初めて触れたaikoのライブで確信した唯一無二の凄み 客席の一人ひとりと“人生”を確かめ合う幸福な時間

aikoのライブに満ちる“幸福”の循環

 中盤、ピアノの弾き語りで「あかときリロード」「大切だった人」を披露。華麗なビッグバンドサウンドを堪能した後の耳でも、まったく物足りなさを感じない。むしろ、空間が広がっていくようにさえ感じさせる。この歌声の存在感は、多才なaikoの最高の才能だ。ビブラートやファルセットなどのスキルをほぼ使わず、ブレスなどでニュアンスを出す歌唱法もあまりとらない。それなのに、歌声に感情が宿る。真っ直ぐに言葉を放つのに、こちらに届いた時には、感情が乗っているのだ。だからこそ、受け手は彼女の歌を“自分の感情”に変換できるのだと思う。これがaikoの曲が老若男女に支持される、ひとつの要因だと考える。

 終盤では「予告」「ストロー」「キラキラ」「相思相愛」と、アップチューンで会場をさらに盛り上げる。ステージ本編ラストを飾ったのは「Cry High Fly」。曲のラストには、銀テープが東京ガーデンシアターに弧を描いた。「ありがとうございます! 着替えてきまーす」という言葉とともに、一旦ステージを後にしたaiko。

 薄闇に沈むステージ。いきなりaikoにピンスポットが当たり「青空」へ。ステップを踏むようにくるくると回りながら、ステージを行き来するその姿に、客席も大きく手を挙げてレスポンスする。「KissHug」では〈星の涙に願う〉という歌詞に合わせて、ミラーボールが会場に流星を降らせた。観客から大きなクラップが起こった「オレンジな満月」。歌いながら、手をおでこにあて、客席を覗き込むような仕草。この日、何度も見た仕草だが、aikoの視線は、本当に何度も何度も、その度に観客一人ひとりを追っていた。

 その場で歌う曲をバンドメンバーが決めるWアンコールの前のMCで、aikoはこんな話をした。この日に向けて、1週間以上なるべくしゃべらない生活をしてきたこと、昨日の発声練習で声が裏返って少し不安になったこと、今日ここで楽しく発声しようと思ってきた、と。

 1998年にデビューして以降、aikoは毎年ワンマンライブ、全国ツアーを行っている。ツアー規模も年々拡大し、2016年以降はワンツアー30公演を超えるツアーを何度も開催している。近年では『Love Like Pop vol.23』(2023年)が全30公演、『Love Like Rock vol.10』(2024~2025年)が全32公演、そして本ツアーが全37公演に及ぶツアーであった。

 2026年7月にデビュー28周年を迎えるaiko。女性ソロアーティストのなかでも、これほど長期間にわたり全国規模のツアーを継続しながら第一線を走り続けてきた存在は稀有だろう。

 なぜ彼女は、時代や世代を超えて曲を届けることができるのか。その答えの一端は、この日のライブにあった。トリプルアンコールを含めて全28曲、3時間半超。その間、aikoは満員の観客の心を掴んで離さなかった。歌い、しゃべり、そのエネルギーは後半に向けてどんどん上がっていった。どれだけ準備すれば、最後まであれだけ全開で歌えるのだろう。どれだけ普段努力をしているのだろう。この日のライブを観ながらわかったのは、彼女は表現すべてに対して、ストイックに向き合い続けていること。そして、その状態が、彼女にとって当たり前の状態であることだった。

 冒頭で「嫌なことは床に全部垂れ流してください」と語った彼女が、最後に歌ったのは「シアワセ」。曲を通して、観客と自分が出会ったことにaikoが幸せを感じるように、観客もまたその歌声を通して幸福を受け取る。その感情は一方通行ではなく、会場全体を巡りながら循環しているのだ。

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