Vaundy、SUPER BEAVER、西野カナ、クリープハイプ、乃紫、ROIROM……注目新譜6作をレビュー

New Releases In Focus

 毎週発表される新譜の中から注目作品をレビューしていく連載「New Releases In Focus」。今回はVaundy「気まぐれ」、SUPER BEAVER「クライマックス」、西野カナ「Replay」、クリープハイプ「痛々しいラヴ」、乃紫「イクジナシ」、ROIROM「Pa Ri Ra!!」の6作品をピックアップした。(編集部)

Vaundy「気まぐれ」

気まぐれ

 心地よい光と切ない情感をたたえたアコースティックギターの音色、ややレイドバックした雰囲気のビートとともに映し出されるのは、ゆったりと流れる夏の空気、そして、〈君〉との濃密にして豊かな時間の蓄積。菅田将暉、井之脇海が出演している「メンズビオレ」新CM曲の「気まぐれ」は、まるで独り言のように紡がれるメロディライン、音数を抑えたオーガニックな音像が溶け合う、Vaundyの新たな表情が感じられるミディアムチューンだ。日本語の韻を活かした歌詞、たとえば〈二人あせばむ時間を詩にしよう。〉における純粋性と官能の間を漂うようなフレーズも心地よい。「夏なんです」(はっぴいえんど)のように、この先、定番の夏の歌として浸透することになりそうだ。(森)

SUPER BEAVER「クライマックス」

クライマックス

 6月24日発売のアルバム『人生』の収録曲で、フジテレビ系2026サッカーテーマソングとなる配信曲。『人生』に「クライマックス」とは、もう乗せられるもの全部乗せた感もあるのだが、歌っても歌っても、どれだけヒットが続いても、満たされない想いとリアルな夢を描けるのがこのバンドのすごさ。スタジアムで合唱するのに相応しいスケールを誇るロックナンバーで、壮大なコーラスに三連のリズムが加わるところは臨場感たっぷり。ただし、必勝を連呼する応援歌ではない。少しだけ声のトーンを落としたCメロ、〈いくつもの挫折があって/いくつもの約束があって/いくつもの決断があったな〉という歌詞は彼ら自身のヒストリーでもある。(石井)

西野カナ「Replay」

Replay

 最新EP『LOVE BEAT』収録曲のひとつ。表題曲はNiziUとのコラボだったので、NiziUメンバーの溌剌とした様子や華やぎが際立っていたが、ミドルバラードとなるこの「Replay」は活動初期を彷彿とさせる失恋ソングだ。別れてしまった彼との思い出ばかりが「Replay」する時間。記憶をリアルにたどっていく歌詞は一見私小説風だが、誰が聴いても「これは私の話だ」と思えるような普遍性を帯びている。声はクセがなく透明だし、曲には聴きやすい大衆性があるのに、言葉は鋭く個人の胸を抉る。このバランス感覚が西野カナ最大の武器なのだろう。〈可愛かった二人にはもう戻れないのに〉の一節は、おそらく20代の頃は書けなかったもの。やられました。(石井)

クリープハイプ「痛々しいラヴ」

Cringeworthy Love

 尾崎世界観(Vo/Gt)が漫画家の魚喃キリコのファンであることは有名で、「痛々しいラヴ」という曲名が彼女の代表作からの引用であることはまちがいなく、どうしてもそのことを念頭に置いて聴いてしまうわけだが、透明感と憂いに包まれたギターのフレーズが鳴った瞬間、ちょっと重力が軽くなるような不思議な感覚が押し寄せてきて、そのまま曲の世界に誘われてしまった。特に心に残ったのは〈君がいつか描けますように/そしてそれをいつか歌えますように〉というライン。深い優しさと鮮やかな悲しみを内包した、本当に素晴らしい一節だと思う。クリープハイプらしさが改めて提示された新作EP『仮のまま定着したような愛情で』にこの曲が収録されたことにも、強く感銘を受けている。(森)

乃紫「イクジナシ」

イクジナシ

 一瞬のブレスの後に飛び込んでくる〈あぁいっそ/このまま奪って〉によって一発で心を奪われる。この人のフレーズ力はほとんど天賦の才なんだなと思わざるを得ない。乃紫の新曲「イクジナシ」は、今から3年前、彼女が音楽をはじめた大学生の頃に制作された初期の楽曲のリメイク。なかなか境界線を越えられない、というか、越えてきてくれない〈あなた〉へともどかしい想いを描いた歌詞を疾走感/焦燥感を併せ持ったバンドサウンドとともに瑞々しくも切ない青春ロックへと昇華しているのだ。今回のリメイクでどれくらい変化したかは定かではないが、楽曲のテーマや歌詞、メロディはさほど変わっていないはず。最初期からこのクオリティの曲を作っていた乃紫の才能はやはりすごい。(森)

ROIROM「Pa Ri Ra!!」

ROIROM 'Pa Ri Ra!!' Music Video

 浜川路己と本多大夢によるデュオが、プレデビューシングル3曲を経て5月に本格デビュー。「Pa Ri Ra!!」は来月発売される1stミニアルバムからの先行配信となる。まだ5曲しか出ていないので何が彼らにとっての王道なのか判断できないが、王子様アイドル路線を本気で極めているようで、どこかにツッコミどころがある、というのがROIROMの魅力なのではないか。ファンキーなダンスミュージックに乗ってタイトルを連呼するアゲソングだが、そのわりに大切なメッセージが散りばめられており、しかしラストは「マッチョ! マッチョ!」と謎のコールで締め。元気をもらえる明るさと遠慮なく笑える面白さが同居している。(石井)

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