清水翔太が語る「By your side」 恋愛の普遍性を“今っぽく”描く理由、自由な制作環境で広がる次作の構想

清水翔太が語る最新曲「By your side」

「My Boo」から10年、磨かれた恋愛描写の精度

――今年10月で「My Boo」のリリースから10年です。「My Boo」は、愛しすぎて不安になる、だからそばにいてほしいという歌でしたが、ラブソングに描く男性像にどんな変化がありますか?

清水:基本的にはどちらもリアルな自分だけど、「My Boo」の頃の自分はもっと若いかな。当時の自分は実際に若かったし、歌詞の表現にも今ほどバランス感覚がなくて、テクニック的な意味でまだ若い。今はもう少しバランスを取れるようになったと思うんですよ。要は“やりすぎ”ってことなんですけど。

――やりすぎ?

清水:10代の男の子が「いい曲だわ」と思ったり、同年代の女の子が「こんなことを思われたい/言われたい」と思ったりする曲を書きたいという、曲作りの意図は一緒なんですよ。だけど、「My Boo」は狙いに対する精度がまだ甘くて、どちらかというとまだピュアな中学1、2年生向けになっちゃってる。それがカップル動画に使われた理由かもしれないけど、今回の曲で、やっと意図していた15、16、17歳ぐらいに刺さる感じになってきたんじゃないかなって。

――でも、時代の変化は早いから、「My Boo」の頃と今とでは、10代が共感する恋愛観や言葉も変わっているんじゃないですか?

清水:それはそうだけど、どれだけ時代が変わっても、変わらないものを描きやすいポジションにいるのが僕だと思うんですよ。HIPHOPにさらに寄せるなら、もっと今っぽいやり方を選ばないといけないし、逆にエバーグリーンな方向性のアーティストなら、この音楽性を選ばないと思うから。人間の根本にある愛情や変わらない恋愛観を、今っぽさと普遍性の両方を持たせながら表現する。それをちょうどいいバランスで、違和感なくやれるのが今の僕だと思うので、それを全力でやっている感じですね。

清水翔太『My Boo』MV (Full Size)

――今回の曲は、「My Boo」の続編とも受け取られた「Sorry」とも近い曲に感じました。「My Boo」「Sorry」「By your side」の3曲は、どこかつながっている印象を受けたんですよね。

清水:「By your side」と「Sorry」は、むっちゃ近いところにいますね。「Sorry」も若い世代に向ける意図があって、僕の中では“もう少し売れてもよかった曲ベスト5”に入るんで。

――「Sorry」は、自分の惨めさを振り返る内省的な曲で、相手に謝罪や感謝を伝えたいけれど、その術がないという歌でした。「Sorry」と「By your side」の違いは?

清水:一番の違いは、相手に言葉が届くか届かないかですね。「Sorry」は届く相手に対する泣き言なんですよね。どこかに「ワンチャンあるかもしれない」という救いがある。諦めたように見えて、内心ではまだ相手にすがっているんです。「By your side」は、僕の中ではもう届かない相手に対する曲。もう泣き言ではない。だからこそ「By your side」なんですよ。僕はずっとそばにいるよ、っていう。そこが大きな違いですね。

――サビのラストは〈I’m always by your side〉で締められていますが、この言葉の裏には“見守っていてほしい”という思いもあるんでしょうか。

清水:ありますね。「ずっとそばにいる」と「見守っていてほしい」は、僕の中では切り離せないものだから。

清水翔太『Sorry』MV

“アトリエ感”の中で形になる次作アルバム

――冒頭で、今年3月頃に12〜13曲作ったと話していましたが、アルバムなど、次の展開は見えているんですか?

清水:アルバムはもう大体できてますね。そのとき作った十数曲がベースになると思います。

――今、どんなモードで曲を作っているんですか?

清水:そういうのは特にないんですよね。過去にあったのは唯一、『WHITE』(2018年)を作ったときくらい。当時すごくフランク・オーシャンにハマっていたから、ああいうアンビエントな感じをやりたかったんですけど、それ以外は、アルバムを作るときのモードみたいなものはないんです。ただ、今回のアルバムはたぶん、HIPHOPとR&B色の強い作品になるんじゃないかな。「今までもそうだろ?」って言われたらそうなんですけど(笑)。

――具体的には、どんな時代のHIPHOPやR&Bをイメージしているんですか?

清水:今作ってる感じだと、流行りとはあまり関係ないところにあるかな。あまり今っぽくないかも。懐かしい感じの90年代っぽいHIPHOPがあったり、2000年代初期っぽいR&Bがあったり、そんな雰囲気。

――「自宅スタジオで自由に作った曲が、そのままアルバムになりました」というような箱庭感を打ち出したい?

清水:それはありますね。「曲作るの、楽しいなぁ」という気持ちで作っていたときの曲ばかりだから。その感覚は『Insomnia』(2023年)以降ずっとあるんですけど、今回はアトリエ感がめっちゃあるんです。今年引っ越したんですけど、今住んでいるところが街の中心から離れていて、結構へんぴな場所なんですよ。

――静かな環境で、キャンバスに向かって気の向くままに筆を動かしているような?

清水:そう。時間もあるし、何かに追われてるような感覚は一切なく作れていますね。

――次作に向けた曲の中で、「By your side」はどんな位置づけですか?

清水:「By your side」は、人を引き寄せるためのもの(笑)。とにかく、誰が聴いてもいい曲だと思えることは間違いないから。

――4番バッターみたいなこと?

清水:いや、それだと違うな。4番バッターだと何か違いますね。

――でも、アルバムに向けた勝負曲ではあると。

清水:そうです。「By your side」は、いぶし銀の曲ではないですから。僕はスルメソングを作っちゃうタイプで、シングル向きの曲があまりないけど、ほかの曲に比べたらこの曲は華がある。現状、アルバムに向けた一番の勝負曲ですね。

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