THE YELLOW MONKEY:“過去と現在”が邂逅したバンドの進化、結束の証 圧倒的なライブ映像集『Sparkleの惑星X』を体感

約1年にわたったツアー『Sparkleの惑星X』の壮大なコンセプト

 今回の映像集も、ボリュームと封じ込められているエネルギーの総量が、すさまじい。

 THE YELLOW MONKEYによるライブ映像作品『THE YELLOW MONKEY TOUR 2024/25 Sparkleの惑星X』(8月26日発売)。2024年10月から2025年9月にかけて開催されたツアー『THE YELLOW MONKEY TOUR 2024/25 Sparkleの惑星X』、その全ブロックのライブ映像が収録された本作を観ていて、自分の脳裏に蘇ってくる言葉があった。

 ひとつ目は、このMCである。

「この人はずっとずっと戦ってます。ツアー中もずっと戦ってます。今日も戦ってきました。このままツアーは続くので、ずっと戦っていくのでしょう」

 本ツアーのBLOCK.1の最終日、日本武道館公演でのヒーセ(廣瀬洋一/Ba)の言葉である。そう、メンバー紹介で、彼が吉井和哉(Vo/Gt)に触れた時だ。

「強い男です! 心身ともに強い男です。ボーカル、吉井和哉! LOVIN! 元気ハツラツ!」

 吉井はその時、ちょっと照れくさそうに頭を下げた。メンバー同士の熱い思いが垣間見えた、感動的なシーンだった。

 ふたつ目は、このMCである。

「THE YELLOW MONKEYの本編は始まったばかりです!」

 こちらの声の主は、吉井。FINAL BLOCKのKアリーナ横浜で「ホテルニュートリノ」を演奏する前に、宣言のように叫ばれた。この言葉は、同曲の〈人生の7割は予告編で/残りの命 数えた時に本編が始まる〉という歌詞から来ている。このMCの瞬間は、今回のディスクに収録されている。

 こうした言葉たちの背景には、数年前に吉井が喉の病気にかかり、近年は彼も、それにバンドも、そこからの苦境に立ち向かい続けている事実がある。病自体は完治したと発表されているものの、ロックバンドのボーカリストとして充分に歌える状態を保っていくのは難しいことも多いはずだ。

 これがライブの場で壮絶な形で現れたのが、2024年4月の東京ドーム公演だった。また、その時期を含む吉井の横顔はドキュメンタリー映画『みらいのうた』(2025年12月公開)で確かめることができ、そこではTHE YELLOW MONKEYのメンバーたちもいくつかの場面でフィーチャーされていた。

 今回の映像集に収められた本ツアー『Sparkleの惑星X』は、時系列的には、その続きに当たる。

 最新アルバム『Sparkle X』(2024年)を携えて、2024年10月から始まった全国ツアー。このツアーはあらかじめ数カ月ごとにブロック分けがされており、そのメニューの内容は、当のスケジュールへの突入後に明らかになっていった。2024年内に完了したBLOCK.1はメジャー3rdアルバム『jaguar hard pain 1944-1994』(1994年)の楽曲をメインに据えた構成。続く2025年初頭からのBLOCK.2は『smile』、春先からのBLOCK.3は『FOUR SEASONS』(いずれも1995年)……と、旅が進むごとに、往年のアルバムたちに焦点が当てられていった。この着想は、各作品がリリースからちょうど30周年を迎えることから生まれたものだった。

 そのため各ブロックのセットリストは当該アルバムの曲たちと最新作からの曲とを混ぜ合わせる形になった。若い時分に新たな可能性に果敢にチャレンジした楽曲を、ベテランの域に入った現在の4人が鳴らし、そこに新曲を加える構成である。

 過去の曲を、今のバンドの感覚と感性とスキルで演奏すること。これは2016年の再集結から行われてきたが、このようにコンセプチュアルに展開されると、その味わいはいっそう深まる感があった。

「MERRY X’MAS」「サイケデリック・ブルー」……過去曲に加わった“新鮮さ”

 たとえばBLOCK.1であらためて訪ねられた『jaguar hard pain 1944-1994』の世界は、今もって濃厚だった。最初に紹介したヒーセの言葉があった武道館公演アンコールのラストでは、同アルバムの最終曲「MERRY X’MAS」が数十年ぶりに演奏されている。徳澤青弦ストリングスが奏でる弦の音色とともに展開されるクライマックスは、あまりに切なく、あまりに美しかった。

 BLOCK.2では『smile』収録の、たとえば「サイケデリック・ブルー」がいい雰囲気を出していた。この歌には初期のダークな妖艶さが残っているが、バンドとしてはポップに振れようと意識した時期であり、そのアンビバレンスが最新アルバム収録の「ドライフルーツ」と連なる流れには新鮮さを大いに感じた。

 BLOCK.3では、音のスケールがいっそう拡大した『FOUR SEASONS』がクローズアップされただけに、当時の作風の進展を再確認した。吉井が幼い頃に亡くした父親への思いを込めた「Father」は彼自身が内面を赤裸々に唄う姿勢が表れた曲で、これが優しさと強さを持つ現在のこのバンドによって演奏された瞬間には、こちらの心が洗われるような感覚があった。

 この後に行われたFINAL BLOCKは、オリジナルアルバムという単位でなく、1996年のライブツアー『野性の証明』を下敷きにする構成だった。名実ともに人気バンドとなった段階のTHE YELLOW MONKEYが全国のホール会場を巡った『野性の証明』は、吉井たちにとって思い出深いツアーだったとのこと。「Tactics」や「天国旅行」は、当時の彼らがライブバンドとしてタフになっていく過程で生まれた曲たちである。

 また、このFINAL BLOCKの最終コーナーでは、のちにシングルリリースされた「CAT CITY」が初お披露目されている。同曲は、TVアニメ『ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット』(テレ東ほか)のオープニングテーマとして書かれた曲で、『Sparkle X』のレコーディング段階から制作が進められていた。ここで重要なのが、アルバムに収録された「ラプソディ」の存在だ。ポップなのはともかく、まるで言葉で遊んでいるようなこの歌は軽やかに振り切れていて、しかも(意外なことに)ツアーでは日を追うごとに重要曲へと進化していった。そしてネコというテーマに寄せ切った「CAT CITY」は、その徹底ぶりにおいて「ラプソディ」からのつながりが感じられる。「ここまでやってしまってもいい!」という攻めた姿勢での思い切りがある。

THE YELLOW MONKEY - CAT CITY(Official Music Video)

 もっとも初演時の「CAT CITY」は、あまりに何もかもがネコだらけな曲であるために、観客の側に「どう受け止めたらいいの?」というムードがあったのも確かだ。しかしこの後、メンバー自らが望んで開催された追加公演的ミニツアーの『Sparkleの惑星X -ネ申-』の頃には、「CAT CITY」もオーディエンスから大きなリアクションが得られる曲になっていた。なお、今回の映像作品のComplete Boxのほうには、貴重なライブハウス公演となったボトムライン名古屋での模様を収録したDisc6が封入されている。この名古屋とその前の大阪はライブハウス公演で、しかも60分間という演奏時間を決めてのライブと設定されていたため、カウントダウンが進む中という異例のパフォーマンスだった。

 こうして昨年9月に1年近くのツアーが終わるまで、4人は自分たちの過去と現在を刺激的に邂逅させながら、演奏を続けたのである。なお、ずっと4人と書いているが、長年サポートキーボーディストを務め続ける鶴谷崇の助力が大きいことも付け加えておこう。

【LIVE】THE YELLOW MONKEY - 罠 (TOUR 2024/25 〜Sparkleの惑星X〜 Special Edit)

 一方で、このツアー『Sparkleの惑星X』が始まった当初の自分は、どうしても吉井の喉のことを気にかけながらライブを観ていたものだ。おそらくそれは多くのファンも同じだったはずである。しかし、日々リハビリを続けながら臨んでいるという彼は、その時々の調子の差異はありながらも、予定された日程をひとつも飛ばすことなく乗り切った。そんな特殊な状況も含め、このツアーによって彼らは、新しい段階へと駒を進めたのではないかと思う。冒頭のヒーセの言葉を今あらためて反芻して、思う。今のTHE YELLOW MONKEYは、過去に、若い頃にはなかったほどの強い結束力があるはずだ、と。

 この初夏にはファンクラブ会員限定のツアー(『FAN CLUB 10th Anniversary THE YELLOW MONKEY TOUR 2026 THE COUNTDOWN 〜Are you a BELIEVER.?〜』)も行われ、吉井はそこでも元気な声を聴かせてくれた。次のアクションは9月から10月にかけてのライブハウスが中心のツアー『THE YELLOW MONKEY TOUR 2026 THE COUNTDOWN〜60分1本勝負〜』で、こちらは文中で紹介した去年の時間限定ライブと同じ形態で行われることになっている。また、9月16日からは大阪・名古屋・東京の3会場で、映像作品の購入者様限定で応募できる特別企画『爆音視聴会』も開催予定。本視聴会のためにメンバーがセレクトした特別編集映像が上映されるということで、こちらも忘れずにチェックしておきたい。

 これ以外は、メンバー個々の活動も入っていたりで、バンドとしての新曲の情報はまだ聞こえてこない。しかし「CAT CITY」がそうであったように、おそらく彼らは水面下では曲作りを進め、スタジオに入っているのではないかと推察する。

 THE YELLOW MONKEYの“本編”は、これからも続いていく。どんなドラマを見せてくれるのか? それがポジティブな、そしてパワフルな物語になることを祈りながら、彼らの今後に期待している。

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