宮本浩次、INI、indigo la End、矢野顕子、すりぃ、テレビ大陸音頭……注目新譜6作をレビュー

 毎週発表される新譜の中から注目作品をレビューしていく連載「New Releases In Focus」。今回は宮本浩次「零地点Bomb」、INI「Sand Castle」、indigo la End「陽炎」、矢野顕子「THE RIVER」、すりぃ「チューインガム feat. KANA-BOON」、テレビ大陸音頭「超常現象を信んじてみる。」の6作品をピックアップした。(編集部)

宮本浩次「零地点Bomb」

宮本浩次 ー 零地点Bomb

 日本のヒップホップの最重要クリエイターの一人であり、藤井 風やアイナ・ジ・エンドなどの作品にも携わってきたGiorgio Blaise Givvnがトラックメイクを担当した「零地点Bomb」は、宮本浩次による日本語ラップの新たな解釈が反映されたナンバー。ドープかつヘヴィなビート、歪んだギターサウンド、和風なエキゾチズムがぶつかり合うサウンドのなかで宮本は、フリースタイルに近い形で言葉を刻み、強い衝動と圧倒的な解放感のなかにオーディエンスを引きずり込んでいく。世間や常識に左右されることなく、しっかりと覚悟を決め、〈I love 人生 baby〉と高らかに叫ぶ。この曲から伝わってくるエナジーには、宮本本来の個性とまったく新しい表現がスリリングに息づいている。(森)

INI「Sand Castle」

Sand Castle

 「EMPORIO ARMANI」2026年春夏メンズコレクション「ORIGINS」コラボレーションソング。グループ初の全編英語詞で、柔らかなR&Bに乗せてメンバーそれぞれがとろけるシルキーボイスを重ねていく、どこまでも大人っぽい曲となった。いわゆるラブソングとは似て非なるもので、タイトルになった“砂の城”とは自分の中にある既成概念のこと。それを築いたのも自分なら壊すのも自分自身であると、自己をよりよく成長させていくためのメッセージが綴られる。〈Calling out SOS〉というサビが、そのままの意味で悲痛なものには聴こえず、むしろエレガントな誘い文句のように響くのがとてもいい。INIにとっても大きな飛躍のきっかけになりそうだ。(石井)

indigo la End「陽炎」

陽炎

 SNSでインスト音源の一部を先行公開し、楽曲を事前登録すると歌詞画像を入手できるという施策も話題となった新曲「陽炎」は、6月24日リリースのニューアルバム『満ちた紫』からの先行配信曲。抑制と洗練が繊細に絡み合うバンドグルーヴ、流麗なメロウネスを感じさせるギタープレイのなかで広がるのは、曲名通り、熱さのなかでゆったりと揺れるボーカルライン。〈夏場の暑さで揺れる/正体のわからない気持ち〉をリリカルに描いた歌詞、鋭利なラップパートや緊張感に溢れた間奏パートなどのバランスが素晴らしく、しかも捉えどころがないゆえに何度もリピートしたくなってしまう。ポップと前衛を行き来する、indigo la Endの新たな境地を示す楽曲だと思う。(森)

矢野顕子「THE RIVER」

【みんなのうた 6-7月新曲 THE RIVER/矢野顕子】|NHK

 7月22日に登場するアルバム『生きものたちへ』収録曲のひとつで、『みんなのうた』(NHK Eテレ)への書き下ろし新曲。ピアノとエレクトロが美しく溶け合う一曲で、作詞作曲は矢野が、トラックは若きアーティスト・北村蕗が担当。今年ソロデビュー50周年を迎える矢野顕子が、いつだって新しい才能を楽しそうにフックアップしていく様子はさすがとしか言いようがない。シンプルな言葉が並ぶ歌詞は世界平和を願うものだが、〈越えたい わたしたち 隔てるもの〉という願いと〈あなたといっしょに ごはんつくって〉いる日々の暮らしが、まったく同じ温度で綴られるところが矢野らしい。どんな人間もそのような営みで一緒に笑えるはずなのに、と思う。(石井)

すりぃ「チューインガム feat. KANA-BOON」

すりぃ / チューインガム feat. KANA-BOON

 ロックバンド・Aoooのギタリストとしても活動しているシンガーソングライター/ボカロPのすりぃ、今年1月から新体制で本格始動したKANA-BOONのコラボレーションが実現。キャッチーでいなたいギターリフで聴く者の感情をグッと引き寄せ、シンプルな4つ打ちビートと煌びやかなギターとベースのフレーズで心と身体を踊らせまくるアッパーチューンなのだが、すりぃとKANA-BOONのセンスと技術がこれでもかと注ぎ込まれた結果、「これを待ってました!」というわかりやすさと「こんなの聴いたことない!」という驚きがひしめき合う楽曲へと昇華されている。すべてが手の中で完結してしまう現代のエンタメに対する批評を感じさせる歌詞も秀逸だ。(森)

テレビ大陸音頭「超常現象を信んじてみる。」

 札幌のインディー/アンダーグラウンド発の4人組バンド、初のフルアルバム『VS Tairiku Ondo』収録曲のひとつ。2024年に出た最初の配信曲「俺に真実を教えてくれ!!」を聴いた時はあぶらだこの再来かと慄いたものだが、ねじくれたポストパンクや不条理かつ衝動任せな歌詞が面白いだけではないようだ。この曲はドラム/ベースだけでなくギターもボーカルもリズム楽器として絡み合う、まったくテンションの落ちないポリリズムが聴きどころ。the hatch登場以降と言うべき札幌シーンの潮流に、彼らもまた与していることがわかる。殺意と自己嫌悪と自然愛を一筆書きにしてしまう歌詞もお見事。(石井)

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宮本浩次、奥田民生、吉川晃司ら“還暦”アーティストの直近の活動から、衰えることない勢いを紹介する。

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