Chevon、どん底で見た“夢”を結実させた超満員の横浜アリーナ公演 圧巻の演出と音楽の本質を共存させ、さらなる高みへ
メジャーデビューアルバム『三者山羊』を冠した全国ツアー『Chevon ONE MAN TOUR 2026「三者山羊」』のファイナル、横浜アリーナ公演。アルバム『三者山羊』の楽曲はもちろん、その後にリリースされた新曲、インディーズ時代の代表曲を網羅したセットリスト、楽曲の世界観を際立たせる演出、そしてさらなるスケールアップを果たしたサウンドと、あらゆる感情を描き出し解き放つ谷絹 茉優(Vo)のボーカル。初のアリーナ公演で彼らは、Chevonの本質と新たな進化を共存させたステージを見せつけた。
オープニングSEは「B.O.A.T.」Long ver.。バンドのアイコンである山羊をモチーフにした映像がスクリーンに映し出され、勇壮なコーラスが響き渡る。いきなりシンガロングが発生するなか、谷絹、Ktjm(Gt)、オオノタツヤ(Ba)とサポートの中村“マーボー”真行(Dr)、Ryo'LEFTY'Miyata(Key/Syn/Gt/Cho)が登場し、そのまま「B.O.A.T.」に突入する。壮大なスケール感をたたえたバンドサウンド、強靭なエネルギーを含んだ歌声が響き合い、会場全体の高揚感をガッツリと上げていく。アルバム『三者山羊』の収録曲だが、このツアーで完全に新たなアンセムとして定着したようだ。「B.O.A.T.」とは「Bright Of All Time」(2022年に確認された、天体観測史上もっとも明るい爆発現象)のこと。メジャーフィールドへ進む覚悟と決意が強く刻まれた歌が、超満員のオーディエンス一人ひとりに突き刺さっているのが手に取るようにわかる。ステージから立ち上がる炎、エンディングにおける心臓の鼓動のような音など、楽曲のメッセージを際立たせる演出も素晴らしい。
カラフルなレーザーが飛び交うなかで放たれたアッパーチューン「DUA・RHYTHM」でも大合唱が巻き起こり、〈さぁ、始めよう世界を/何度だってこの歌を〉というラインが響き渡った「Lamipus」では、Ktjmとオオノが鋭利なフレーズを交わし合う。そして強烈なグルーヴが渦巻くダンスチューン「銃電中」(メンバー全員のソロ演奏を挿入したスペシャルバージョン)でライブは早くも最初のピークに達した。生々しいダイナミズムをたたえたバンドサウンドも最高。プロデューサーとしても活躍しているRyo'LEFTY'Miyataが加わったことも功を奏し、ライブバンドとしてのクオリティが飛躍的に向上していた。
「ようこそ! 日々のしんどいこととか、異常な倍率とか、ボーカルの様子のおかしさとか。それをよく乗り超えて、このファイナルステージまで辿りつきました。私たちがいなくなった後も記憶に残る、いつでもあなたの頭のなかに、耳の奥にこびりつく、そんなライブをやりたいと思います」
谷絹がこのライブにかける想いを言葉にした後は、インディーズ時代の楽曲を中心にしたシークエンスへ。まずはワウギターを軸にした心地よいファンクネスが広がった「ノックブーツ」。青々とした葉を茂らせた大きな木の映像をバックに演奏された「菫」を挟み、「サクラループ」へ。青春という季節を背景に〈君〉に向けられた未練を美しく描き出し、それを祝福するように桜色の紙吹雪が客席に向けて放たれる。さらにヘビーな音響とダークゴシック的なムービーが相乗効果を生み出した「大行侵」、谷絹が左右の花道に進み、心地よい一体感へとつなげた「Banquet」、極上のダンスビートによって会場がダンスフロアと化し、谷絹が「誰かが決めたルール、誰かの敷いたレールの上に一生生きるのなんてイヤだろ?!」と叫んだ「光ってろ正義」。アリーナでしか実現できないライティング、映像、演出が施されていたが、その中心にあるのはもちろん楽曲そのもの。Chevonはその本質をしっかりと握りしめたまま、驚くべきスピードでバンドとしてのスケールを拡大している。その事実がまっすぐに伝わってきた。
「すごい景色です。この人数が我々のために足を運んでくれたなんて、つくづく幸せ者だと思います」とオオノが改めて感謝の気持ちを伝え、大きな拍手が巻き起こる。さらに谷絹が「『三者山羊』と書いて、“Chevon”とルビを振ってもいいだろうと思うくらい、これからも変わらずやっていきたいよねという気持ちで作ったアルバムです」とコメント。3人だけで作り上げた「るてん」からライブは再び『三者山羊』の楽曲へと戻っていく。和の情緒が漂う「さよならになりました」を経て、谷絹の「音楽をして生きること、歌詞を書くこと、それは、ものすごく長い長い遺書を書くことだと思っています」という告白からはじまった「デイジー」。演奏中の演出は抑えめ。シンプルに楽曲を届けることで、アルバム『三者山羊』の世界がさらに濃く、強く浸透していく。
新曲「クライネ」に続けて披露された「春の亡霊」も印象的だった。軽快なサウンド、繊細で愛らしいメロディとともに紡がれるのは〈あなた〉の前からいなくなろうとする〈私〉の感情。ストーリーと映像を喚起させる歌、シンプルに洗練されたアレンジを含め、このバンドの豊かな音楽性をしっかりと受け取ることができた。そう、さりげなくて奥深い表現力もまた、Chevonの魅力なのだと思う。
ここで谷絹は、「用意してきたMCじゃないんだけど、思い出したことがあって」と断り、10代の頃の思い出を語り始めた。音楽活動はまったく上手くいかず、信頼していた人に裏切られ、どん底の時期があったこと。ちょうどそのとき、すごい人数の前で歌っている夢を見たこと。その夢を、歌っている最中に突然思い出したことーー。
「あの頃のどうしようもない私が、後ろから見てると思うんだよね。盛り上がってくれないと、あそこで見てる私の心が折れて、Chevonというバンドがなくなります。ここからのセトリ、容赦なくぶち上げていきますので、思い切り盛り上がってもらえますか? 私に、Chevonというバンドを始めさせてくれますか?」
過去と現在をつなげるようなMCでオーディエンスの感情をグッと引き寄せ、「冥冥」からライブはクライマックスへと向かう。「六ノ輪」「Capretto」と最新曲を連発し、極上のダンストラック「FLASH BACK!!!!!!!!」へ。この場にいる全員が全力で踊りまくり、ブチ上がりまくる。
「俺はこっちの世界を夢だと思ってて。現実じゃなくて夢の住人(笑)」(Ktjm)、「ゲームばっかりやってた俺をここまで引き上げてくれて。ありがとうございます」(オオノ)というやり取りの後は、3人が初めて作り上げた楽曲「No.4」。谷絹の「みんなと一緒に歌いたくて、この曲を持ってきました」という呼びかけに応え、この日いちばんデカい大合唱が起きた「セメテモノダンス」、〈見えないイトで繋がっていると/何も根拠はないけど思うのです〉というフレーズが突き刺さる新曲「B612」、そして、最後の「ダンス・デカダンス」へ。Chevonの大躍進を支えてきたアンセムによって、この記念すべきライブはエンディングを迎えた。
12月には日本武道館2days公演を開催。さらに2027年5月からは全国11カ所12公演のホールツアー、2027年9月23日にKアリーナ横浜公演を行うことも発表された。この日のライブのなかで谷絹が放った「あえて生意気なこと言いますけど、ここも通過点だと思ってます」というその言葉通り、ChevonはChevonのままで活動のスケールを上げていく。そこで彼らは、まだ誰も経験したことがない音楽世界を見せてくれるはずだ。