「石井恵梨子のライブハウス直送」Vol.9:サンボマスターへの衝撃が生んだ過剰を超える超爆音と超声量 sassya-、全力の爆発

 2026年7月13日。下北沢Daisy Barでは去勢とsazameによる共同企画、総勢9アーティストによるフロアライブが行われていた。

 魚住絵里奈が毒を孕んだフォークソングをひとり静かに聴かせた直後だからかもしれない。次に出てきたスリーピースの、リハの音がとにかくデカい。頭蓋骨を揺らす生ドラムはもちろん、ギターボーカルが「ゥオオオイ!」「ガアァッ!」とハンパない声量で叫んでいることにギョッとする。「開始前からめっちゃ戦闘能力アピールしてんな」と思うが、女性ベース奏者だけは涼しい顔で椅子に座り、開始直前になってビールを買いに行くなどマイペースを貫いている。このアンバランスがまず面白い。名前はsassya-(サッシャー)という。

 ゴリゴリの爆音でライブがスタート。いわゆるポストハードコアに影響を受けた岩上悟(Vo/Gt)の趣味が反映され、野口恵(Ba)、吉原渉(Dr)がそこに巻き込まれる形でスタートした3人組だ。数年前まではモノクロというかシリアスな楽曲が多かったようが、この日のライブはのっけからストレート。とにかく岩上の声量がハンパない。the 原爆オナニーズのTAYLOWを彷彿させる、もっと言うとデビュー当時の遠藤ミチロウはこんな感じだったんじゃないかと思わせる、声の化け物みたいな存在感。学校や会社、自宅でこんな大声を出していたら通報されそうなレベルである。

岩上悟(Vo/Gt)

「声がデカいほうが人間のパワーが出るような気がして(笑)。生まれて初めて観たサンボマスターのライブが衝撃的すぎて。想像したこともなかった巨大な音の塊に、本当感動したんですよね。そこからはもう、とにかくデカいものがやりたかった。デッカい声が出したかったんです」(岩上)

 もう、「うるさい」と書いてしまっていいだろう。自分たちでやかましい音を出し、それに対して「うるせえ! 俺の声が聴こえねえだろう!」と怒鳴りつけているような印象もある。要するに、過剰すぎてちょっと面白い。ただ不機嫌を撒き散らす様子は微塵もなく、全身に汗をかき、演奏の合間に忙しく両手を動かし、たまにジャンプまで決めている岩上は明らかに楽しそうである。

野口恵(Ba)

 うるさいうえに加速もする。ドラムがめたくそに叩き出す3曲目は「デストロイ人生」。すごいタイトルだし、日々の営業活動がどうのと愚痴る歌詞もインパクトがあるが、〈くだらねえ/全てくだらねえよ〉〈イェェェェーーッ!〉と声の限りに叫ぶ岩上を見ていると、何かを振り切ってしまった人間の爽快さのようなものを感じてしまう。隣では相変わらず椅子に座ったままの野口が涼しい表情でベースを弾いているが、この熱の不一致はいいのか。いや、3人全員が無敵の人になって暴れているよりはいいのかも、と思う。

 終演後、話を聞くと、野口に言わせれば「岩上の曲はイライラしたっていうだけでは終わってなくて。イライラしたものをぶっ飛ばすところまでが曲になってる。その“ぶっ飛ばす”部分を私たちがメイキングしていく感じ」とのこと。ドラムの吉原も「最近の曲は突き抜けてる感じがしていいですね。僕も突き抜けようって元気になれる」と笑う。なるほど、目指すところは案外一緒らしい。

吉原渉(Dr)

 ライブ後半、下北沢を新宿に変えにきたと宣言して始まるのは「新宿叫ぶギリギリ手前」。意外なくらいダンサブルなナンバーで、フロアには自然と体を揺らす人が増える。歌詞はやはり破れかぶれだが、屈託を振り切っていくパワーがあり、何よりダンスビートがわかりやすく体に入ってくるから、だんだん爆笑したい気持ちになってくる。ギリギリ手前、もうダメ、人生終わったと最終宣告のような曲ばかり書きながら、この表現はとにかくアッパーと言うしかない。屈折した様子がどこにもないこの日のセットリストは、すべて元気玉のようだった。

「青い炎みたいな音楽も好きですけど、自分でやるとなると、明らかに燃え盛ってる、空間がブチ上がるものに興奮するようになってきて。今は、いい曲の価値が、爆発してるかどうか、になってきましたね。これでみんなを元気にしたい。マジです。『感動した』って言う人と笑ってる人が混在してるライブハウスがいちばん最高だと思ってます」(岩上)

 トドメが「ファイブステップ丸の内線」。この7月に出たばかりのEP『爆音現実』収録曲だ。高速のドラムは5拍子だが、ハードコアに近い勢いに巻き込まれ、体が自然に動いてしまう。岩上の歌は叫びを超えた絶叫になっているが、この曲では吉原のドラムがそれをさらになぎ倒す。後半「なんで?」というタイミングで炸裂するドラムソロ。予想外すぎてビビるし、かっこよさと意味のわからなさが同時に押し寄せ呆気に取られたままライブは終了していた。すげえ面白い。よくある内省的な、文学的な、あるいは閉鎖的なポストハードコアではまったくない。ただ全力で爆発しているロックバンド。それがsassya-だ。なるべく早いうちにその目で確かめてほしい。

■公演情報
『sassya- EPリリース記念単独公演「爆音現実」』
2026年10月11日(日)OPEN 12:00 / START 12:30
吉祥寺WARP

<チケット>
ADV 3,000円(+1DRINK)/DOOR 3,500円(+1DRINK)
予約 https://tiget.net/events/500319

オフィシャルリンク:https://linktr.ee/sassyaaaaaa
X:https://x.com/sassyaaaaaa
Instagram:https://www.instagram.com/sassyaaaaaa_band
YouTube:https://www.youtube.com/@sassya-

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