YONA YONA WEEKENDERS、10年目の原点回帰 リアルな日常が滲む楽曲群、“人生”を紡ぐ『想い出の予感』
活動10周年イヤーを迎えたYONA YONA WEEKENDERSが、前作から約1年ぶりとなるEP『想い出の予感』をリリースした。今作には、初期から一貫して"夜"を歌い続けてきた彼らにとってセルフタイトルのような楽曲「夜半の月」、"ツマミになるグッドミュージック"を標榜する彼らの最新酒ナンバー「ワン缶」に加え、磯野くん(Vo/Gt)をはじめとした各メンバーの実体験や心情とリンクする楽曲の数々が収録されている。
今回のインタビューの中で語られているように、YONA YONA WEEKENDERSの楽曲はメンバー3人の日々の生活や人生と不可分なものであり、それゆえに、聴き手は彼らの作品やライブを通して、等身大なフィーリングや親密なバイブスを感じ取ることができる。市井の人々が胸に抱く生の実感やブルースを余すことなく歌い上げてくれることこそが、YONA YONA WEEKENDERSの変わらぬ魅力。そうした揺るぎない確信をもたらしてくれる今作の制作過程について、磯野くん、スズキシンゴ(Ba)、小原"beatsoldier"壮史(Dr)の3人に聞いた。(松本侃士)
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3人体制での試行錯誤、苦楽を共にする中で生まれたバランス
——前回のEP『予酔いの宵』から今作に至るまでの約1年間について、皆さんはどのようなタームだったと位置付けていますか?
磯野くん:『予酔いの宵』が3人体制になって最初の作品だったんですけど、そのツアーが終わるぐらいまでは、新体制に慣れるフェーズというか、3人のバランスを探しながらやっていた感覚がありました。その1年を経て、ようやく3人での活動にも慣れて地に足がついてきて、「じゃあ、こっからこの体制でどういうところを目指してやっていこうかな」って考えながら動いてた1年だったという印象があります。
小原“Beatsoldier”壮史(以下、小原):3人体制になって、ギターの(一戸)祐介がほぼレギュラーサポートで入ってくるようになって、そこから「じゃあ新しいYONA YONAサウンドを固めていったほうがいいんじゃないか」っていう話をしながら、いろいろ考えたり試したりした1年だったかなと思います。
磯野くん:一戸くんも、最初は結構手探りな感じだったと思うんですけど、今では、もう本当に、苦楽を共にする家族みたいな関係性でやれている感じはありますね。昨年のツアーもね、全部一緒に回ってくれましたし。楽曲制作に関しても、ギターに関しては彼に1からお願いするような曲もあったりして。
スズキシンゴ(以下、スズキ):やっぱり、ライブでのサウンドも変わったと思いますね。観てくださっている方たちも、サウンドの面の変化に気づいてくれてるんじゃないかなと思いますね。
磯野くん:サウンド面もそうなんですけど、彼自身「この3人の人間関係的なところも支えたい」みたいな気持ちがすごく強くて。この間、EPの制作が終わったタイミングで一戸くんの提案もあり、キーボードの高橋(遼)くんを含めた5人で飲みに行くっていう謎の会が催されまして。ツアーも始まるし、こっからみんなでまた一枚岩となって頑張っていこうぜ、みたいな。まあ、たわいもない話をして終わったんですけれども。“初心を思い出す”じゃないですけど、そういう会になりましたね。
スズキ:ひとりずつ夢を聞かれました。
全員:(笑)。
——一戸さん、そんなに大回ししたんですね。
スズキ:1時間ぐらい経ったところで、「そろそろ、みんなの夢、聞いていいっすか」って。ひとりずつ答えましたね。
——どのように答えたんですか?
スズキ:僕は、「サザンオールスターズみたいになりたい」って。
小原:違うよ、「今を生きるので精一杯」「考えられない」って言ってたよ。
スズキ:そうだっけ? 記憶が……。
小原:そうだよ、「夢とかわかんねえっす」みたいな感じで(笑)。
磯野くん:壮史は「仙人みたいになる」みたいなこと言って。
小原:それはまた別件じゃない? 「みんなの幸せを看取って死にたい」みたいな。最後に死にたいって話をしてて。
磯野くん:僕も同じようなベクトルの話でしたね。僕も、周りの幸せが自分の幸せだから、それを続けていきたい、と。その時に、それこそ高橋くんとか一戸くんにも、「俺たちは長く続けていくから、それを一緒にみんなでやっていけたら嬉しい」みたいな話をしましたね。
小原:会計、すごいことなってたもんね。
磯野くん:カラオケまで行っちゃって。
ライブを重ねて繋いだ、変わらない原点と情熱
——ここから少しずつ本題に入っていきたいのですが、『想い出の予感』というタイトルは、5曲が揃ってからつけたのでしょうか。もしくは、最初からタイトルのイメージがあって、そこに向けて曲が揃っていったんですか?
磯野くん:それで言うと、楽曲は全部出揃ってからですね。みんなでああでもないこうでもないと議論した先に辿り着いて。うちの事務所の社長が思い付いたんですよ、もともと。1曲目の「夜半の月」で歌ってる世界観のように、今の体制でもう一度、「YONA YONA WEEKENDERSってなんだっけ?」に向き合う中で、結成10周年というこのタイミングで“夜”をテーマにもう一回やろうというところから最初のデモ作りがスタートしていった感じでした。そこからいろんな曲が出来上がっていく中で、“夜”ももちろんだけど、やっぱりYONA YONA WEEKENDERSって生活と地続きのバンドというか、“人生”があって曲が生まれるバンドなので。そういうところを全部まるっと表現できるタイトルがないかと、ずっとみんなで議論してたんです。
——素晴らしいタイトルですよね。ずっとYONA YONA WEEKENDERSと伴走してる社長さんだからこそのタイトルというか。
磯野くん:本当にそう思います。
——「夜半の月」は“夜”をタイトルに冠した曲であり、“ライブハウスへの招待状”というテーマが歌われている曲でもありますね。
磯野くん:そうですね。10年を振り返った時に、変わんないことって言ったら、やっぱりライブをやり続けてきたっていうところで。僕らはデビューしてすぐコロナ禍になって。その中で僕は子供が生まれたり、みんなも転職があったり、メンバーが変わったり、いろいろあったんですけど、その中でもライブを止めなかったというか……ライブをやり続けてきたところは、10年やる中で唯一と言っていいほど誇れる部分かなと。そういうところを歌いたいなっていう思いで、今の我々のありのままの気持ちを表現した曲です。
——「トキオ・ダンジョン」では、東京での暮らしや生活、人生、また、その中における迷いや葛藤のようなものが歌われています。ただ、根底にはすごくエネルギッシュな部分もあって。やはり生活者の歌というか、市井の人々のブルースを深く感じる曲です。
磯野くん:10年を振り返るフェーズで、「夜半の月」はライブについて、「トキオ・ダンジョン」はもっと始まりの部分というか。我々みんな上京組なんですけど、「音楽で成功したい」って東京に出てきた時の気持ちを改めて思い返していった感じですね。
——「パパ」は、家族の曲かと思いきや「社会で頑張ってくるね」という歌で。これも現代のブルースというか、労働の歌というか、新機軸な“パパ”の歌ですよね。
磯野くん:これは、もしかしたらボツになるかもな、ぐらいに思って書いてたんですよ。たまたまタイミング的に、うちの息子が来年小学校に上がるんですけど、ちょうどラン活(*小学校に入学する子供のために、保護者がランドセルを選んで購入する一連の活動)をしてたんですよね。「もう来年小学生か」と思いつつ、我々バンドも10年目ということで。順風満帆とは言えない中で、それでも子供を食わせていかなきゃいけない。僕はもう、後戻りできねぇ、みたいな、そういう気持ちをそのまま書き殴った曲です。
小原:オルガンファンクなかっこいい曲だなと思って。最初、ドラムは打ち込みのビートが乗ってたんですけど、それもかっこよかった。「パパ」っていうインパクトに合うオケがその時点でできていたので、「パパ」は絶対出すべきって言ったの覚えてますね。
磯野くん:昔からのバンドマンの知り合いや友人から、「めっちゃストレートな曲書いたね」みたいな連絡がたくさんきまして。
——もしかしたら、これまでの曲の中で一番パーソナルな部分が出てるというか、作品として結実しているように感じました。
磯野くん:そうですね。僕はどちらかと言うと、聴き手に意味を委ねるふわっとした歌詞を書くのが好きなんですが、この曲は本当に小細工してないというか、それがすごくわかりやすい。だから、パパじゃない人からもリアクションがあった。「パパ」とは言いつつ、大切な人や大事なものを守るための決意の歌でもあるので。大衆向けではないのかもしれないですが、深く刺さる人には刺さるんじゃないかなと思って作りました。