クレナズム 萌映が再確認した、心が動く瞬間の大切さ 新たな“夏曲”「夏の残像」「PRISM」までの道のり
クレナズム 萌映(Gt/Vo)にとって、2026年上半期は一つの転換期となった。新たな作品を生み出すため、そして自分自身を見失わないために重ねた「感情を動かす体験」、久々のメンバー4人だけの会話で再確認できたことーーそれらが結実し、2026年の夏を照らす新たな夏曲「夏の残像」「PRISM」が完成した。今回リアルサウンドでは、萌映にインタビュー。2曲の制作背景やアートワークに反映されるクリエティブ表現へのこだわり、ワンマンツアー『冬夏青青』に向けた思いを聞いた。(編集部)
誰かと会話することが“自分探し”にも繋がる
――リアルサウンドでは、今年初のクレナズムのインタビューなんですよ。なので、まず聞きたいのが「2026年、どのように過ごされていますか?」という。
萌映:バンドとしては、ひたすら制作の日々でしたね。今年はとにかくたくさん曲を出そうとメンバーで話していて。4人とも曲を書くので、一つのテーマをもとに、それぞれ曲を持ち寄って。その中からいいものをリリースしていこうって。そんな感じで、ずっと過ごしていました。あと、私個人としては、プライベートの時間が増えたので、その分アウトプットの時間に充ててみようと思って。普段あまりやらないこと……例えば一人旅とかを積極的にやっていこうと。この間は、大学の先輩・神はサイコロを振らないが、横浜のぴあアリーナMMでライブをされていたので、それを観に行きました。
――神サイのぴあアリってことは、6月ですね。一人旅は、“普段あまりやらないこと”なんですか?
萌映:そうですね。昔はどちらかといえばインドアだったので。でも最近は「積極的に外に出なきゃいけないな」と思うようになって、旅行するようにしています。
――なぜ「出なきゃいけない」と?
萌映:作品を作る人間である以上、いろんなことを経験しておいた方が、作品に活きるなと思い始めて。ずっと室内にいると、見えてくるものも見えてこない時があるので。できるだけ感情を動かすことを意識して物事に取り組んでいこうと、この上半期で特に思うようになりました。それで「ちょっとめんどくさいな」と思っても、旅行をしたり。
――神サイを観に行った時は何泊されたんですか?
萌映:3泊4日で計画を立てました。横浜は初めて行く土地だったので、「どんなところなんだろう」とワクワクしながらちょっと観光して、そのあとライブを観て。その日の夜から東京に滞在しました。
――東京は普段から行く機会が多いのでは?
萌映:こういう取材やライブで行く機会は多いんですけど、東京にいる時ってあんまりオフの時間がないんですよ。
――確かに。仕事の予定が詰まってるわけですからね。
萌映:東京に住んでいる友達も多いんですけど、会う機会もなかなかなくて。なので、旅行で行った時はあえて緻密に計画を立てず、“ちゃんと友達に会いに行って話をする時間”として過ごしてました。
――そういう時間をとれたのは久々でしたか?
萌映:めっちゃ久しぶりでしたね。アーティストの友達にもそうじゃない友達にも会ったんですけど、それぞれの日常の過ごし方を聞いたり、ちょっと深い話をしたりして。私は、相手と話すことで自分のことを知っていくタイプなんですよ。知的好奇心が強くて、いろんな物事に対して「なんで?」と思うタイプだから、友達から「最近こんなことに感動して」みたいな話を聞くのが面白くて。そこで自分の心も大きく動くから、誰かと会話することが“自分探し”にも繋がるんです。
――ということは、「久々に友達と会いたい」という気持ちと同時に、「改めて自分自身と向き合いたい」という気持ちも湧いてきていたと。
萌映:そうかもしれないです。最近、ChatGPTに質問をして、「あなたはこういうふうに考えるタイプなんですね」と返答してもらうのがマイブームみたいになってるので。あと、メンバー4人だけで話す機会があって。そこで今後どうありたいかを、ちゃんと腹を割って話したんですよね。その時にしゅうたくんが、「周りを幸せにするには、まず自分が幸せにならないと」という話をしていて。その考え方は私にはなかったので、「確かに」と思ったんです。
――ご自身はどういう考え方だったんですか?
萌映:私は「周りの人のために生きている」という感覚になってしまいがちで。自分たちが生み出したものに対して「カッコいいね」と言ってもらえるのって、すごく嬉しいことじゃないですか。そのうえで、「目標に向かって一緒に頑張っていきましょう」と言ってくれるチームの人もいる。それって当たり前のことじゃないし、すごくありがたみを感じているからこそ、「返したい」と強く思うんです。だけどその気持ちが強すぎて、自分を見失ってしまいそうになるところもあって。そういう時って、何をやっても上手くいかない。だから、しゅうたくんの言葉がすごく刺さったし、今思えば、それをきっかけに自分探しをするようになったのかもしれないです。
――4人で腹を割って話したことで、なにか変化はありましたか?
萌映:そういう場面って、今まで意外となかったんですよ。「もう言わなくても分かるよね」とお互いに対して思っていたので。だけど言葉にしないと確認し合えない感情もあるし、確認しないままだったら、認識がすれ違っちゃったり、メンバーの誰かが不安になってしまうこともあるかもしれない。だから、今何を思っているかをちゃんと話すことってめちゃくちゃ大事なんだなと、改めて気づかされました。その話し合い以降は、ちょっと疑問に思ったらすぐ確認するとか。誰かがやってくれたことを当たり前と思わずに、ちゃんと「ありがとう」と「ごめんなさい」を言うとか。
ワクワクと寂しさの両方が詰まった、クレナズムの新たな“夏曲”
――大事なことですね。そしてこのたび、夏の楽曲が2カ月連続でリリースされました。7月8日にリリースされた「夏の残像」と、8月5日にリリースされた「PRISM」。ともにこの季節ならではのきらめきや切なさがパッケージングされた楽曲で、みなさんが何に美しさを感じているか、何に心ときめくのかを、音楽で共有してもらっている感覚になりました。
萌映:ありがとうございます。
――萌映さん個人としては、夏にどんなイメージがありますか?
萌映:夏はあまり得意じゃないけど、なぜか一番感情を揺さぶられる季節だなと思っていて。夏の始まりにはワクワクするし、夏の終わりにはなんだか寂しくなる。花火大会のあとの火薬の匂いとか、すごく感情が揺さぶられますよね。
――そのワクワクと寂しさの両方が、今回の2曲にはまさに詰まっています。
萌映:リリースについて計画をしていた時期に、「夏にリリースするから、夏の曲を作ろう」という話になって。そこでしゅうたくんが作ってきたのが「夏の残像」、私が作ったのが「PRISM」でした。元々は夏のリリースは1曲だけのつもりだったけど、メンバーで話し合った結果、「どっちもいいね」「両方出すか」というふうに決まったんです。私たちって、夏の曲がめちゃくちゃあるんですよ。夏が嫌いなバンドなのに、夏の曲をめっちゃ出してて(笑)。
――(笑)。
萌映:そんななかでも「夏の残像」は、ありそうでなかった、ここ最近出した曲の中で一番私たちらしい曲ですよね。メロディはすごく爽やかなのに、よく聴くとギターがゴリゴリだったり。完成した音源とデモを聴き比べても、ほとんど差がないんですよ。だから、しゅうたくんの中にはっきりとしたイメージがあったのかなと思ったし、私は初めて聴いた時、ライブで演奏しているイメージがすぐに浮かびました。
――ボーカルも、熱量の高いテイクですね。
萌映:さっきの話とも繋がるんですけど、〈さよならから 一歩だけ先で 手を振ってる 新しい私〉という歌詞に自分との重なりを感じたので、そこは特に気持ちを込めて歌えた手応えがあります。あと、ずっと歌いっぱなしの曲なので、ブレスをとるのも難しくて。もしかしたらその影響で、感情が乗っているように聞こえたのかも(笑)。それが曲の世界観に、上手いこと活きているのならよかったです。
――ライブで歌うのも大変そうです。
萌映:もう、己との戦いですね(笑)。頑張ります。
――クレナズムらしさ溢れる「夏の残像」に対し、萌映さんが書いた「PRISM」はちょっと意外性がありました。「クレナズムの曲で、こんなに軽やかなギターカッティングが鳴っているなんて」という。
萌映:「けんじろうくんがこのカッティングを弾くの?」っていう面白さがありますよね。私たちの夏の曲には涼しげな曲が多いので、ちゃんと熱くて、だけど私たちらしい、ハピネスな曲を作りたいと思ったんですよ。“夏が嫌いなクレナズムがハピネスな夏の曲を演奏している”という状況が、めちゃくちゃ矛盾してて面白いなと(笑)。「メンバーはどんな顔で演奏してくれるだろう?」「ライブに来てくれる人たちはどんなふうに聴いてくれるだろう?」という興味から、この曲を作りました。