suis from ヨルシカ、Fujii Kaze、米津玄師、YOASOBI……“動物”モチーフだから伝えられる普遍的なメッセージ

 猫、犬、鳥――私たちの身近にいる動物たちは、音楽のなかでさまざまなメッセージを持つ存在として描かれてきた。

 TVアニメ『猫と竜』(TOKYO MXほか)のオープニングテーマとして書き下ろされたsuis from ヨルシカの「猫日」は、その名のとおり“猫”をモチーフにしている。楽曲は、作詞をsuis自身、作編曲をキタニタツヤが手掛けており、軽やかに弾むメロディとsuisのチャーミングな歌声が印象的だ。〈いつもあたりまえに歌うメロディ/ふざけた調子で踊るわ〉という歌詞を表すように、朗らかな空気に包まれるサウンドの一方で、歌詞の中心にあるのは、猫と過ごす何気ない日常の尊さだろう。いつか来る別れをも想起させるようなフレーズの数々からは、何でもない一日こそが、実はかけがえのない時間なのだというメッセージが伝わってくる。愛する存在と過ごす日々を、そっと抱きしめたくなるような一曲だ。

suis from ヨルシカ - 猫日 (OFFICIAL VIDEO)

 Fujii Kaze(藤井 風)の「Hachikō」は、飼い主がこの世を去ったあとも帰りを待ち続けたという忠犬ハチ公の逸話をベースにした楽曲だ。本曲で描かれているのは、飼い主側から見た犬との再会の物語だろう。〈You’ve been patiently waiting for me〉(君は辛抱強く僕を待ってくれた)という歌詞からは、天国で再会を果たした主人とハチ公の姿が思い浮かぶ。〈Doko ni ikō Hachikō…〉というリズミカルかつコミカルなフレーズや、数字の1を「ワン」と読むユーモアも交えつつ、楽曲の軸になっているのはまっすぐな愛だ。〈This time I’ll never let you go〉(今度はもう二度と君を離さない)という誓いの言葉からも、死をも越えて続いていく強い愛と絆が感じられる。人と動物との関係性を通して、人間同士にも通じる“愛し続けること”の尊さが浮かび上がっているのだ。

Fujii Kaze - Hachikō [Official video]

 米津玄師は、映画『キングダム 魂の決戦』の主題歌として「夜鷹」を書き下ろした。6月に「2026 NHKサッカーテーマ」として「烏」を発表した米津だが、今回モチーフとなったのは、宮沢賢治の短編『よだかの星』。「烏」が青空を悠然と羽ばたく烏を想像させるような明るいサウンドの一方で、「夜鷹」は歪んだギターや荒々しい歌声が響く楽曲だ。まさに、孤独を受け入れてなお夜の闇を切り裂くように力強く飛ぶ鳥の姿を思わせると同時に、自らの信じる道を進もうとする『キングダム』の登場人物たちの姿も重なる。米津自身も、インタビューで「欲望や野心を追い求めて進んでいくベクトルで曲をつくった」と語っていた(※1)。「夜鷹」は、暗闇のなかからその先へと飛び続ける人間の強さを描いた一曲なのだろう。

米津玄師「夜鷹」Kenshi Yonezu - Yodaka

 YOASOBIの「ツバメ (feat. ミドリーズ)」は、プロジェクト「YOASOBIとつくる 未来のうた」でグランプリに選ばれた当時15歳の乙月ななの小説『小さなツバメの大きな夢』を原作に、NHKのSDGs番組シリーズ『ひろがれ!いろとりどり』のテーマソングとして制作された。〈あの街へ行こう/海を越えて〉という冒頭のフレーズからは、春の訪れとともに長い距離を旅して街へとやってくるツバメを想起させる。軽やかでポップな楽曲だが、その歌詞に込められているのは、〈僕らは色とりどりの命と/この場所で共に生きている〉――そんな共生のメッセージだ。〈誰かが手に入れた豊かさの裏で/帰る場所を奪われた仲間〉という歌詞は、不自由なく暮らす者がいる一方で、その裏側には居場所を失う存在がいることにも目を向けさせられる。ツバメの視点から描かれた物語は、人間と動物、そして異なる価値観を持つ人々がどのようにともに生きていくのかという問いへと広がっていくのだ。

「ツバメ」/ YOASOBI with ミドリーズ Official Music Video

 動物の存在を用いながら、人間の普遍的な感情を描いてきた楽曲たち。動物をモチーフにした楽曲に耳を傾ければ、自分自身の生き方にも繋がるメッセージが見つかるかもしれない。

※1:https://www.mensnonno.jp/lifestyle/culture/773200/area08/

ヨルシカ、米津玄師、Ado、amazarashi……宮沢賢治がアーティストに与えるインスピレーション

ヨルシカ、米津玄師、Ado、amazarashiらの楽曲には、宮沢賢治の作品がモチーフとなったものが存在する。そこで宮沢賢治がア…

King Gnu、米津玄師、ヨルシカ、LiSA……積み上げた信頼と作品への理解 何度もタッグを組むアニメ主題歌の凄み

アニメ作品と主題歌を務めるアーティストは、一度きりではなく、繰り返しタッグが組まれるケースも少なくない。そこで、King Gnu…

関連記事