9割の“ファン以外”に届ける大型音楽特番の意義 フジテレビD 島田和正に迫るテレビとアイドルの関係性
7月31日から8月2日の3日間にわたって開催される、国内最大級のアイドルフェス『TOKYO IDOL FESTIVAL 2026 supported by にしたんクリニック』(以下、『TIF』)。リアルサウンドでは『TIF』の開催に合わせて、令和のアイドルシーンを支えるプロデューサーやスタッフ陣をフィーチャーした全4回の特集を展開中。
第2弾はフジテレビディレクターの島田和正だ。『FNS歌謡祭』や『MUSIC FAIR』、『TIF presents ONE SONG FES.』などの音楽番組の演出を手がけながら、自身も熱心なアイドルファンだというテレビマンの島田から見た『TIF』の変遷、メディアアイドルとライブアイドルとの境界線、未来のアイドルシーンについての展望を聞いた。(ATSUSHI OINUMA)
アイドル愛とテレビマンの視点が交錯する番組作り
――まずは、自己紹介的に普段の仕事内容に触れながら、島田さんが女性アイドルシーンとどのように関わってきたかを教えてください。
島田和正(以下、島田):2008年にフジテレビに入社して、最初に『堂本兄弟』に配属されて以来、18年間ずっと音楽番組を担当しています。仕事をしていく中で、自分が他の人に負けないジャンルを作った方がいいと思い、アイドルとミュージカルを打ち出すようになりました。アイドルを好きになったきっかけはAKB48、仕事としてアイドルと向き合う人間になろうと思ったのはももクロ(ももいろクローバーZ)です。
その後“アイドルを撮る”ということにテレビマンとしてこだわっていくようになりました。2015年からは『FNS歌謡祭』の演出もやるようになったので、自分のアイドルへの愛情を込めた企画が何かできないかなと思い、いろいろな事務所のアイドルを100人くらい集めて、コラボメドレーをやりました。そこで自分のアイドル愛を関係者にも広く知ってもらい、さらに輪が広がったという感じですね。
――いちアイドルファンとしての熱量とテレビマンとしての熱量や視点は、どのように両立しているものなのでしょうか?
島田:そこが実は結構大事なポイントでして……。アイドル好きだから客観性を見失っていると思われがちなのですが、やっぱりテレビというメディアは、どんなに人気者が出たとしても、それを観ている視聴者の中に、日々そのアーティストのライブに足繁く通うファンは100分の1もいないと思うんですよね。そこが好きなものを見て、好きそうなものを提案される現在のネットビジネスと違うところだなと思っています。
たとえば、5万人の東京ドームを2日間埋める乃木坂46が歌番組に出たとしても、視聴率1%(単純計算で100万人)のうちのさらに10分の1くらいで、残りの9割の人は乃木坂46への興味は普通以下か、別の人のファンといった感じなので、その9割の人たちにも「乃木坂46っていいな」と思ってもらえるような見せ方というのを第一に考えます。例え話としてよく話すのですが、今やサブスクや各種ランキングを総なめにしているMrs. GREEN APPLEがめちゃめちゃ人気だと言っても、たぶん「ラーメンに興味がある人」の方が多い。“音楽”は好きな人が好きなものを聴く。相当な音楽好きでない限り、知らない人にどんどん興味を抱くジャンルではないので、音楽番組で戦うのはとても難しいことなんです。大型音楽特番の場合は、各アーティストのファンが集まって盛り上げてくださるのと、興味がない人にとっても最低限のトレンドを吸収できる場でもあるので数字が取れるのですが、レギュラー番組は厳しい戦いになっているというのが現状ですね。
――音楽番組のリアルな話も聞かせていただき、ありがとうございます。そんな音楽番組を数多く手がけている島田さんは、昨今の『TIF』の盛り上がりをどのように見ていますか?
島田:コロナ禍以降で様相が変わったなと感じています。2010年代の“アイドル戦国時代”と呼ばれていた頃の『TIF』は、「天下統一しようぜ!」という空気が漂っていたと思うんですよね。でも、コロナ禍を境にして、そういう空気感がなくなってきて、アイドルとそのファンのショーケースのようになってきた気がしています。“宴”と書いてあるTシャツの人たちがめちゃめちゃ盛り上がっているなとか、勢いがある界隈は増えたと思うんですが、人気があるグループをファンじゃない人まで来て盛り上げるみたいな空気は、ニジマス(26時のマスカレイド)の解散前最後に出演したSMILE GARDEN以降見ていないかもなと思います。
――出演しているアイドルや運営側の意識も変わってきたような感覚はありますか?
島田:「『TIF』に出られて嬉しい」というグループが増えてきたなとは思いますね。「芸能界でのしあがろう」というよりは、アイドル自体に憧れてアイドルになっている人が多い世代になっていると思うので、出演できること自体や、いろいろなアイドルに会えることを純粋に嬉しいと思う感覚が強くなっていて、昔のような殺伐とした雰囲気はなくなってきたんじゃないかなと思っています。
――いちアイドルファンとして、島田さんご自身は毎年どのように楽しんでいるのでしょうか?
島田:好きなグループが増えすぎて、追いかけるだけで大変ですね。自分が好きなアイドルを中心に見に行くイベントになってきているな、と。もちろん、その移動途中で盛り上がっているグループを知ったり、前が押していてたまたま見たグループが良かったという偶然の出会いもありますが。