作りのフィーバー”

――新曲「By your side」は、いつ頃作った曲なんですか?

清水翔太(以下、清水):今年3月ぐらいですね。その時期、大量に曲を作っていたんですよ。

――大量って、どれぐらいですか?

清水:1カ月で12〜13曲できたんです。

――2日に1曲ぐらいのペースじゃないですか。

清水:過去最速。もうフィーバーですよ。確変ですね、あれは(笑)。

――どうして、そんなに曲が作れたんですか?

清水:パソコンが壊れて買い換えたんですよ。それを機に音源ソフトやプラグインを買い直したり、新しく導入したりして、使い方を勉強しているうちに今までできなかったことができるようになってきて。

――「この音色、面白いな」という発見があったり?

清水:それもありますね。たとえば、それまで持ってた音源だと、ギターをジャカジャカ弾くような音にしっくりくるものがなかったから、アルペジオで打ち込んでいたんです。でも、「この音、いいじゃん」というものが見つかると、「じゃあ、ああいう曲ができるな」ってなる。“こういう曲を作りたかったんだよな”というものが作れるようになって、バーッと曲ができていったんですよね。でも、フィーバーはその一瞬だけ。そこから5、6カ月経つけど、その間は1、2曲しかできてない(笑)。

――今年7月に配信リリースした前曲「Mermaid」も、そのときに作った1曲?

清水:同じ時期です。

――「Mermaid」はレゲトンのようなビートとチルい浮遊感が夏のきらめきと気怠さを思わせる1曲でした。

清水:タイトルが「Mermaid」で、夏に向けたリリースだったから、水のゆらゆらする感じを表現したくて、トレモロを効かせたギターを入れたんです。トレモロだと、音が揺れながら鳴り続けるじゃないですか。ただ、そのままだと浮遊感が強くなるからサビにキラキラした音を入れて。「Mermaid」という言葉にサウンドを寄せていったんですよね。

清水翔太『Mermaid』MV

――歌詞の主人公は“生き方を見つけられない少女”だと、Instagramのストーリーズで書いていましたよね。

清水:将来自分がどうなりたいのか、何がしたいのか、そのためにどうしたらいいのかわからない。そういう10代の子って多いと思うんです。SNSを見れば楽しそうな日常が転がってるし、人間ってどうしても楽なほうに走るじゃないですか。それで目の前の楽しいことをやってみるけど、結局何も手に入らない。生きてて楽しいことは楽しいんですよ。けど、ずっと満たされない。そういう“不幸でもないし、幸せでもない”ということを書きたかったんです。

――そういう“行き場のない感情”を人魚姫になぞらえた。

清水:そういう感情って少女に限らず、誰もが経験したり、持ち得たりするものだと思うんです。だから、わかりやすい何かに例えて書きたいなと思って。地上の世界に憧れるけど、結局は海に戻るしかないという人魚姫の物語にしたんです。

――思春期特有の衝動や孤独、刹那的な享楽と、そのあとに残る虚無感。いろんなものがない交ぜになる感情を、恋愛に重ねているようにも思いました。

清水:ラブソングっていう感覚はないです。でも、苦しいときに相手に頼ることはあると思うから、恋愛の要素を入れたっていう感じ。夏のリリースだし、ひと夏の逃避行に憧れるような感覚も根っこは同じ感情だと思うから、そういう雰囲気も入れたんです。

――誰かを励ますとか、何かメッセージしようとした曲ではない?

清水:ないですね。問いかけでもない。そういう人はたくさんいると思うから、「自分だけじゃないんだよ」「みんなそうだよ」と思ってもらえれば、それでいいかなって。

「Mermaid」ⒸSony Music Labels Inc.
ⒸSony Music Labels Inc.

若い恋愛のリアルを映す「By your side」

――「By your side」は、どんな曲を目指して作り始めたんですか?

清水:最初は「My Boo」(2016年)と同じ狙いで、ちょっとマイルドヤンキー向けというか、15、16、17歳ぐらいの子が「マジでいい曲」と思うような曲を作ろうと思ったのがきっかけです。

――イントロは清冽なピアノでゆったりと始まるので、第一印象はバラードでした。一方、ラップのフロウはトラップ的で、ビートにはドリルの要素も感じます。最初はバラードを作ろうと思ったんですか?

清水:いや、バラードという感覚はないですね。メロいヒップホップをやりたいなと思って作り始めたんです。トラップやドリルのようなものはきれいなコードと合うから、いい曲を作りやすい。完成したときは、今回作った十数曲の中で一番キャッチーだと思いました。

清水翔太『By your side』MV

――トラック作りで、こだわった部分は?

清水:特にないかな。僕は基本的に設計図を作らないんですよ。料理で言えば、レシピを見ないんです。作りながら、「これを足してみよう」「あれを足してみよう」と目についたものを目分量で足していく。「最終的に美味しければいいんでしょ?」という感覚で作るから。

――料理でいう、隠し味みたいなものを入れたりは?

清水:隠し味じゃないけど、今回はサビにエレキギターのギャーンという歪んだ音を入れたんです。それが今までの自分の曲と少し違うところ。一昔前の、少しパンクの要素があるエモいトラップをイメージしたんですよね。

――今回の曲は流麗なストリングスも印象的でした。

清水:打ち込んだストリングスを、人間が演奏しているような音に変えてくれる「ACE Studio」というソフトがあるんです。その音が結構リアルで面白くて。それを試してみたかったんですよね。完成版では、そのフレーズをほぼそのまま生演奏で弾いてもらいました。

「By your side」ⒸSony Music Labels Inc.
ⒸSony Music Labels Inc.

――歌詞には、大切な人との別れが描かれています。ここで描いた二人に具体的なモデルはいるんですか?

清水:特定の二人をモデルにしたわけではないですね。自分の人生のワンシーンを思い出しつつ、さっき話した若い世代に刺さりそうな表現や言葉を意識して書きました。

――若い世代に刺さりそうな表現というのは、〈お揃いにしてたキーリング〉という歌詞などですか?

清水:そう。あとは、似合わない服もその子の趣味に合わせるとか、相手にパスワードを変えられるとか、既読がつかないとか。リアリティーを出すために、そういう日常にありそうな場面を入れていこうと思ったんです。

――自分のパスワードを相手の誕生日とかにするのは、あり・なし、どちらですか?

清水:別にいいんじゃないですか。「そんなの嫌だよ」とは思わないけど、したことはないですね。

――相手のスマホを盗み見したり、位置情報を共有したりするのは?

清水:見ないし、見られるのも嫌かな。位置情報を共有するのもなしじゃないけど、そんなことをしないといけないような信頼関係を作らない。どうしてもやってほしいと言われたら別にいいけど、その発想はキモいと思う。

――なし寄りのあり、みたいなことなんですね。

清水:そう。位置情報を共有したり、スマホを見たりするのは、信頼関係がないからでしょ。お互いにまめに連絡して、「今ここにいるよ」って伝えたり、写真を送ったりしていれば、スマホを見る必要も位置情報を共有する必要もないわけで。それができないっていうことは信頼関係が破綻しかけているということだから、「もう無理じゃん」となる。

――そうしたリアルな恋愛観に加え、今回の歌詞には男性側の自己嫌悪や後悔、不安が色濃く表れています。それも若さを表現するため?

清水:そうですね。今回は、自分の中にある、いちばん若い頃の恋愛観を歌詞にしたんですよ。この曲調で別れの曲を書くなら、男の女々しさを書かずに何を書くんだっていう。シンプルに「こうきたら、こうでしょ」というものを書きました。

「By your side」ⒸSony Music Labels Inc.
ⒸSony Music Labels Inc.

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