アカシック再注目から考える“今聴きたい音楽”との出会い方 時代を超えて愛される「8ミリフィルム」の魅力

Viral Hits Focus

 話題のバイラルヒット曲を毎週収録するSpotifyによる日本向けエディトリアルプレイリスト「Viral Hits Japan」(※1)。同プレイリストより、本記事ではアカシックの「8ミリフィルム」をピックアップする。

 現在、アカシックの楽曲がSNSを起点に注目を集めている。8月28日付のオリコン「週間TikTok音楽チャート」では「ピンク」が1位を獲得し、さらに「you&i」「8ミリフィルム」もトップ30にランクイン(オリコン調べ/※2)。1曲だけでなく、ディスコグラフィへと関心が広がっている。

 アカシックは、理姫(Vo)を中心に2011年に結成されたバンドで、2015年にメジャーデビュー。2019年に一度解散しているが、2022年から活動を再開させている。ポップなメロディと、恋愛の甘さから感情の危うさまでを描く歌詞、理姫のキャラクター性の強い歌声によって独自の世界観を築いてきた。「8ミリフィルム」はアルバム『凛々フルーツ』(2016年)収録曲で、発表から10年が経過している。

 ここ数年、旧曲の再ヒットが定期的に生まれていることは、過去のカタログを“ディグる”こと自体が、日常的な音楽の楽しみ方になってきたことを示しているだろう。SNSで偶然出会った曲から、ストリーミングサービスで同じアーティストの別の曲へとたどっていく。そこでは、“リリース年”というものは曲を聴くかどうかを左右する大きな判断基準にはならない。10年前、20年前の曲も“懐メロ”ではなく、新たに出会う音楽になり得るのだ。その現在形が、今回のアカシックのバイラルヒットだ。アカシックでは「ピンク」をはじめとしたSNS上での広がりから、複数の楽曲へと関心が波及している。

 では、なぜ「8ミリフィルム」が今のリスナーにも響くのか。強いのは、やはり理姫の歌声だ。少し鼻にかかった響きや、話し言葉の延長のような言葉の置き方、力を抜いた語尾にはかわいらしさだけでなく、気怠さや色気も混ざり、ショート動画で一部分を聴いただけでも耳に残る。さらに、軽快なバンドサウンドとメロディは、今聴いても古びた印象がない。「8ミリフィルム」という言葉が想起させるのは、ノスタルジーな雰囲気だろう。だが、歌詞に描かれるのは、恋愛の負の感情までも当たり前に抱え込んだ世界観だ。それが、タイトルとあわさることで、現在のSNSで好まれる“レトロ”で“エモい”感覚とも通じるものがあるのだと思う。

 アカシックのヒットは、単なるリバイバルヒットではない。かわいさと毒、生々しい恋愛感情、耳に残る歌声。彼らが10年以上前から持っていた個性が、現在のリスナーによって新たに見出されたのだ。「8ミリフィルム」のヒットは、過去曲が“懐かしい音楽”としてではなく“今聴きたい音楽”として掘り起こされる時代そのものを象徴している。

アカシック「8ミリフィルム」

※1:https://open.spotify.com/playlist/37i9dQZF1DWZZbpkxU5t9
※2:https://www.oricon.co.jp/rank/tt/w/2026-08-28/

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