西川貴教=T.M.R「HOT LIMIT」再ブレイクの真価 口パク疑惑も自虐で一蹴、誰しも注目してしまう最強の“イジられ力”

 8月7日放送の『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)に出演する、T.M.Revolution。YouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』7月10日配信回での「HOT LIMIT」の歌唱は同チャンネル史上最速で1000万再生を超え、8月7日時点で2400万再生を突破。オリコン週間ストリーミング急上昇ランキングでも同曲が2週連続1位(7月16日・23日発表)に輝くなど、人気が再燃。『ミュージックステーション』でもそのパフォーマンスが注目を集めることは間違いないだろう。

T.M.Revolution - HOT LIMIT / THE FIRST TAKE

 「HOT LIMIT」がリリースされたのは1998年6月。T.M.Revolutionにとって8枚目のシングルとなった同曲はノリの良いサウンドと歌詞が幅広い層に受け入れられ、71.1万枚を売り上げるなどして夏の定番曲に。T.M.Revolutionの西川貴教が「自分のリミッターをはずして、限界に挑戦していくそのエネルギーの爆発した感じを、この曲には注いでいる」(『T.M.Revolution T・M・R大事典』(1998年/ソニー・マガジンズ)より)と語るように、テンションを上げるのに持ってこいの1曲としても長く親しまれるようになった。

 また当時、衝撃を与えたのが黒いガムテープを体に巻き付けたような衣装。奇抜ながら、前述したように黒いガムテープを使えば誰でも真似ができそうなデザインだったことから、現在でいうネットミームのような広がりを見せ、さらにイラストキャラクターに「HOT LIMIT」の衣装を着せるなどの二次創作も増加。衣装面でも汎用性が高く、パロディ化された点も楽曲が長く愛される理由になったと考えられる。

T.M.Revolution - HOT LIMIT|Official Music Video

 ちなみに西川はなぜ、そのようなデザインの衣装を着てパフォーマンスすることを受け入れたのか。背景には、バンド時代の挫折経験があった。西川は書籍『おしゃべりな筋肉 心のワークアウト7メソッド』(2017年/新潮社)で、どれだけ良いものを作っても人の目に触れなければそれは「ゴミですらない、空気と同じです」と話している。「常に「明日がない」状態」と言い表し、プライドや恥を捨てて人の目に留まることを選択した。「どういう場でもどんな人にでも食らいついていこうと心に決めていました」という決意が、「HOT LIMIT」の衣装を着る理由の一つになったそうで、「今では、頼まれもしないのに「HOT LIMIT」の衣装をまとって皆さんの前に登場できるまでになった僕ですが(笑)、実は当時そんな思いがあったんです」と明かしている。

 また、そうしたポジティブな意味での「イジってもOK」という空気感は、西川の芸人顔負けの“おもしろキャラクター”が根底にあるからとも言える。西川のキャラが広く浸透したのは『HEY!HEY!HEY!MUSIC CHAMP』(フジテレビ系)がきっかけ。

 同番組への初登場は1997年1月、新人紹介コーナーに登場してMCの松本人志(ダウンタウン)から「いきましょう、スクランブルで!」と謎のエールを贈られると、間髪入れず「トリプル!」と返し、さらに松本からの「巻き返し、巻き返し」「グリン、グリン」に対し、「巻き込み、巻き込み」「ローリン、ローリン」とすべてに乗っかって見せた。その後の放送回でも、MC・浜田雅功(ダウンタウン)とビンタの応酬を繰り広げるなど、ミュージシャンとは思えない立ち回りで視聴者の心を掴んだ。西川が出演した2020年9月18日放送『アナザースカイII』(日本テレビ系)では、MC・今田耕司が「なんやこの喋れるアーティストは」と驚きを口にしたほどだった。

 加えて関西弁丸出しの喋りも西川の特徴として定着。書籍『HEY!HEY!HEY!MUSIC CHAMPよ永遠(とわ)に』(1998年/フジテレビ出版)の西川の紹介ページでは、「みんなを唖然とさせたのはあのふてぶてしくも絶妙な、独特の関西弁のしゃべりだろう。歌番組のトークでは向かうところ敵なし! 当番組でも強烈なしゃべくりは遺憾なく発揮され、あきれ果てたダウンタウンをよそに日本中が彼にシビレたのだった」と絶賛されていた。

 どのような状況でも“笑い”で返すことができるのが西川の強み。今回の『THE FIRST TAKE』で口パク疑惑が浮上したときも、西川はXで「いや、怪しいな…55才にもなって、あんな格好してる奴が、まともに歌えるわけない!皆んなで検証して、ネットに晒してやりましょう!」と自らネタに。「#怪しいぞ西川貴教」というハッシュタグまで付けて、笑いを誘った。一方「丁度9月にフェスがあって、3日間それぞれ別名義で出るらしい!そんなこと出来るわけない!絶対裏があるに決まってます!」と自身が発起人を務める音楽フェス『FEST. INAZUMA 2026』のことを告知。そうした“大人の対応”ができるのも、ユーモアはもちろん、パフォーマンス面のスキルと力を磨き上げている自信があるからではないだろうか。

 

 コミカルなキャラクターはキャリアを重ねても変わらないが、一方で目覚ましい変化を遂げたのがその肉体。ボディビルコンテストでも50歳代の部門で優勝を果たすなど、筋肉美が特徴となっている。若手時代は華奢な体型だったが、仕事の幅が広がり、舞台などに出演するようになってから体つくりへの意識が変わったそう。2023年7月16日放送『ボクらの時代』(フジテレビ系)で西川は、1日1本のライブとは異なり、舞台は1日2公演を行うこともある上、そのスケジュールを長期間こなさなければならないことに触れ「同じテンションでやり続けるには体を作ってないと。ガリガリやったから、汗をかいたらすぐに脱水症状になっていた。いろんな方に相談したら『筋肉を付けて、その中に水をいっぱい貯めこみましょう』と言われて、それで筋トレを始めた」と語っていた。

 さらに西川は、トレーニングについて「自分の肉体の限界に挑戦して追い込んでいる間は、『明日のことも来週のことも考えなくていい……』って、もはや現実逃避」(『おしゃべりな筋肉 心のワークアウト7メソッド』より)と、“無”になれる時間を作って自分のコンディションや頭の中を整えていると綴っていた。

 T.M.Revolution が、J-POPシーンを代表する大スターの一人であることは間違いない。そうした立場でありながら、決して大物ぶることなく、“ツッコミどころ”を自ら作り、イジられることも恐れない。むしろイジられることすら武器にしてきた。楽曲の魅力とそのスタイルが世代問わず愛され、T.M.Revolution=西川貴教の人気を膨らませ、今回の「HOT LIMIT」の再ヒットに結びついたのではないだろうか。

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